高学歴女の末路2

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高学歴女の末路2
「●●薫さんのお母様ですか?薫さんの入園試験のことで、折り入ってお話があるのですが、、、」

男は名前も告げずに、そう切り出した。

「失礼ですが、どなたでしょうか?」

「ああ、失礼致しました。私(わたくし)、入園試験を担当しております高野と申します。
●●薫さんの面接にも立ち会っていたのですが、覚えていらっしゃいませんか?」

5人居た面接官のうちに
高野と名乗る男が居たかどうか私の記憶は定かではなかった。
しかし、相手が薫のお世話になるかもしれない学園の職員を名乗っているのだから、
自然と受話器を持つ手に力が入る。

「●●さん、実はですね。あの、、えっとですね、、、」
「面接で真中に座っていたのが、当学園の理事の一人でして、それでですね、、」
「●●さんもお気づきになったかもしれませんが、、理事と●●さんは、、」

男の話す内容は、一向に要領を得ず、最初に感じていた緊張感は、次第にイライラに代わっていった。

「すみません。恐れ入りますが、要件をおっしゃって頂けますか?」

「ああ、失礼。そうですよね。では率直に申し上げます。実は、●●薫さんは、このままですと、当学園に入園することは難しい状況です。」

「は?」
あまりにも唐突に話が飛んだので、思わず聞き返してしまった。

私は話し方や言葉の選び方などから判断して、即座に高野を取るに足らない人間だと見下していた。
しかし、そんな彼の話す内容は、私の記憶に一生残るものとなった。

「ですから、薫さんは、不合格なんです。まだ正式に決まったわけではありませんが、このままでは間違いなく不合格です」

ふ、不合格?
聞いた瞬間は流石に動揺してしまった。
しかし、すぐに、その持って回ったような言い方に気づいた。
”このままでは”
要するに、まだ決まったわけではないってことだ。

「それは、このままにしなければ、合格できるって意味でしょうか?」

「は、はい!そういうことです。さすが、理事がおっしゃっていた通りの頭の回転が速いお方だ!
 それで、ですね、その辺りを詳しくお話したいので、時間を作って貰えますか?早い方が良いので明日は如何でしょうか?」

「明日ですか?」

一瞬迷ったが、薫の合否が決まると言われれば、断るわけにはいかない。
ただ、日時などを相手の言いなりになるのは、交渉の面で不利になる。
私は少し意表を突いてやることにした。

「そうですね。おっしゃる通り早い方が良いと思いますので、では、今からお会いできませんか?」

「え?い、今からですか?」

高野の奴、明らかに動揺してる。

「はい。高野さんがおっしゃったのでしょ?早い方が良いと。私、明日は都合が悪いのです」

「わ、分かりました。では2時間後にウェスティンのラウンジでは如何でしょうか?」

実際に高野と会ってみて、やっと面接の時に隅っこに居た冴えない中年男だと気づいた。
これで本当に学園関係者であることは証明されたわけだが、
それにしても、高野の話は電話での印象と同様、予想の範疇を超えない実に下らないものだった。

要するに、先に寄付金を払えば、裏口入園できるというのだ。

寄りによって、この私に裏口入学の話を持ってくるとは・・・
普通なら鼻で笑い飛ばすところだが、愛娘の将来が掛かっているとなるとそうも行かず
即答は控えることにした。

自宅に戻ってから真剣に考えた。
正直、私には幼稚園など何処でも良いという気持ちがあった。
しかし、●●家にとっては、有名幼稚園へ行くことは決められたコースであり、
万が一、薫が不合格ということになれば、責められるのは、当然私ということになる。
夫の親戚中から、何かにつけて育ちが悪いと陰口を言われている身だ
薫に対しても家庭内での教育が行き届いていなかったと言われるのは、もはや必然だった。
そうなれば、苦労してやっと良い関係になってきた義母からも、当然疎んじられるようになるだろう、
何かにつけて味方になってくれる義父でさえ、孫の将来のことになれば、私をどう思うか知れたものじゃない。
夫だって、同じ幼稚園を受けた上司や同僚の娘さん達の手前、気まずい思いをすることになるだろう。
何より、この私自身が、、、
お金を払えば合格できたかもしれないのに、それをしないで
薫が落ちた時、一生負い目を感じて生きることになるのではないだろうか。。。
色々考えていると、
500万という金額で本当に合格できるのならば、安いものなのかもしれないと思うようになっていた。

結局、私は翌朝一番で高野に連絡してしまった。

振込先を尋ねると、高野は
「記録が残ると後々面倒ですので、手渡しで頂きたい」と、お見事と言って良いくらいの手際だった。
恐らく、私達の様な環境の者から、今まで何度も金銭を受け取っているのだろう。

それから合格発表までは、緊張感で押し潰されそうな毎日だった。
薫の合格が決まった時は、流石の私も取り乱して義母と抱き合いながら飛び跳ねてしまったくらいだ。
その日、夫が帰宅してきて、残念なことに、上司の娘さんも、同僚の娘さんも
落ちてしまったと聞かされると、
改めてお金を払っておいて良かったとしみじみ思った。

入園式も終わり暫く経った頃
再び、高野から電話があった。
二度と聞きたくはない声に、私らしからず声が震えた。

「な、なんでしょか?」

「実は、例の件ですが、、」

「れ、例の件?」

「お忘れですか?貴女の娘さん、薫さんの裏口入学の件ですよ」

「や、やめてください!、そんな言い方はやめてください!」

「失礼。実は大変なことになってしまって、、、お知恵を借りたいのです」

「大変なことですか?」

「ええ、貴女に500万渡された時、人目が無いと思って、堂々と枚数を数えていたじゃないですか?」

たしかにそうだった。あんな所で止めて欲しいと心底思ったものだ。

「その時、写真を撮られてしまったらしく・・・」

「え?ほ、本当ですか!!!」

「はい。こともあろうに、その写真はうちの理事の手元にあるようなのです。
 写真を撮った誰かは、私のことを見知っていたのでしょう、それで上司である理事に渡したのでしょうな」

「そ、そんな!!」

「とりあえず、話を聞きたいそうなので、理事に会って頂けますか?」

「会ったところで、私は知らないと言うだけです」

「いえ、それが、、、実はもう、貴女からお金を貰って、薫さんを合格者名簿に入れたこと、白状してしまっているんです・・・」

「は?何故ですか!!貴方が自分のお金を数えていただけって言えば良かったじゃないですか!!!」

「いえ、写真には貴女もばっちり写っていましたよ。お金の包みを私に手渡すところまで、はっきりと」」

「なっ・・・」
あまりのことに言葉が出なかった

「ただ、まだ望みはあります。いえ、だからこそ私も貴女に相談しているわけです」
「貴女と理事は大学時代の知り合いらしいじゃないですか?昔馴染みとして見逃してもらえないか頼んでもらえませんか?」

昔馴染み・・・全く記憶に無かった。
「たしか面接で真中に居た方ですよね?私には全く覚えがないのですが・・・」

「そうですか。。でしたら諦めるしかありませんね。明日にも記者会見を開く予定の様ですが、、」

「き、記者会見?」

「はい。そうなれば、私も、貴女の家も、、そして薫さんの将来も、お終いですね。残念ですが、、、」

「ま、待ってください!!とにかく連絡してみます。連絡先を教えてください!」

「そうですか。是非よろしくお願いします。ただ、連絡してアポを取って・・・などという悠長なことはしていられない状況ではないですしょうか
 これから学園へ向かいましょう、私も同行いたします」

学園に着くと、なぜか理事長室に案内された。

「おお!やっぱり、あの美佐さんだ、久しぶりだね」

「?」

「僕のこと忘れちゃったかな?サークルで一緒だったフェラ松だよ」

「え?む、村松くん?あの村松君なの?」

「そうだよ。あの村松。宴会で君にソース飛ばしてしまって、その罰で、皆の前で先輩の汚いチンコしゃぶらされた村松だよ」

「・・・」

「おい!高野!てめえ!何笑ってんだあああ!!!」

ガシャーン。全く笑ってなどいない高野の足元に灰皿が飛んでいった・・・

「む、村松くん、待って、あれは私のせいじゃ・・」

「分かってるよ。美佐さんのせいじゃないよ。君は汚物でも見るような目をして、早々に自室に引き上げて行ったもんね」

言いながら村松は机の上に写真を何枚か並べた・・・

見た瞬間、息が詰まった。
「なっ・・」
声がうまく出て来ない。
どう考えても言い逃れができるような内容ではなかった。

「ねえ、妖怪ウォッチって知ってる?子供達の間で流行ってるんだけど?美佐さんみたいな賢い人の家庭では見ないかな?

妖怪ウォッチ?
場違いな言葉に、項垂れていた顔を上げると村松は真っ直ぐ私を見つめていた。

「知らないの?」

「し、知ってます、それがどうしたんですか!」

「ほう。じゃあ、主題歌のゲラゲラポーの歌は知ってる?この間、歌たったら子供達が喜んでね」

は?何をいってるの!この男は

「高野、美佐さんに、ゲラゲラポーの歌を教えてやってよ」


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