俺、風邪女子フェチになりそうです

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俺、風邪女子フェチになりそうです
オートロックのインターホンを押すと、しばらく経ってから、「ハイ」と言う声が聞こえた。

ちょっと鼻の詰まった声だ。

(風邪だなあ・・・)

俺「あ、サークルのAだけど」

エミ「A君?ちょっと待ってね・・・ハイ、開いたよ」

しばらくして鍵の外れる音が聞こえた、ドアを開けてるとエミが立っていた。

エミ「おはよう~」

エミは赤いパジャマ姿だ。

風邪のせいか鼻声で顔色も良くない。

俺「よう、風邪なんだって?」

エミ「うん・・・まだフラフラする」

俺「お見舞いに来たぜ~」

エミ「ひとりー?」

俺「うん」

エミ「そっかー、ありがとね」

俺「お粥買ってきたから、作るぜー」

エミ「ほんとー?ありがとー!上がって」

俺「お邪魔しまーす」

お見舞いとはいえ、女の子の部屋に上がるのはドキドキする。

何で女の子の部屋って、こう甘いような良い匂いがするんだろう。

部屋は1ルームで、キッチンがついてる。

割と広いと思うけど、部屋の隅に黒いピアノがドンと置いてあるせいで、ちょっと狭くも感じる。

エミが身を縮めて寒そうに立っているので・・・。

俺「ああ、俺お粥作るから、出来るまで寝てていいよ」

エミ「うん、ありがとう。エヘヘ」

そう言って、エミは嬉しそうに布団に潜り込んだ。

まあ出来るまでって言っても、お鍋にお湯を沸かして袋ごと入れるだけだ。

時間は午後6時、ちょっと早いがまあ良いだろう。

とにかく何かしてないと落ち着かなかったのだ。

ほどなくしてお粥が出来上がる。

コンビニで200円のお粥だが、まあまあ美味しそうではないか。

器に移した後、ハシとお水、それから市販の薬をお盆に乗せて部屋に行く。

しまった、梅干買えばよかった。

エミは布団を口のあたりまで上げて、寝ている。

モグラか君は。

でも可愛いから良し。

俺「エミ、出来たぞ」

そう言うと、エミは薄っすらと目を開けた。

頬は上気していて、目は熱のためかいつものくっきりした奥二重の目がとろんとしている。

顔は心なしか赤い。

なんていうか・・・萌えました。

そりゃ風邪で寝てるんだし不謹慎かもしれないけど、風邪を引いて寝てる女の子って何か色っぽい・・・。

パジャマの力もあるんだろうか?

なんだかエミが凄い可愛く見える、ドキドキしてしまった。

なんだか風邪フェチになりそうだよ!!

思わず、(ベッドにぬいぐるみがあったらもっと良いのに)とか考えた俺はバカ野郎でしょうか。

エミ「うーん、あんまり食べたくないなあ」

俺「ダメだよ食べなきゃ。人間食えば勝つっておじいちゃんがよく言ってたぞ」

ちなみに、おじいちゃんは戦争体験者である。

エミ「じゃあさ、A君食べさせてくれる?」

俺「バーカ、自分で食べろよ」

(ああ、何て勿体無い事を、この辺がヘタレです・・・)

エミは、「冗談だよぉ」とケラケラと笑ってます。

(チッ冗談か)

食事を終え、薬を飲ませるとエミは眠くなってきたようです。

俺はもうちょっと居たかったけど、特に居る理由も見つからなかったので・・・。

俺「んじゃ、ゆっくり寝ろよ。俺はそろそろ帰るわ。お大事にね」

エミ「A君、何か用事でもあるの・・?」

俺「いや、特にねーけど」

エミ「じゃあさ、もうちょっと居てもらっちゃ、ダメ?」

俺「ん、ああ、全くしゃあねえなあ!」

口元がにやけてたんじゃないだろうか?

やっぱり風邪で一人は心細いんだろうか、特に用事も無かったんで、もう少し居る事にした。

それにエミと一緒にいるのは俺としても嬉しいので。

エミと少し話していたけど、眠たそうだったんで。

俺「少し寝ろよ」

エミ「うん、勝手に帰ったりしない?」

俺「帰ったりしない」

可愛い奴。

一人は心細いんだろう。

エミ「じゃあ、眠る」

嬉しそうに布団に潜る。

潜って眠る派か。

やる事がなかったんで、『NANA』を一巻から読み始める。

テレビを点けて起こしちゃったら可哀想だからな。

三巻あたりまで読んで、ふとエミの方を見ると、苦しそうに肩で息をしながら寝ている。

やっぱり熱があるんだろうか?

近づいて、手をエミの頬に触れてみる。

エミ「う・・・ん・・・」

俺の手が冷たくて気持ちいいのか、頬を擦りつけてくる。

普通に可愛かったが、それより熱を何とかしてやりたいので、コンビニに冷えピタを買いに行く事にした。

どうでもいい事だが、俺は冷えピタとバファリンに絶大な信頼を置いている。

閑話休題。

本日の出費累計800円ってとこか。

部屋に戻ると、エミはベッドから体を起こしていた。

何やら膨れっ面だ。

俺「あ、起きたんだ」

エミ「起きたんだじゃないでしょ!帰っちゃったのかと思ったじゃん」

俺「冷えピタ買いに行ってたんだよ、苦しそうだったからさ」

エミ「むう、勝手に行かないでよね」

膨れるエミをあやしながら、さっそく冷えピタを張ってやる事にした。

俺「じっとしてろよな」

エミの前髪を掻き分けて、可愛いおでこを出す。

そこに冷えピタを張ってやった。

エミ「ひゃっ、冷た~い」

俺「まあ、そりゃお前冷えピタだからな。お前、熱はどうだ?」

そう言って、エミの頬に触れた。

エミの頬はまだ熱を持っている。

エミ「A君の手、冷たくて気持ちい」

そう言って俺の手にそっとエミが手を添えた。

思わず手を触れられてドキっとした。

女の子の手はふにゃふにゃしていて気持ちが良い。

テニスダコの出来た俺の手とはどう見ても同じ人間の手とは思えない。

気が付けばエミと俺の顔の距離は30cm位・・・、エミと視線が合う。

エミ「あ・・・」

エミも気付いて急いで手を離す。

二人動きが止まる。

と言うより固まった。

言葉が出てこない。

俺てんぱりすぎ。

俺がピクっと顔を動かすと、エミもピクッと顔が動く。

その顔に吸い寄せられる様にさらに近づくとエミは目を閉じた。

軽く唇と唇を重ねるだけの軽いキスをした。

ちょっと唐突すぎただろうか?

エミは赤く染まった頬をさらに赤くする。

一度してしまうと吹っ切れてしまい、その後は二度、三度とお互いを確かめ合う様にキスをした。

本来ならこのままエッチな事をしたかったけど、さすがにエミは風邪を引いて弱っているので自分の欲望を何とか抑えた。

エミ「びっくりした・・・」

エミは真っ赤な顔を背けて、そう小さい声で言った。

俺「俺もなんだかびっくりした」(マヌケな俺)

エミ「A君って付き合ってる人いないの?」

俺「いないよ」

エミ「ふうん・・・」

俺「エミはいないの?」

エミ「いないよ」

俺「ふうん~」

エミ「ム」

俺「ム」

クスクス笑うエミ。

もう一度顔を近づけてキスをする。

エミ「風邪移っても知らないよ」

俺「移らないよ、バカは何とやら」

エミ「自分で言う事じゃないよ」

エミの体は熱の為か汗ばんでいて、石鹸の香りが漂っている。

もう一度キスをして、今度は舌を入れてみる。

エミの唇や舌の感触を堪能する。

顔を離すと、とろんとした目でじっと見てくる。

それが堪らなく可愛くて、同時に風邪を引いてるエミを守ってやらねばとか、変な正義感が俺を駆り立てていた。

俺「なあ、今日ここに泊まって良いか?」

エミ「えっ」

俺「別に変なことしないぞ!ただ一緒に居てやる!」

そう言うと、エミは目を丸くして、それからプッと吹き出した。

エミ「私が寝たら襲ってくるんでしょ?」

俺「当たり前だろう」

エミ「そうだと思った」

笑うエミ。

それから数時間、ベッドに寝てるエミと手を繋いだまま、「治ったらどこか行こう」とか話してました。

エミが眠そうにあくびをしたので、電気を消して眠る事にしました。

エミが出してくれた毛布とクッションの即席ベッドを作り、お互いに、「おやすみ」って言った後、もう一度キスをした。

しばらくベッドのそばにいて、エミの手を握ってあげた。

エミは時々目を開けては嬉しそうに笑って、また目を閉じた。

しばらくして寝息を立てたので、俺も寝ることにした。

翌朝・・・。

毛布だけでは寒かったのか(冬だしね)、はたまたキスしたせいで移ったのか、お約束のように俺は風邪を引きました。

その後、俺たちは正式に付き合う事になりました。

サークルの連中に冷かされるのが嫌なので秘密にしていたのですが、お見舞いに行った時にエミの家に泊まっていた事があっさりバレてしまいました。

風邪もお互いすっかり完治し、エミはまた元気いっぱいの女の子になりましたが、やっぱり風邪を引いて寝ている女の子は、また違ったオーラを持っている様に思う。

おしまい。

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