喫茶店

エロい体験談まとめ

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喫茶店
専門学生の時、市内に出てきて一人暮しをしていた。
最初は貯金を食いつぶしてたけど、金は使えばなくなるもので、バイトでもしないと生活ができない状態になり、俺は職探しを始めた。
いざ動き出してみたものの、なかなか思うようなバイトが見つからず、ある休日の日、金もないので自宅周辺をワケもなく散歩していた。
そんな時、ある喫茶店を見つけた。ちょうど時間は昼頃になっていて、俺の腹も鳴り始めていた。
財布を覗くと、千円札が一枚と小銭がチラホラ…。
少し迷ったが、俺はなぜか惹かれる雰囲気があるその喫茶店へと足を踏み入れた。
中は俺好みの、こじんまりしたあまり広くない感じだった。
カウンターが一つあり、テーブル席が二つ…。
たった一人でテーブル席を占有するのは気が引けた俺は、カウンター席に座った。
「いらっしゃい。何にしましょうか?」
カウンターにいた店員の女性が明るく言った。
俺はメニューにざっと目を通し、ツナサンドとホットコーヒーを注文した。
店員の女性は「はい、かしこまりました。しばらくお待ちくださいね」と言って、奥のキッチンらしき方へ引っ込んだ。

再び俺は店内を見回した。
俺以外に客はいない。場所が住宅地のど真ん中なので、外を行き交う人もあまりいない。
俺は心の中で、「こんなんで店、成り立ってんのか?」などと思ってしまった。
しばらくして、注文したものが運ばれてきた。俺は空腹のあまり、すぐさまサンドを掴み、口に運んだ。
その瞬間、口の中に何とも言えないうま味が広がった。
コンビニなどで買って食べるものなどとは格が違う…。
別に特別な味付けがしてある感じはしなかったが、なんとも素朴な味が俺の味覚をモロに刺激した。
「おいしい…」
俺はあまりの感動に、小声でそう呟いてしまった。
一人暮しの学生にとって、家庭的な味のサンドイッチは激しく心と腹を満たしてくれた。
そんな時、カウンターでクスッと笑う声が聞こえた。
ふと目をやると、先程の店員の女性が、無我夢中で食べる俺を面白そうに眺めていた。
「あ…はは。すいません…」
俺はなんだか恥ずかしく、変な照れ笑いを浮かべてしまった。
すると店員の女性は俺の前に歩み寄り、「お口に合いました?」と聞いてきた。

「はい。すごい美味しいです。コーヒーともめちゃ合いますね」
俺は少し照れくさい気持ちで言った。
「ありがとう。うれしいです。こんなあからさまに美味しそうに食べてくれるお客さん初めてです」
店員の女性は本当に嬉しそうに言った。
俺はその時初めて、その女性の顔をまともに見た。
長めの髪を後ろで束ねて、すらっとしていてとても綺麗な人だった。しかし見た感じ、確実に俺よりは年上だった。
さしずめ20代後半といったところか。
そのやりとりがなぜか俺とその店員の女性を打ち解けさせた。
「お客さんは…高校生かな?」
「いや、今年から専門学生の一年です」
「そうなの?。いや、でもお客さんみたいな若い人がうちに来てくれるの、初めてじゃないかな」
そんなやりとりをしながら、俺は店をその店員の女性が一人で切り盛りしている事を知った。
それから俺が学校の為に市内に出てきた事などを話したりし、気がつけばもう夕方になっていた。
すると、いきなり店のドアが勢いよく開かれ、数人の客が入ってきた。全て若い女性だった。
どうやらその店は、夕方には近所の若い主婦達のたまり場になっているようだった。

俺は若干居心地が悪くなり、会計を済まして店を出ようとした。
お釣りを貰おうとした時、一緒に小さな包みを手渡された。
「一応うちの手づくりクッキーなの。よかったら食べてね。またお越し下さい」
そう笑顔で言った。
俺はなんとも言えない幸せな気分になりながら、店を出て自宅へと帰っていった。

その日から、俺は定期的にその喫茶店に通うようになってしまった。
一応常連と呼べる程の客となり、そのうちお互いの軽い自己紹介などもした。
店主の女性の名前は、智美さんといった。

本当は外食なんてしている余裕はないのだが、少し高くつく昼食のために朝食や夕食をかなり質素なものにしたりもした。
高いといっても、その喫茶店は良心的というか、メニューの値段は普通よりはずっと安かった。
コーヒーが200円でツナサンドが300円というから驚きである。
ある日、いつものようにサンドイッチとコーヒーを注文し待っていると、頼んでないはずのサラダが目の前に置かれた。
「あの…これは…」
少し戸惑った様子の俺に智美さんはにっこり微笑んで、「どうせ家では野菜とか食べてないんでしょ?食事偏ると病気になるわよ。サービスするから、ちゃんと食べてね」と言った。
俺は嬉しいとかそういう感情の前に、あかの他人の俺に優しくしてくれる智美さんの温かさに涙が出そうになった。
しかしそこはぐっと堪えて、「すみません。ありがとうございます」とお礼を言った。

智美さんの優しさに触れたその日だけは、なんだか俺は無口になってしまい、ただぼぉーとしながらコーヒーを飲んでいた。
そんな時、ふと店のドアが開いた。見た感じ業者の人のようだった。
食材か何かを配達しにきたのかダンボール箱を二個置いてから、智美さんに伝票のような物を渡し、足早に帰っていった。
さっそく智美さんはその箱を運ぼうとしゃがみ込んだが、重かったのか諦めてキッチンに戻ってしまった。
その姿を見た途端、俺の身体は否応なしに動き出した。
俺は店のドアの所に行き、ダンボール箱を持ち上げた。
そして「智美さん、これ迷惑じゃなかったらそっちに運んでいいですか?」と言った。
智美さんは慌てて奥から出てきた。
「ちょっと!お客さんにそんな事してもらえないわよ!置いといて!後で台車で持っていくから!」
智美さんは本当に申し訳ないといった感じで言った。
しかし、俺にとってはなんて事はない。それに、サラダのせめてものお礼にもなるかと思った。

「別にこれくらいなんでもないですよ。そっちでいいですか?」
そう言うと智美さんは少し困ったように笑い、「もう…本当にごめんなさいね…。じゃあこっちの冷蔵庫の隣にお願いしていい…?」
俺はさらにもう一つの箱を積み上げ、キッチンの方に運び込んだ。
「ごめんなさいねぇ…。豆だから重かったでしょ?」
「いやいや、全然大丈夫でしたよ。高校ん時バイトであれより重いもんいつも運んでましたから」
「そうなの?あぁ、でも○○君、腕とか結構ガッチリしてるもんねぇ。何のバイトしてたの?」
「酒屋で日本酒とかビールとかを運びまくってました」
「なるほど。だからねぇ。はぁ…やっぱ男手があると頼りになるねぇ…。ウチを手伝ってよ!」
智美さんは冗談っぽく笑いながら言った。
でも…もし少しでも可能性があるなら、求職中の俺にとっては願ってもない事だった。
それに、智美さんに雇ってもらえるなど、夢のような話である。
「あの…マジで働かせてもらえませんか…?」
数分後、俺が智美さんの喫茶店で働く事が決定した…。

次の日、俺はさっそく智美さんの店で働き始めた。しかし、大きな問題があった…。
俺は料理というものがからっきしダメだったのである…。
軽食を作るだけでも、パンを焦がしたりと、智美さんを手伝うどころか逆に迷惑をかけているように感じた。
しかし、失敗ばかりしてヘコむ俺に智美さんは「なんか○○君は元気な男の子を絵に描いたような人ね」と言って、優しく笑ってくれた。
そんな俺も、いろいろ失敗しながらもそれなりに智美さんの手助けができるようになっていった。
それに、智美さんの店で働くようになり、食費が全くと言っていい程いらなくなった。
智美さんはとても気立てがいい人で、「給料そんなにあげられないし、せめて食事くらいは…」と言って俺にいつもご飯を作ってくれた。
俺は学業そっちのけで、智美さんの店で働く事に大きな幸せを感じていた。

もの珍しいからか、自分が客の時には苦手だった、常連の主婦軍団にも気に入られるようになった。
俺は生まれて初めて、逆セクハラというものを経験した。
注文品をその人達のテーブルに運ぶと、いつも身体のあちこちを触られた…。
欲求不満の集団だったのだろうか…?

まぁ、そんな事はどうでもいい…。
ちなみに主婦軍団の中には未婚の人もいた。
聞くところによると、智美さんを入れた五人で大学時代の仲良しだったらしい。どおりで親しい感じではあった。

ある日、主婦軍団の一人である東条さん(一番強引系な感じの人)が俺を呼び付けた。
「あのね、今日の夜ウチで智美も入れてみんなで食事するのよ。僕も強制参加ね。わかった?」
なんとも強引である…。俺は少し助けを求めるように智美さんの方を見た。
なにやら怪しげに笑っていた…。
「あ…あぁ、じゃあ行かせてもらいます…はい…」
俺がそういうと主婦軍団の間で小さな歓声が上がった。
すごく嬉しい気持ちはあるが、一体この流されるままの自分の不甲斐なさはなんなんだ?などと思ってしまった。
「じゃあまた後で?!○○君!絶対来ないとダメだからね!」
東条さん達は騒がしく、そして風のように去っていった。
「あの子、結婚しても全く変わらないのよねぇ…。なんかごめんなさい…」
智美さんは呆れたように言った。
「いや、なんていうか、本当に俺なんかがお邪魔していいんですかね?」
俺はおずおずと聞いた。

「私はこうやって店やってるけど、○○(東条さん)はいつも主婦は毎日つまんない!って口ぐせだし、他の子も会社で働いたりしてるから、毎日がおもしろくなさすぎっていうのよ。」
何かすごくリアルな悩みだと思った。
「そんな時に○○君がウチに来てくれるようになって…あの子たちにはちょっとした日常の変化が嬉しいんだと思う。だから、もし迷惑じゃなかったら付き合ってほしいな。」
智美さんはどうしてこう万物に優しいのだろうか…。
親切などという以前に、相当な友達想いでもある…。
俺はますます智美さんを尊敬し、好意を抱いた。
そしてそれが、だんだん恋愛感情へと変わりつつある事に、俺自身が気付き始めていた…。

その日の晩、俺は東条さんの言い付け通り、智美さんの車に乗せられ、食事会に参加した。
東条さんの家は、かなりの豪邸だった。たしかに他の人たちより若干セレブな雰囲気はあったが、本当にセレブな奥様だったのである。
智美さんがインターホンを押すと、すごい勢いで玄関のドアが開いた。

そして智美さんの隣にいる俺の姿を見るやいなや、「いやーん!本当に来てくれたのー?嬉しい!」と大声で言って、
あろうことか俺におもいっきり熱い抱擁をかましてきたのである…。
言葉にできない香水の独特な香りが鼻をついた。
「ちょっと!東条さん!!」
俺はどうしていいかわからなくなり、玄関先でジタバタしてしまった。
女性にそれ程激しく迫られた事がなかった俺はひたすらうろたえるばかり…。
そんな姿を智美さんを含めた4人の綺麗なお姉さんがほほえましそうに見ている…。
なんたる奇妙な構図……。
そんなこんなで、俺と智美さんはやっとの事で東条さんのお宅のリビングへと足を踏み入れた。
家の中は外観に合い対し、豪勢な造りだった。
ふと棚のような所の写真に目がいった。
自分の親父と同じくらいの初老の男性と一緒に写っている東条さん…。
だいぶ歳はとっている感じだったが、なかなかダンディな男性だった。
「かっこいいお父さんですね」
俺は何気なく東条さんに言った。
しかし、東条さんは何を思ったか、いきなり大笑いした。
そして、「アハハハ!それ、私の旦那よ?」と言った。

「すみません!俺知らなかったんで!ホントにすみません!」
俺はすごく失礼な事を言ってしまったと思った。
しかし東条さんは笑って、「すっごいジジイでしょ?私との結婚で四回目らしいわ。
彼、金持ってたからね?。で、つい気持ちがフラフラ?ってなって結婚しちゃったのよ」
返す言葉もなかった…。こういうのを「玉の輿」というのだろうか…?
しかし、さすがにそれ以上、プライバシーに関わる事は聞きたくなかった。
それ以後はこれといったハプニングもなく、みんなでご飯を食べ始めた。
料理は東条さんがほとんど作ったらしいが、智美さんに負けずとも劣らない絶品の味だった。
よくよく聞くと、智美さん達は大学で料理サークルなるものを作っていたらしい。その時に、料理の腕をかなり上げたそうだ。
美女5人の料理サークル…きっと男子学生がほっとかなかっただろう…。
ま、それもどうでもいい。

食事が済んだ後は流動的にお酒の時間になっていった。
俺はまだ二十歳までは3ヶ月程足りなかったので、誘惑に負けそうになりながらもジュースをチビチビと飲んでいた。

酒が入ると、やはり男女問わず話題といえば猥談である…。
かなり酔いが回っている東条さんを筆頭に、なかなかどぎつい話題が飛び交う中、俺はただ苦笑いを浮かべていた。
俺はふと、智美さんを見た。
特に騒ぎ立てもせず、少しお酒で顔を赤らめながらみんなの話にクスクスと笑っている。
この人達は、ずっとこういうスタンスで付き合ってきたんだろうなぁ…。
俺は心の中でそう思った。
少し天然の朝倉さんが話題をふり、東条さんがさらに話を膨らませて場を掻き回す。それにするどく突っ込む宮岸さん。
その四人のやりとりを優しく嬉しそうに見届けている智美さん……。
考えたら、みんなそれぞれ違っていて、素敵なお姉さん達だと思った。
そんな時、ふと智美さんと目が合ってしまった。
俺は思わずドキッとしたが、智美さんは少し困ったように苦笑いしていた。でも楽しそうだった。
俺もそれに応えて、智美さんに微笑んだ。

そんな俺と智美さんのやりとりに気付いた東条さんがいきなり絡んできた。
「ちょっと!何二人でいい感じの雰囲気出してんのよー!ずるいぞぉ…」

そう言って東条さんは智美さんを突き飛ばして俺の隣に座り、身体をもたれ掛けたりしてきた…
「あ?いい感じ。ねぇ智美?。アンタ○○君に給料とは別のご褒美よ…とか言って、いやらしい事とかしてるんじゃないでしょうねぇ?」
もはや東条さんの酒ぐせの悪さは明白だった。
「さぁねぇ?。どうかなぁ。○○君は私が雇ってるんだから、何しようと勝手でしょ?」
珍しく智美さんも冗談を言った。おどけた智美さんも魅力的だった。
俺は引っ付いて離れない東条さんをそっと引きはがし、「すみません、ちょっとトイレお借りします」と言ってその場を離れた。
ジュースを飲み過ぎたせいでかなりトイレがちかくなっていた。

しばらくして俺はリビングに戻り、再び賑やか輪の中に入った。
しかし、ある身体の異変に気がつき始めた。
なにやらトイレから戻ってきてしばらくした辺りから身体が無性に熱い…。それに何か全身がすごく重く、頭も少し痛くなってきていた。
そういえば、さっきから飲んでいたコーラが妙な味がする……そう思ったあたりで俺の意識はプツンと音を立てて途切れた…。

どれくらいブラックアウトしていただろうか…。
気がつくと、俺はソファに身体を埋めていた。
「ここ…どこ?」
ふと見ると、身体には毛布がかけられている。俺の物ではない。
俺はガンガンする頭を必死で回転させ、記憶を辿り始めた。
しばらくして、そこが東条さんのお宅だという事に気がついた。俺はすぐに跳び起きた。
すると、キッチンの方から東条さんがやってきた。
「やっと目覚めた?」
どうやら東条さんの酔いは冷めたようで、先程とは違って穏やかな感じだった。
「はい…すみません…。なんか俺急にフラフラしてきて…。たぶんコーラに酒が…でもなんでだろう?」
そう言うと東条さんがクスッと笑った。
「ごめんなさい、私酔ってたから悪ふざけして、僕がトイレ行ってる間にコーラに一杯ジン入れちゃったのよ。」
正直、笑い事じゃねぇだろ!と思った。しかし、今の穏やかなモードの東条さんに文句を言う気分にはなれなかった。
「もう…ひどいじゃないですかぁ…。でも、ご迷惑をおかけしました。こんなとこで寝込んじゃって…」
「いいのよ。私こそごめんね。ちょっとはしゃぎすぎたわ」

「何か冷たいもの持ってくるわね」
そう言って東条さんはキッチンから水を持ってきてくれた。俺は喉がカラカラだったので、それを一気に飲み干した。
一息つき、やっとある事に気がついた。みんないない…。智美さんもいない…。
「あの…みなさんは…」
「智美以外はあれから帰ったわ。明日も仕事らしいしね。○○(宮岸さん)なんか幼稚園の送り迎えもあるし」
「そうなんですか。」
「帰る前にみんなで寝てる○○君にいたずらしちゃおうって話してたんだけど、智美に阻止されちゃった?」
なんとも恐ろしい…。しかしやはり、智美さんは俺の女神様である…。
「智美はしばらく待ってたんだけどね。あんまり起きないから観念して帰っちゃったのよ。」
俺はもう少し早く目覚めたかった…。明日は智美さんに謝ろう…そう思った。
「どうしよ、二人きりね…」
東条さんが怪しく笑って言った。どう考えても…誘っていた…。
するといきなり俺を押し倒すように抱き着いてきた。
「ちょと!勘弁してくださいよ!東条さん!」
俺が喚いても、東条さんは離れようとはしない…。

「私の旦那、もうずっと家に帰ってきてないのよ…。どうせ今だって、どっかのホテルで私より若い女とお楽しみ中よ、きっと。」
俺は抵抗の手が止まった…。
「別にさ、悲しいとか全くないのよ。だって結婚した時から愛情ゼロだもん。だから今になって気付いちゃったのよね…お金で結婚なんかしたら、絶対最後は馬鹿みるって…」
東条さんは少し寂しそうな顔をした。
「東条さん…俺みたいなガキがこんな生意気な事言っていいのかわからないですけど、旦那さんと別れたほうがいいと思います…。東条さん綺麗だし、きっと他にもっといい人見つかりますよ」
「あらぁ?若いクセにマジな事言うじゃない…でもね、この歳になるといろんな事を考えちゃって、
潔く物事を片付けられなくなっちゃうの…。でも…ありがとうね」
やはり東条さんは大人だなと思った。彼氏彼女の間柄とはワケが違う。簡単に「別れる」などという言葉を口にした自分を恥じた。
「でもね、最近好きな人ができたのよ?。今私に抱かれてる……○○君!」
そう言って再び東条さんは俺を抱きしめてきた。
「ねぇ…私としよ?なんでもしてあげるわよ…」
また気を失いそうになった。

東条さんは俺の頬に軽いキスをした後、次は激しく唇にキスをしてきた。舌で無理矢理に口をこじ開けられ、息がとまりそうになった。
東条さんの髪のにおいが俺の鼻をくすぐり、クラクラした。やがて東条さんはいやらしく笑いながら口を離した。
「キスするの、初めてじゃないわね?」
俺は目をそらしながら、無言で頷いた。
「セックスは…?」
「高校の時に…でも一人しか…」
まるで尋問されてるような気分だった…。
「あぁん…初めてじゃなかったんだ…。ちょっと残念…」
もう俺は何も言えなかった…。酒を飲まされた時より顔と身体が熱くなっていた…。
やがて東条さんは俺の股間にも手をのばし、ジーンズの上から俺のモノを刺激し始めた…。
そんな日に限って、しばらくヌイてない時だったため、すぐに勃起してしまった…。
「フフフ…やっぱ若い子はいいね…」
そう言ってベルトに手をかけた。
「もう、智美は諦めなさい。私なら気持ちがはっきりしてるじゃない。別に苦労しなくても僕の物になるのよ?」
さすがは東条さん…。俺が智美さんに好意を抱いている事はお見通しだった。

「なんで俺の気持ち知ってるのに、こんな事するんですか…?」
「単純な事よ。○○君の事が欲しいから。私は智美みたいにお人好しじゃないもん」
確かに、俺は別に智美さんに気持ちを伝えたワケでもなく、俺を男として見てくれている保証もない。
しかし、このまま東条さんを抱いてしまったら、俺の気持ちは全て無駄になる…。
智美さんの存在がなければ、東条さんのような綺麗な人に迫られれば不倫にはなってしまうが、迷う余地なく本能に任せるだろう。
俺も男だ。
しかし、その時の俺には智美さんがいた。智美さんしか見ていなかった。
心の中で、智美さんの優しい笑顔が浮かんだ。
俺は身体を起こし、東条さんの身体を離した。
「東条さん…俺は東条さんの事好きです。おもしろいし、綺麗だし、ちょっと強引ですけど優しいですし…。
なんか本当のお姉さんみたいで…。でも俺は、やっぱ智美さんを諦めて東条さんを抱くことなんてできません。」
俺は東条さんの目をジッと見つめて言った。
すると東条さんはニッコリ笑った。
「やっぱりね…そういう一途なトコがあるから我慢できなくなるんじゃない…」
東条さんは呆れたように言った。

「本当はね、誘いにのるか試してたってのもあるの。でも、作戦失敗って感じね…。せっかく智美から横取りしてやろうと思ったのに…」
「すみません…」
「ううん、いいの。やっぱ僕は私は思ってた通りの男だったわ。好きな相手以外の女に誘われても、惑わされないかぁ…。もっと好きになりそう…」
いつもの東条さんの調子に戻っていた。俺は少し安心した。
「でもね、○○君は知らない事があるの。智美の事でね。」
東条さんが俺に釘を刺すように言った。
「なんですか…?」
「それは私が言うべき事じゃない。智美自身から聞くか、僕自身が知らないといけない事よ。」
俺はただ、頷いた。
「別に脅かすわけじゃないけど、覚悟だけはしておきなさいね…」
その言葉の意味がどれだけ重い物なのか、その時の俺はまだ知るよしもなかった…。

「じゃあ俺…そろそろ帰ります。」
俺は上着を着て、立ち上がろうとした。
「ちょっとココどこかわかってんの?歩いたら僕の家まで一時間半はかかるわよ。今夜はウチに泊まっていきなさい。明日の朝、車で送るから。」
確かに歩いて帰るにはキツい距離だったので、とりあえずその夜は東条さんのお宅に泊まらせてもらう事にした。
俺は毛布だけを借りて、ソファーで寝させて欲しいと言った。
「ダメよ!風邪ひいたらどうするの!店休まないといけなくなるわよ!?ほら、寝室行くわよ」
東条さんは俺の手を引っ張り、強引に寝室へと俺を連れ出した。
「予備の布団なんてないから、ここに寝てくれる?」
「すみません…。じゃあ失礼します…」
俺は申し訳ない気持ちでベッドに入った。
しかし、ふと気付いた。
「東条さんの寝るとこないじゃないですか!やっぱ俺ソファーでいいです」
俺が起きようとすると、東条さんがのしかかってきた。
「ねぇ一緒に寝るくらい、かまわないでしょ…?」
これが東条さんの必殺技なのか、すごく淋しがりな目をして俺を見た。
「はい…」
俺はそれ以上食い下がる事はせず、ただ黙ってベッドに入った。

俺はいつ東条さんがベッドに入ってくるのかドキドキしながら、背を向けて横になっていた。
すると、部屋の隅でなにやらゴソゴソとやり始めた。おそるおそる振り向くと、そこには下着姿の東条さんが…!
俺は慌てて向き直った。
それに東条さんも気がついたのか、「見たいの?別に見ていいのよ?。なんなら生で見せてあげようか?」
「いや…あの、早く服着てください…。」
そのようなジョークに乗れる程、俺は大人ではなかった。いや、もしかしたらジョークじゃなかったかもしれない。
ようやくパジャマに着替えた東条さんがベッドに入ってきた。
俺はただ無言で、背を向けながら身体を強張らせていた。すると東条さんは後ろから俺にしがみついてきた。
「暖かい…」
しかし、それ以上は何もしてこなかった。だから俺も抵抗しなかった。
少し落ち着きを始め、少し眠気がやってきた時、東条さんが俺の耳元に口を寄せた。
「智美にフラれたら、私としようね。いつでも取り入るスキ狙ってるから、覚悟してね…」
「ちょっと…もう勘弁してくださいよぉ…」
東条さんはクスクスと笑って俺を抱く手に力を込め、二人とも眠りに落ちた。

次の日の朝…。目が覚めると横に東条さんはいなかった。俺はのっそりと起き出し、リビングの方に向かった。
すると、エプロン姿の東条さんが朝食を作ってくれていた。
「お寝坊さん。なかなか起きてこないから起こしにいこうかと思ってたのよ。ほら、早く食べなさいね。」
俺は昨夜のドンチャン騒ぎが嘘のように綺麗に片付けられたリビングに座り、朝食を食べ始めた。
やはり…朝から暴力的な旨さだった。別に高級なものが皿にのってるわけじゃない…ただの玉子焼なのに、なんとも美味しかった。
智美さんにも朝食を作ってもらった事はなかったので、俺は朝から幸せな気分になった。
もしも東条さんのような姉がいたら、俺の中学や高校時代はもっと潤ったものになっていたかもしれない…。
「ごちそうさまでした!すごい美味しかったです。」
「よかったわ。ホント、気持ちいいくらい綺麗に食べてくれて…作り甲斐があるわね?」
そう言って東条さんは嬉しそうに笑った。
「誰かに朝ご飯作るなんて久しぶりだったな…。やっぱいいもんね…。でも、あのジジイが帰ってきても朝食なんて作ってやんないけどね!」
俺は苦笑いするしかなかった…。

「じゃあ俺、そろそろ支度します。」
俺は食器をキッチンの方に運ぼうと立ち上がった。
「ねぇ…今日は店定休日でしょ?用事ないんだったらお昼ぐらいまでウチでゆっくりしていきなさいよ?。ダメ?」
また東条さんが俺に甘い誘惑をしてきた。しかし、今そんなものにのってる場合じゃない。
「いや、もうこれ以上長居しちゃ悪いですよ。せっかくですけど帰ります」
俺がそう言うと、東条さんはしぶしぶ了解してくれたようだった。
それから俺は東条さんの車に乗せられ、何事もなく自宅まで送ってもらった。

次の日、俺はいつものように店へ仕事に出掛けた。学校もうかなり休みが続いている…。
いつも智美さんには「学校は大丈夫なの?」と言われているが、はぐらかしている。
本当は全く大丈夫ではない。
親に知られたらシバき倒されそうだったが、あえて考えない事にしていた。
「おはようございます!」
俺が店のドアを開けると、いつものようにすでに智美さんが準備をしていた。
「おはよう。おとついは大変だったね」
いつもの智美さんの笑顔がそこにはあった…。
やはり俺には、智美さんしかいないと思った。

「私ね、車で連れてったから帰りも送ってあげなきゃって思ってたんだけど、あんまり起きなかったから…。ごめんなさいね」
「いや、全然いいですよ。俺が長時間ダウンしすぎたせいなんで」
「ふふっ。スースー寝息たててたもんね。え、じゃあ帰りどうしたの?」
「なんとか帰ろうかと思ったんですけど…東条さんが朝になったら送ってくれるって言うんで…」
「えっ…じゃあ泊まったの?」
智美さんがいきなり軽食の仕込みの手を止めて俺を見た。
「はい。もう時間も遅かったんで」
その瞬間、智美さんの顔色が一瞬にして変わったのに、俺は気付いてしまった。
「そうなの…」
智美さんはそう言って、何も話さなくなってしまった。
馬鹿な俺は、「まさか…やきもち!?」などと思ったが、そんな感じではなかった。
ただ、「そうなの…」という一言に、何か釈然としない感情が含まれていた事だけを強く感じていた。
その日は、お互いの間に何か微妙な空気が流れていた。
俺は戸惑いの中、黙々とその日の仕事を終えた。


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