姉貴への想い

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姉貴への想い
電電公社と専売公社がいつの間にか民間企業になり、国鉄はJRに名前を変え、
円高不況にあえいでいた日本経済は、内需拡大の掛け声のもと徐々にバブルへと向かっていく。

バービーボーイズがパンクスを、BOΦWYが強烈な8ビートの縦ノリロックを奏で、
米米クラブが陽気に歌い、おニャン子クラブの誰が好きかで討論になる。

海外では、MADONNAは肌の露出が多すぎると叩かれ、マイケルジャクソンの肌の色がまだ褐色で、
QUEENのフレディマーキュリーが半裸でステージを駆け抜けていた。

俺たちは、バーチャルとリアルの区別なんか無くて、目の前にあること全てが現実だった。
昭和といわれた時代の後半を、団塊の世代ジュニアと勝手にカテゴライズされた俺たちは生きていた。

それは・・・。
携帯電話なんかなかったし、PCだって金持ちのボンしか持っていない。
電話も黒電話が当たり前で、廊下まで電話を引っ張って親に白い目で見られながら長電話していた。
夜中に女の子へ手紙を書いて翌朝読み返し、あまりの熱い内容に自ら赤面し、手紙を破り捨てる。

それが当たり前だった時代。
自分の思いを相手に伝えるには、自分の言葉が全てだった。

当時、KingOfHobbyと言われたアマチュア無線人口は100万人を超えていた。
我が家もアマチュア無線(ハム)を親がやっていた。

だから姉貴も中1で免許取得し開局した。
姉貴は美人だったと思う。仙道敦子と松本典子を足して2で割った感じ。
中学入学した俺は電気部に入部。
そこで先輩に教えてもらいながら、俺もハムの試験に合格し開局した。

このころは姉貴と一緒によく風呂に入っていた。
少女といわれる年代から思春期といわれる年代まで、意識はしていなかったけど、
姉貴の体は成長していたと思う。

学校じゃ恥ずかしくて姉貴とあまり口を聞かなかったけど、家ではべったりだった。
夜食に作った一杯のラーメンを分け合ったり、2人羽織りみたくアイス食ったり。

そして夕食が終わった後は無線で馴染みの連中とだべっていた。
今も当時も変わらないけど、そんな趣味持ってる10代は工業高校の奴ばっかりで、
女の子なんてほとんどいないから、姉貴はモテていた。
そして俺を含めた中学生の免許持ちも少ないから、俺もかわいがってもらった。

夕食後は姉貴の部屋でテレビを見ながら、姉弟で無線しながらいつも一緒にいた。

姉貴は中学卒業後、実業系の高校に入学した。
学校が結構遠かったから、姉貴の帰宅時間が遅くてだんだん一緒にいる時間が減ってきた。
仕方ないと思いつつ、少し寂しい思いはしていたんだけど。

俺も姉貴も免許持ちだから個別に無線が出来たんだけど、何となくそれまでは一緒に無線をしていた・・・。
そして、それが当たり前だと思っていた。

でも・・・
ある日姉貴が俺にトランシーバー(無線用語でリグ)をくれるという。
貰えるリグは144MHzのFMのみ。
姉貴は自前でリグを新調し、144MHzのオールモード(FM、SSB)を買った。

FMはFMどうし、SSBはSSBどうしでなければ話ができないから、
姉貴がSSBで話をしているのを俺は聞くことが出来ない。

《あぁそっか。彼氏出来たんだな》
ガキの俺でも一発でわかった。

俺の部屋に姉貴のお下がりのリグを設置はしたけど、寂しくて姉貴の部屋に行く
でも姉貴は俺の相手をあまり相手をしてくれない。
いままで夕食は寝るまでずっと一緒だったから、その空虚感はすごかった。

それからは俺の部屋で今までの連中と姉貴抜きでだべる事が多くなった。

姉貴の部屋からは姉貴の声はするけど、俺のリグでは機械的に聞けない。SSBで彼氏と無線してんだなってわかってたけど。
無線仲間も唯一の女の子がいなくなったから過疎化していった。
このころから一緒に風呂はいること無くなった。

昭和61年4月、俺は中3に進級。
姉貴は高2。
俺は地元の普通科が志望で塾通いを始めた。
帰宅して塾に行き、9時頃帰宅と言うのが週3回くらいで、自転車で通っていた。

自宅へ通じる道は細くて、きつい登り坂だったから帰りは押して帰る。
夏、真っ暗な夜道をわずかに燈る街路灯を頼りに自転車を押していると、
道が少し広くなったところに見慣れない車が停まっている。

《86トレノだ》
興味のある車種だから自然と目が行く。

人が乗っている。
《車中で抱き合ってるよ、暑い中ご苦労なこった》
なんて考えなが通り過ぎようとすると、車中の女の子と目があった。

《!!!!!姉貴じゃん。なにやってんだよ》
見たくないものを見てしまった。

だからといってどうすることも出来ない。
だまって俺は帰宅し、独りで酷くまずい飯を食っていたら姉貴が帰宅してきた。

「ただいまぁ。汗かいたから、先にお風呂入ってくる」

《汗かく様な事したのかよっ》
と心で毒づきながら、俺は姉貴と顔をあわさないように自室へ逃げ込んだ。
そのうち階下からお袋が馬鹿でかい声で風呂の催促をしてくる。
ムスっとしたまま入浴、すぐに無言で自室へ戻った。
そのうち、ドアがノックされる。

「なに?」
「入っていい?」
「いいけど、勉強中だからな」
「じゃちょっとだけ。最近、千里クンと話してないし」
「そうだっけか?」
「・・・・いまかかってる曲何?」
「BOSTONのAmanI'llneverbe」

机に向かったままぶっきらぼうに答える。
確かに最近、姉貴とはあまり話をしていない。
俺は塾通いだし、姉貴とは時間帯が全くあわない。
土日はバイトしてるとかで家にいない姉貴だ。

姉貴は俺の部屋の本棚物色しながら、こちらを気にしている様だ。

「姉ちゃん、何か用があるんじゃねぇの?」
「・・うん。さっきの事、お母さんに言った?」

《いきなり確信かョ》

「なんのこと?」
「え?だからさっきの?」
「さっきのって何?」

机に向かったまま答える。でも参考書のことなんかまるで頭に入らない。

「ううん、なんでもない。ねぇ千里クン、まじめな話していい?」
「あ?もう。なによ、さっきから」
「ごめんね、勉強中に。ちょっとだけ」
「いいよ。」
「ウチ、つきあってる人いるの」
「うん、それで」

ますます俺の不快指数が上がる。
ついさっき偶然知ったことを、改めて言われると強烈に腹が立ってきた。

「今日、彼氏に送ってもらってきたの」
「ふぅん、俺の知ってる奴?」
「ううん、知らない人だと思う」
「無線やってんの?」
「うん」
「・・・」

会話が噛み合わず、全く続かない。

《しょうがねぇなぁ。聞きたくねぇけど聞いてやるよ》
「彼氏って何やってんの?」
「○○大学の3回生」

げっ地元の国立じゃねぇか。

「姉ちゃんと接点ないじゃん、どこで知り合ったのよ?」
「○○○(無線のコールサイン)の先輩」
「は?○○○って、あの○○○? 奴の先輩って?」
「○○○くんのバイト先に遊びに行ったとき、彼も一緒にバイトしてたの」

姉貴が○○○のバイト先に遊びに行ったなんて初めて聞いた。
間違いなく俺の強烈な不快さが露骨に顔に出てたと思う。

「ごめんね、隠すつもりはなかったんだけど」
「別に俺の許可必要ないし」
「・・そうだけど・・」

気まずい沈黙が流れる。

「父ちゃんと母ちゃんは知ってんの?」
「言ってない」

《秘密にしてんなら近所でいちゃつくなってのっ!!!》

我慢できない。声が荒ぶる。
「なぁ、姉ちゃんが誰とつき合おうと勝手だけど、秘密にしてんなら近所でいちゃつくなよ」
思わず立ち上がってしまい、勉強机がひっくり返った。

「やっぱり見てたんだ」
「気付いてたよ。ってかその彼は姉ちゃんのこと大事に思ってるんなら、近所であんな事しちゃだめだろ」
「・・・千里クン、ありがとう。心配してくれてるんだね」
「知らねえよ」
「ありがとう」

姉が抱きついてきた。
《ちょっと前まで風呂に一緒に入ってた時は気付かなかったけど、姉貴っていい匂いがするんだな》
思わず思い出した感覚に酷く嫌悪する。

畜生、畜生、畜生、畜生・・・

姉がそっと離れる。
「話が出来てよかった。ありがとう」
俺の頬に軽くキスをして姉は部屋を出ていった。

そのまま俺は本格的な受験モードに突入した。
姉貴とは今まで通りすれ違い生活が続く。
顔をあわせば普通に話が出来るんだけど、時間が全く合わない。
でも姉貴に対するわだかまりは少し消えて、前みたいに話は出来るようになった。

受験の一週間前に、姉貴が部屋に入ってきた。
俺は滑り止めには受かったけど、本命は少し無理をしているからあともう一息ってとこだ。

「おじゃまします」
「長居すんなよ」
「千里クンの方がウチの部屋に居た時間が長い」
「ははっそうだな」
「あのね、マフラー作ってみた。もらってくれる?」
「すごいじゃん、手編みだ。いつのまに?」
「頑張りましたよ?」
「受験に持って行く」
「ありがと」
「そりゃ俺のセリフ」

《よっしゃ、マフラー貰た!》
本当に嬉しかった。人生で初めてマフラーをもらった。
それが姉貴であっても、手編みのマフラーだ。
俄然、勉強に熱が入った。

そして受験日はあっという間に過ぎて、合格発表。
高校は自宅から近いし、直接歩いて見に行くことにした。
発表時間は13時からで、県内の高校は半ドンになっていた。

志望校の掲示板前。

《・・・・あれか?あった!!!》

見事合格。
同級生も結構受かっていて、事務室で書類を受け取り、中学校へ結果報告をしに行った。
中学校の公衆電話から父母の会社へ報告して、自宅へ。
卒業したての中学校なのに少しだけ懐かしく、つい元担任と長話をしてしまった。

だから家に帰ったのは15時くらいだった。
玄関の鍵を開けて、ノブを廻す。

《あれ?鍵締まってる?っていうか、もともと開いてた?》

不審に思い、玄関を入る。

《姉貴の靴がある。そうか、姉貴は半ドンだっけ。》

俺は上機嫌で姉貴を驚かしてやろうと考えた。

そっと足を忍ばして、姉貴の部屋へ。
《音楽が聞こえるからいるな》

”がちゃ”
いきなりドアを開けた。

あれ、誰もいない。
「姉ちゃん?いないの?」

ふとベッドで布団に潜っていた姉貴が顔を出す。
「千里クン、お帰り。どうだった?」
笑い顔で聞いてくるけど、目が赤い。
「受かった。父ちゃん母ちゃんにも連絡した。っていうか、何があったん?」
「・・・良かった・・」
姉がぽろぽろ泣き出した。
うれし泣きもあるみたいだけど、何か雰囲気が違う。
「どうしたの?何があったのよ?」
「そ・・の・マフラーが・・みたら・・泣けて・き・た」
泣きじゃくりながら姉が呟く。

マフラー?
今更ながら気付いた。

《このマフラーって、彼氏にやる予定が狂って俺に廻ってきたんじゃ?》

「姉ちゃん、顔見してみろよ」
布団から出た姉貴が黙ってベッドに腰掛ける。
目が真っ赤だ。

「姉ちゃん、彼氏と何があったの?」
「・・・別れた」
「なんでよ!」
「千里クンには関係ないよ・・」
「なんでよ?姉貴にこんな思いさせる奴は許さん」
「やめて、もうどうにもならないの」
「いいや、ぶっ殺す。奴の住所教えて!!」
「千里クンが行ってもどうにもならないの。」
「畜生っっ。それいつの話よ?」
「・・マフラーを千里クンに渡した日」

はぁ?あの日姉ちゃんは笑いながら渡してくれたぜ?

畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生

姉貴にこんな思いをさせた男に殺意が本気で芽生えた。
と同時に姉貴が今まで以上にいとおしく思えた。
姉貴を思わず抱きしめた。

「千里クン・・・・」

姉貴も腰に手を廻して抱きしめてくる。

わけのわからないこの感情!!
猛烈な欲情が押し寄せてくる。

「姉ちゃんっ」
ベッドに姉貴を押し倒す。
本当に押し倒す感じで。
「きゃっ」
「ごめん」

姉貴の顔がめちゃくちゃ近い。
お互いの吐息を感じられるくらい。

「ううん、大丈夫。ね、千里クン」
「なに?」
「ウチのこと心配してくれてるの?」
「別に心配してねぇよ。ただ姉ちゃんのこと泣かす奴が・・」

そこまで言って俺も泣けてきた。

泪が姉貴の頬に落ちる。
そっと自分の頬を拭って、指先を軽くなめる姉貴。

色っぽいって感情はこう言うことなのか・・・
衝動的に姉貴の唇に俺の唇を重ねる。

初めて人の唇の感触を知った。
暖かい。そして柔らかい。

不意に姉貴の舌が入ってくる。柔らかいけど何とも言えない弾力。
「んっっ・・」
姉貴の声が漏れる。

《やべっ。俺、姉貴にめちゃくちゃ欲情してる》

止まらない。

俺の右手が自然に姉貴の胸にいく。
制服のブラウス越しに感じる姉貴の胸の感触。
一緒に風呂入ってた頃は、くすぐり合いで触ったことはあるけど・・・
あの時とは何か違う、指先から伝わる歓喜の感触。
姉貴は目を閉じてされるがままだ。
俺は姉貴の横に座り直し、ブラウスのボタンを外す。
ブラウスの前がはだけ、タンクトップに浮かんだ形のいい膨らみ。
そっとタンクトップをズリあげる。姉貴は背中を軽く浮かす。
ブラが現れた。薄いピンクのシンプルなブラ。
そっとブラの上から揉んでみる。
「んっっ・・」
姉貴の吐息が漏れた。

柔らかい。改めて思う。
もう我慢出来ない。
姉の背中に手を廻し、ブラを外そうとする。
《ブラってどうやって外すんだ?》
経験が無いからわからない。でも我慢出来ない。

ブラの下から手を入れて捲くし上げようとする。

そのとき、姉貴が小さな声で言った。
「千里クン、ブラ壊れるよ。それに・・・」
姉貴の一言で、少し冷静になった。
「ごめん」
「ううん、謝らないで。千里クンも男の子だねって思った」
なんか姉貴が微笑んでる。
凄くうれしくて、思いっきり抱きしめた。

「千里クン、痛いし冷たい」
「えっ?」
「ボタン」
姉貴が制服のボタンを摘む。
帰宅してそのまま姉貴の部屋に来たから、学生服のままだ。
「あっ、ごめん」
「ねぇ、千里クン」
「なに?」
「今日、千里クンの合格記念日だね」
「そうか、忘れてた。姉貴をおどかそうと思って、玄関からそのままここに来たんだ」
「逆にビックリさせちゃったね、ごめん」
「こっちこそ。大声だしてごめん」
「ほんとだよ、ビックリした・・・。ウチ、泪と鼻水で顔ぐちゃぐちゃだね。」
「ははは」
「・・ねぇ、シャワー・・浴びてきていい?」

《!!それは・・》

「じゃあ一緒に入る」
「馬鹿だなぁ。シャワーだから一緒には入れないよ。風邪ひいちゃう。ウチが先に浴びてくるから、千里クンはその後浴びてきて?」
「わかった」

姉はベッドから起きあがると、はだけたブラウスそのままでシャワーに行った。
俺は姉貴のベッドに腰掛けて姉貴の部屋を見渡す。
《久しぶりだな、姉貴の部屋。最近姉貴の部屋から声が聞こえなかったから、無線やってないんだろうな。いやいやそうじゃなくて、俺、姉貴とするのかな?姉貴は初めてじゃないよな。っていうか俺たち姉弟じゃん》

俺の頭は混乱していた。

そのうち、姉貴がシャワーから帰ってきた。
姉貴はリーバイスの626とトレーナーに着替えている。

《ブラしてるなぁ。うまくはずせるかな?》

「千里クン、シャワー浴びてきて・・」

さっきより少しさっぱりした顔で、姉貴が促す。

《俺にシャワー浴びろって事はそういうことだよな》

「うん、すぐ浴びてくる」
俺もシャワー浴びに行った。

いきり立つ息子をなだめながら、シャワーを浴びた。
俺も部屋着に着替えて姉貴の部屋へ戻った。
「ただいま」
「お帰り。」

姉貴が布団から顔だけ出している。

「寝袋かョ。ってかアザラシか、それ」
「うるさいなぁ。黙って布団に入るの」
「布団っすか」
「布団っすよ」

俺が帰宅したときと違って、姉貴は上機嫌になってる。
うれしかった。

そして布団に入ろうと掛け布団を捲ろうとしたら、
「だめ、捲らず入って」
「なんなのよ、アザラシはさっきから」
最低限だけ掛け布団を捲って中に入る。

納得した。アザラシと布団を捲ってはいけない訳が。

姉貴は全裸だった。

「ねぇ、千里クンも脱いで」
「うん」

姉に促され俺も服を脱ぐ。

「こうやって一緒の布団にはいるの久しぶりだね」
「そうだなあ。小学校の頃に爺ちゃんの家に行った時が最後かな」
「そうだね。なんか懐かしいね」
「姉ちゃんの裸を見るのも久しぶりだ」
「ばーか。スケベ」

姉貴が不意にわき腹をくすぐる。

「うわっ。ちょ、まじでっっっw」
「やっぱりここくすぐったいんだ」
「やめれっっw、死ぬって」

《どうも姉貴のペースで進むなぁ》

「ねえ千里クン」
「なに?」
「千里クンしたことある?」
「ねぇよ。中3だよ、俺。姉ちゃんはどうなのよ?」
「ウチはいいの。」
「あっさりかわしやがって。姉ちゃん、これだめだろ」

姉貴の耳にそっと息を吹きかける。

「わっっっ!それ反則っっっw」

お互いくすぐり始めた。
姉貴に彼が出来るまではけっこうベタついてた。でもそのときと今は違う。
姉貴の布団に入って二人とも全裸だ。

姉の体温を直接自分の肌で感じてもいる。
人の体温の暖かさを実感した。

ベッドの上でお互い向き合ってくすぐり合いをしている中、不意に姉の胸に手がいった。

姉の動きが止まる。

「いい?」
「・・・・うん」
か細い声で返事をする姉。

さっきと違って直接さわっている。
柔らかな、でも弾力のある膨らみを揉む。

多分、俺は世界で一番幸せだ。
姉は黙って目を閉じている。
手のひらの真ん中あたりに硬くなった感触を感じる。
そっとそれを摘む。
「・・ん・・」
姉の吐息が漏れる。

「だめ?」
「ううん。・・・千里クンのしたいようにしてくれていいよ」

黙って俺は右手で乳首を摘みながら左手で胸全体の感触を楽しんでいた。

「姉ちゃん、俺、姉ちゃんの裸が見たい」
「いままでさんざん見てるよ。それに今、見る以上のことしてるじゃん」
「そうなんだけど・・・」
「わがまま者め。布団ちょっとだけ跳ねる?」
「うん。ありがと」

布団を上半身だけ跳ねる。まだ3月だし寒いかと思ったけど、ヒーターが効いてるのか寒くはない。

まだ時間は4時。少し暗くなったかなというくらい。

カーテンの明かりに照らされる姉貴はすごく綺麗だ。

「あんまりろじろ見るな」
姉貴が仰向けになって手で胸を隠す。

《すげえかわいいよ、姉貴》

そのまま姉貴に覆い被さり、唇を重ねる。
今度は俺から姉貴に舌を入れる。
姉貴が舌を絡ましてくる。
お互いの粘膜がからみつく、何とも言えない快感。
姉が俺を抱きしめてくる。

かわいい、姉貴。

お互い強く抱きしめあう。姉貴の胸が俺の胸板にあたる。
胸の先端の突起も。

「ねぇ姉ちゃん」
「なに?」
「胸、吸ってもいい?」
「・・さっきいったじゃん、千里クンの好きにしていいって。何も聞かないで。」
「ありがとう」
「ぁ、待って。吸うなら赤ちゃんみたいに」
「何それ?」
「いいから」

姉が俺の背中に廻していた手をほどく。

そっと乳首を口に含む。

ピクッ
姉の体がのけぞる。
「あ・・ん・・っ」
乳首を舌で転がす。
その動きにあわせて姉の吐息が漏れる。

「あ・っ・・赤ちゃんっ・・て・・そんな・・吸い・方・する・・のか・な」
「ごめん、わかんない」
「あはは、そうだね」
不意に姉が笑う。

俺は憮然としてしまう。
「なんで赤ちゃん?」
「赤ちゃんいいなって思った。ほしい訳じゃないけどウチの赤ちゃん、千里クン見たいになるのかなって思ったんだ」
「そっか・・・痛かった?」
「ううん。そんなこと無い」
「よかった。俺、よくわからないから」
「だから、気にしなくていいの。今日は千里クンの好きにしていいんだよ?」
「ありがとう。じゃ、また吸っていい?」
「聞かないの」

また姉の乳首を口に含み、舌で転がしたり吸いつて持ち上げ、ぱっと離す。
そのたびに姉貴の声がでる。
反対の乳首を指で摘む。

もう姉は溜息や吐息でなくて、喘ぎ声だった。

不意に姉の手が伸びて俺の愚息にふれる。
「さわってもいい?」
「いいけど・・・照れるな・・」
「ウチも一緒だよ」

姉貴の手が触れるか触れないか位で触ってくる。

「ね、千里クンの見せて」
「姉ちゃんこそ今までさんざん見ただろ」
「そんな目で見てないもん。それに・・」
「何よ?」
「お風呂で見たときは、こんなになってないもん」

《彼氏のさんざん見てるんだろうが》
思ったけど口には出せない。

俺がうじうじしてると、
「じゃあ横になって。さっきみたいに」
いわれるがまま、姉貴と向かい合って横になる。

そっと姉貴の手が触れてくる。
「固い・・」
俺「*[p;@l:i=}」
今度は俺が声にならない。
初めて人に触られた。自分の手とは全く違う快感。

「やっぱり見たい」
「・・・」

俺は返事なんてまともに出来ない。

「もぅ」
そう言って布団をはねのけた。

「ちょ、姉ちゃん、何すんのよ」
「グダグダ言わないの」
姉貴が強引に俺を仰向けにさせる。

《冗談抜きで恥ずかしい!!》

お構いなしに姉貴が四つん這いになってまた触ってくる。
今度はさっきと違い、強弱をつけて触る。

ちょっと前まではあまり気にしなかったけど、俺は仮性包茎。
人に無理に剥かれると少し痛む。

「イテ」
「ごめん、痛かった?
「ちょっとだけ。先の方は直接触られると痛いんだ」
「ごめん、ウチ下手だね」
「そんなこと無いよ・・・・・・気持ちいい」
後半は恥ずかしくて、小さい声になった。

「痛かったら言って。千里クンいっぱいウチを気持ちよくしてくれたから、ウチも千里クン気持ち良くする。
「強くしなければ大丈夫だとおも・・う」

もう俺は姉貴のされるがままになっていた。

姉貴は四つん這いで俺のを触っている。

上半身を起こし、姉の胸に手を伸ばす。
乳首を軽く摘む。

「あんっ」
でも姉貴は手の動きを止めない。
俺も姉貴の乳首を摘む。
姉は喘ぎ声を出しながら、四つん這いで俺のを触っている。

「ねぇ、キスするね?」
「うん」
俺も姉とキスがしたかった。体を起こそうとすると
「だめ、動かないで」
「?」
「ここにキスするの。だめ?」
「!!えっ!!」
思わず大声がでる。
「いや、そんな。ってかあの@;-urf0+^L」
何を言ってるかわからない俺。
「だって千里クン、気持ちよさそうなんだもん」

《彼氏にもこんなことしてたのかよ》
不意に頭をよぎる。

「でも・・」
姉貴は何も気付いてない。握ったままこっちを見てる。
俺のもビンビンになったままだ。

姉貴が無言でくわえた。
「キスじゃ無いじゃん`*?、<@?[/@*」
もう混乱しまくりの俺。

”はむっ”
エロマンガの様な擬音をたてて姉貴がくわえる。

強烈に生温かい淫靡な感触。
くわえたまま舌が這いずり回る感触。
今までに感じたことのない、快感。
そして上下に動き出す。
「姉ちゃんっ」
思わず叫ぶ。
姉貴は動きをやめない。
時間の感覚がわからないくらい、姉貴はそれを続けた。

突然
「ぷはっ」

「どうしたの」
「息が苦しい」
姉貴は息を止めてやってたらしい。

「気持ちいいの?」
少し息を切らしながら姉が聞いてきた」
「・・うん」
「千里クン、『姉ちゃん』って叫んでたもんね」
「言うなよ、恥ずかしい」

姉貴は得意げな顔をしている。

「男の人のってこんな感じなんだね」
「えっ?姉ちゃん、彼氏は・・」
《やべっ。言わないでおこうと思ったのに》

「そりゃバージンではないけど・・・。でも間近で見たり口でしたこと無いもん」
そういって、俺の先に軽くキスをする。

「わっ」
姉貴が大声を出した。
「今、ピクって凄く大きくなった」

「俺、凄く気持ち良かった。俺も姉ちゃんを気持ち良くしたい」
「ううん、いいの。千里クンに気持ち良くなって欲しいから」
「でも・・・」
「どうしたのよ、いつもの強気は」
「なんか姉ちゃんが強気だな、今日は」

ベッドの上に座って姉貴を見る。
姉貴もベッドの上に座っている。

「なに?」
「いや・・・姉ちゃん、こんなに綺麗だっけか?」
「何言ってるのよ、改まって。ふふ、今頃ウチの魅力に気付いたか?」
姉貴が得意げに胸をはるから、ふくよかなバストが強調される。

そして、姉貴の唇。

さっきまで俺のをくわえてた唇。
怪しく濡れて凄く綺麗だ。

多分当時の俺なら、姉貴以外の女性が俺のをくわえた唇に嫌悪感を感じていたかもしれない。
でも、姉貴のは違った。凄く綺麗で、愛おしい。

思わず、姉貴を抱きしめた。

姉貴の唇に唇を重ねる。
どっちからでもなく、お互いの舌が絡み合う。
淫靡な音が気分を盛り立てる。

この舌と唇が俺を気持ち良くしてくれたんだ・・

座って抱き合いながらキスを続ける。
姉貴の手がまた伸びてくる。
「ウチももっと千里クンを気持ち良くしたい」
「俺も・・」

俺は逡巡していた。
姉を抱きたい。最後までしたい。
でも・・

姉弟だし、恋愛感情なのか欲情なのか自分でもわからない。
でも・・・

「姉ちゃん、俺最後までしたい」
《俺、言っちゃったよ》

「聞かないの。千里クンのしたいようにすればいいんだよ」

姉貴・・・

「有り難う。でも俺初めてだから・・」
「関係ないよ。しよ?横になろうよ」
姉貴に言われるまま、二人で横になる。

「跨がってくれる?」
姉貴がそっと足を開き、そこに跨がる。
姉貴が俺のに添えるように手を伸ばす。

「そのまま・・挿れて・・」
蚊の泣くように姉貴が言った。

腰を屈めて下半身に力を入れる。
先にヌルっとした感触がする。

「んっ・・そこ・・」
姉貴の声が上擦る。さっきまでとは明らかに違う、鼻にかかるような声。

ぐっと俺を突き出す。

生ぬるい、粘液のトンネルのような中に入っていく感触。
姉貴の声がさらに上擦る。
さらに力を入れ、奥まで押し込む。

さっきくわえられたときとは違う、生々しい感触。
言いようのない快感。

そして・・・多少の痛み。包茎だからか、強く剥けると痛みが走る。
姉貴に締め付けられるたび、快感と痛みが交錯した。

けれども姉貴は違った。

「ああんっっっ」
姉貴の声がひときわ大きくなる。

もう夢中で突いた。
自分の痛みより姉貴を気持ちよくしたい。
俺の動きにあわせて姉貴も声がでる。

激しく切なく甘く

姉貴・・こんな表情するんだ。

姉貴の口にそっとキスをする。

激しく動かず、ゆっくりと突く。

「っっぅん・・あんっ・・っんん」
くぐもった押し殺した声。

姉貴の声が激しく、唇を重ねていられない。
そっと唇を離すと、また喘ぎ声が激しくなる。

体を密着させて首筋にキスをする。
「ひあぁっっぁぁ」
一瞬、さらに声が大きくなる。

姉貴・・・姉貴・・

くそっ姉貴かわいい。愛しくてたまらない。

「ねぇ千里クンっ・・あんっ・・気持・ち良くなって・る?ああんっっ」
姉貴が息も絶え絶えに聞いてくる。

「うん。姉ちゃんの中、ぬるぬるして熱い」
本当に気持ち良かった。こんな快感、気持ちいいの一言では表せない。

「ねっ、・・ちょっ・と・・待って・・そこの・・カレンダー・・とって」

下半身を密着させたまま、手を伸ばして卓上カレンダーをとり、姉貴に渡す。

息を切らしながら先月のカレンダーを見てる。
何か納得したのか、カレンダーをベッドサイドに放り投げる。
姉貴が微笑む。

「ねぇキスして」

姉貴に覆い被さり、キスをする。
舌の感触が俺の気持ちを盛り上げる。

姉の上に被さって挿れたまま、
「今日、なにか予定があるの?」
姉「あはははっ。そっか、カレンダー見たから?」
姉貴は微笑む。

くそっ。なんだよ、馬鹿にして。

思いっきり激しく突く。
激しくつく分、俺の痛みも増加する。
でも・・それ以上に姉貴のあえぎ声に興奮していく俺がいる。

「ああああああんっっっ」
姉貴の微笑がいきなり変わる。
さっきの切ない表情だ。

「ねぇ、さっきのカレンダー何?」
激しく突いたまま、姉貴に問う。
「んんnあんんnっっ、お  願い、言う から  っ。これ じゃ言え ない よ」

すっと激しい動きをやめる。
「何なの?」
姉貴は息をきらしたまま言う。
「あのね、今日は大丈夫なの」
「何が?」
「だから・・・今日は大丈夫な日」

!!そう言うことか。俺は大馬鹿だ。俺のことばかり考えてた。
学校の性教育で習ったのに。

「姉ちゃん、ごめん」
「謝らないの、安全日だから。本当に千里クンの好きにしていいんだよ」
姉貴が少し息を切らしながら話した。

「姉ちゃん、ありがとう」
姉貴に抱きつく。
「かわいい奴め」
姉貴が耳元とでささやく。

「ほかのかっこでもやってみよ?」
「うん、でも俺大丈夫かな?」
「まだ気にしてるの?ウチもこのカッコ以外ではしたこと無いもん。二人とも初めての事しよ?」
「うわぁ姉ちゃんノリノリ」
「ばーか、じゃ止める?」
姉貴が意地悪く笑う。

「いや、ごめん」
「じゃ、ウチと変わって」

姉に言われて、姉から抜く。
「あんっ」
姉貴の喘ぎ声が本当に愛おしい。

「じゃ、千里クン、横になって」
「どうするの?」
「千里クンがいっぱい動いて気持ち良くしてくれたから、ウチが動くよ?」

俺は黙って横になる。

「冷てっ」
シーツがビチャビチャだ。
「シーツ、凄いことになってる」
「恥ずかしいなぁ。言わないでよ」

冷たいと思いつつ、仰向けになる。
「これでいいの?」
「うん」
そう言って、姉貴は俺のを掴んでくる。
「さっきより固い」
そういって先にまたキスをする。
「わ、またピクって固くなった」
「・・・姉ちゃん、焦らしてる?」
「ごめん、だってこれかわいいんだもん。ピクってなるし」
「かわいいってなんなんだよ」
「ふふふっ。じゃ次じゃウチが上になって動くね」
そう言って姉貴は俺のを握ったまま、跨がってきた。

またさっきと同じ感触。
粘膜と体液を直接混ぜ合わす快感。
姉の中は、相変わらず熱い。

俺がゆっくりと姉の中に沈んでいく。

「んっっ」

また姉貴の喘ぎ声が漏れる。
俺の上でゆっくりと腰を振る。

最初は姉貴の動きはゆっくりだった。

膝立ちになり、ゆっくり上下する。
それにあわせて揺れる乳房。

すごく・・・綺麗だ。
手を伸ばして柔らかい乳房を揉む。

姉貴の喘ぎ声が少し上擦る。

乳首を摘む。
「はぁんっ」
ひときわ甲高い声で、姉貴が叫ぶ。
と同時に俺が激しく締め付けられる。

「姉ちゃん・・すごい・・気持ちいい」
「ん・ウチも・・ん・・ねぇ俺・くん」
「何?」
「んっ・・あのね・・お願い・・」
姉貴が切なさそうに、言う。
「お願・・い、胸・吸って・・・」
「うん」

上半身を起こして、身を屈め姉貴の乳首を吸う。

「ああんっっっ」
姉貴が抱きついてくる。そしてまた更に締め付けてくる。

「んっっ あのね、アンッ 千里クン ハァン まだイかない?」
「もうちょっと・・」
俺は快感と同時に痛みが続いている。

「っあのね、ウチ、んっ変な感じ」

姉貴の動きが滅茶苦茶早くなる。
俺にしがみついたまま、激しく動く姉貴。
抱きついてるから顔は見えないけど、多分さっきの表情してるんだろうな・・
そして姉貴の喘ぎ声がひときわ大きくなる。

「あのねっあのねっ」
繰り返す。
「んんっっはぁんっ」
姉貴が俺を強く締め付ける。痙攣してるみたいに、ビクビクって。

姉貴が急にぐったりする。息も絶え絶えだ。

荒い息づかい。
「ねぇ、わたし多分イっちゃった。ごめんね。ウチが千里クンをいっぱい気持ち良くしてあげたかったのに」
「そっか、姉ちゃんイって俺もうれしい。でも、もう終わりなの?」
口では言ってみたものの、これで終わりなら悲しい。

「ううん、大丈夫。でもウチが下になっていい?」
「うん。姉ちゃん・・・かわいいよ」
「千里クンもね」

そう言って姉貴が頬にキスをしてきた。
そのまま姉貴が横になる。

「冷たいw」
「俺もびっしょりだよ」
「もう・・恥ずかしいなあ」

姉貴の上に被さりキスをする。
そっと姉貴の胸を揉む。柔らかい。
「んんんっ。焦らさないで」
「あ、いや、胸が綺麗だなって思って」
「ありがと。でも早く。催促させないで」

姉貴の目が潤んでいる。

姉貴にそっと口づける。
そのままゆっくり挿れる。
さっきは姉貴が手を添えてくれたけど、今度は自分で挿れられた。

「んんっ 凄く気持ちいい」
「俺も。姉ちゃん凄くかわいいし綺麗だ」

さっきとは違い、ゆっくり動く。
姉貴の息が収まってなかったし、激しく動くと痛みより快感が勝ってしまいそうだ。
さっきのペースで動いたら、俺の限界があっという間にくる。

本当に至福の時間だった。
でも・・・

♪ピンポーン

玄関のチャイムが鳴る。
姉貴と顔を見合わす。
誰だろう?

”大江さーん”って声がすると同時に玄関が開く音がする。

《ヤベっ玄関の鍵開けっ放し》
不意に思い出す。
《となりのオバサンだよ。ちょ、勝手にあがることは無いだろうけど、勝手に玄関開けるなっ》

俺は気が気じゃない。その上さらにもう一人の声がする。
どうやら近所のオバサン二人が俺の合否を気にしてて、聞きに来たらしい。
しかもウチの玄関先で話をしている。

《大きなお世話っての。ってか人んちの玄関先でなにやってるんだ、早く帰れ。どうせ母ちゃんが帰るまで2時間くらいある。そこで待つ気かよ》

小声で姉貴に聞く。
「俺、出てこようか?」
「ううん、いいの。ね、続けよ?」
「でも声が・・・」
「激しくしなければ大丈夫、我慢するから」
「うん・・・」

俺はゆっくり動く。
激しさはないけど、抜ける寸前まで抜いて、ゆっくり奥まで挿れる。
ゆっくり動くと痛さが半減して、感覚が鋭くなる気がする。

うねる様に包み込んでくる、姉貴。

一気に絶頂が来た。
「姉ちゃんっ!!!」

奥まで突く途中でイってしまった。
少し情けない気分になる。

「・・イった?」
「・・・うん」
姉貴は気づいてないみたいだ。

そっと姉貴から抜く。
「んっっ」
姉貴が軽く声を出した。

姉貴にかぶさったまま、話をする。
「これがウチからのお祝い。これで千里クンは大人になったのかな?」
「なんだよ、それ」
「ははは・・。良くある話じゃん。オバチャンたちまだいるのかな?」
「声は聞こえないけど・・・見てこようか?」
「キスしたら行ってもいいよ?」
「うん」

姉と軽く唇を重ねる。
そそくさと服を着替えるのを、ベッドに横たわった姉貴が俺を見守る。

「じゃ、見てくるわ」
「うん」

2階の姉貴の部屋を出て階段を降りる。
階段を降り切って玄関を見ると、玄関ドアが半開きだ。
人の気配はない。

《なんじゃこりゃ!!!ババア、勝手に開けて開けっ放しで帰ったのかよ≫

あわてて玄関を閉め、鍵をかけた。

亀頭の痛さが気になり、トイレへ。
ぬるぬるしている。
まだ、事が済んだあとにティッシュで拭いて服を着るなんて考えつかないから、そのまま服を着ていた。

そっとトイレットペーパーで拭く。
《痛ぇ》
赤くなっている。

《セックスってこんなに痛いのか?気持ちいいけど痛いのか?
いつから痛くなくなるんだ?初めてだからか?俺はバージンの女の子か?》
とりあえず気持ち悪くない程度に拭いて、トイレをでた。

《のどが渇いたな》

台所に行き、ポカリを2本取り出す。
缶の冷たさが心地いい。

姉貴の部屋に戻ると、もう服を着ている。少し残念な気分。

「ん」
「ありがとう。ウチものど渇いてたんだよ」
一気に飲みほして姉貴が部屋を出る。
トイレを済ました後、倉庫に行ったみたいだ。何やってんだろ?

姉貴のベッドに腰掛けてぼーっと考えた。
《これって禁断のなんとかってやつだよな。俺たちどうなるんだろ。父ちゃんや母ちゃんが知ったら、ぶっ殺されるんだろうな》
悶々としてきたとき、姉貴が帰ってきた。

手には布団乾燥機を持っている。

「ねぇ・・・・・この部屋・・・匂うかな?」
「何が?」
「だから・・・・帰ってくるとき匂った?」
「ん?そういえばイカ臭い?」
「それは千里クンの部屋だよ?布団乾燥機かけようと思うんだけど、窓を開けて換気した方がいいよね?」

《そうか、確かに匂うかも知れない。ってか姉貴は何で気づくんだよ》
また少し悔しい気持ちになった。姉貴にはそういう経験があるということだ。

「布団が気持ち悪いんだ。これじゃ夜寝られないよ。シーツ換えて乾燥機かけるから、千里クンの部屋で待ってて」
「ん」

姉貴の部屋を出て、廊下の反対の俺の部屋へ。
ベッドの上に学生服が放り投げてある。シャワー浴びる前にあわて脱いだから、そのままだ。
学生服をハンガーに通し、ハンガーフックに掛ける。
《俺、クラスで一番早く経験したんじゃねえかな?これが彼女だったら自慢しまくりなのにな。
姉貴はどうだったんだろ?何人と経験したのかな?俺が初めてじゃないし。奴とは当然やってるよな》

ラジカセのスイッチを入れた。BOSTONのAMANDAが流れてくる。
後輩に卒業式の日に手紙と一緒にもらった。ラブレターではなかったが。
歌詞を頭で訳していたら、目が滲んできた。
姉貴に対する感情に大きく戸惑っていた。

また悶々としていたら、ドアを姉貴がノックしてきた。
「いい?」
「どうぞ」
「窓全開にして、乾燥機かけてきた。」
「そう・・」

姉貴が俺の勉強机に座る。

しばらく何も話さず、けだるい沈黙が続く。

ふと姉貴が机の上のリグに手を伸ばし、スイッチを入れる。呼び出し専用の周波数に合わせた。
スイッチを入れるのは久しぶりだ。
スピーカーから知らない連中達の声がする。知った声は・・・・無い。

「懐かしいね」
「うん」
「楽しかったね」
「うん」
「みんな元気かな」
「・・・・・」

姉貴がスタンドマイクのスイッチを入れる。
姉「フレンド各局、こちらJ○○○○○」

応答がない。
もう1回繰り返す。

知らない声しかしない。

ダイヤルを回し、周波数を変える。
いつもみんながいた周波数へ。

今日は公立高校の生徒はほとんどが半ドンだし、いつもだったら誰かがくだらない話をしていただろう。
みんないなくなったのは姉貴のせいだと思うけど、それは口に出さない。
無音が続く。誰もいない。

「静かだね・・」
一言いってスイッチを切る。

少し気まずい沈黙が続く。

姉貴が不意に口を開く。
「ねぇ千里クン、今日の事誰にも言わないよね?」
「うん。言わないというより言えない」
「良かった。だって男の子ってああいう事、自慢したがるもん」
「うん。そうだね」

女の子はどうなの?と言いかけてやめる。奴の事に触れることになるかも知れないし・・・・。

「私たち弟姉だよね」
「だよ?」
「ずーーーっと弟姉だよね?」
「死ぬまでな」

姉貴は何が言いたいんだ?

「第2ボタン」
「なに」
姉貴が制服を指さす。
「制服の第2ボタン、付いたままなんだ」
「え、ああ。卒業式で誰も欲しいって言ってこなかった」

嘘だ。
本当は卒業式の前の日、式の予行演習が終わった後に友達に理科室へ呼び出された。
行ってみるとクラスメートが二人。
二人揃って俺に告白してきた。真っ赤な顔で。
二人は親友のはずだ。
恨みっこ無しだから、どっちかに卒業式終了後に第2ボタンが欲しいという。
けど、丁重に断った。
恨みっこ無しなんてあり得ないし、そもそも俺は二人に惚れてる訳じゃない。
うれしくはあったけど、何か違う。

姉貴は無言で何も答えない。
《姉貴は卒業式に欲しいって誰かに言ったのかな》

「高校は女の子の方が多いんだよね」
「うん。といっても4:6位かな?」
「部活やるの?」
「どうかな?体育系はめんどくさいし、文科系もなぁ。まだ決めてない」
「そっか・・・」

姉貴は何が言いたいんだ?高校入って俺の周囲に女の子が多い事にやきもち焼いているのか?

「彼女できるといいね」

《!!!!!!》
胸を貫く激しい痛み。

やきもちを焼かれることへの期待とは反対の言葉が姉貴の口から出た事にショックを覚えた。

「どうかな・・・友達は今でもいるけど・・・・・どうかな」
「そうだね、高校入って楽しければいいよね。千里クンは高校卒業したらどうするつもりなの?」
「大学進学を考えてるけど・・・。姉ちゃんはどうするの?」
「ウチは就職だよ」
「だよな・・・」

姉貴は就職。社会人。大人になるってことなんだろうな。

不意に電話のベルが鳴る。

「ウチ、取ってくる」

姉貴が電話を取りに部屋をでて、階下に降りて行った。

一人ベッドに腰掛けてまた、思いを巡らせる。
「姉ちゃん・・」
呟く。

恋愛感情?姉弟愛?同情?欲情?劣情?性欲?
自身に問いかける、姉貴に対する想い。
たぶん、恋愛感情

いつから?
昔から?
夏に車で抱き合っていた姉貴を見かけたとき?
マフラーをくれたとき?
ベッドで目を腫らしていたのを見たとき?
そして・・・さっき姉貴を抱いたとき?

わからない。
姉貴を一人の女性として見たことはあったのかな?

不意にドアがノックされる。
「ねっ聞いて。お母さんが○○○で夕食しようって。お父さんも来るからみんなで。
18時30分に店の前に居てって。お祝いだぁ」

○○○は近所のステーキ屋。おいしいけど高くて、そうそう行ける店でじゃない。
店までバスだと5分、歩いたら30分位かかる。

「そっか。美味しそうだね。どうやって行く?」
「歩いて。おなか減らしていこ?」
「そうだね、あと1時間位したら出るか」
「うん、そうしよう。ご馳走だよ」

それからはベッドに腰かけて、いろんな話をした。
今朝の新聞記事、学校のこと、無線のこと、バイトのこと、将来の夢。
でも、奴のこととさっきのことは話に出なかった。
意識してお互いに避けている。

「そろそろ出よっか」
「うん」

二人揃って家を出る。
「久しぶりだね」
「何が?」
「こうやって二人で歩くの」
「そうだな」

「?♪??♪」
姉貴が鼻歌混じりに歩く。
「機嫌いいな」
「そうかな?」

「♪??♪?」
鼻歌が続く。
「それ誰の曲だっけ?」
「DulanDulanだよ?」
「あ、そのカセット持ってたろ?」
「今度ダビングして?そしたら返すよ」
「??♪??♪?」

やっぱり上機嫌だ。

すっかり暗くなった国道沿いを姉貴と二人で歩いていく。

「ね、手を繋ご?」
「いや、ツレとかに見られたらはずかしいよ」
「もう暗いから見えないよ。知ってる人がいたら手を離せばいいの!」
「・・・」
「もう?」
姉貴が強引に手を繋いできた。

久しぶりだな、姉貴と手を繋ぐの。
最後に繋いだのはいつだっけ?思い出せない。

店に着いた。
外から店内を見ても両親は見あたらない。
「いないね」
「うん。そこで待っていよう」
花壇を指さし、二人並んで座る。

《映画とかだったら、姉貴にハンカチ敷いてどうぞとか言うのかな?》
くだらないことを考える。

ふっと姉貴が手を握ってくる。
「いいよね」
俺は無言で頷く。

店に面した国道は、大した渋滞もなくいろんな車が走っていく。
風が出てきて、少し寒くなった。
「姉ちゃん、寒くない?」
「ちょっとだけ寒いかな?」

姉の手をほどき、上着のジャケットを脱ぐ。
そっと姉貴にかける。
「ありがと。千里クン、寒くない?」
「うん」
強がってみせる。ハンカチ敷けなかったし、少しだけカッコつけた。
また、姉貴が手を握ってきた。
二人とも黙ったまま、国道の車列を眺めている。

国道の車が一台、ウインカーを付けて店の駐車場に向かってくる。
「来たよ」
そう言って姉貴は手を離した。
姉貴の手があった俺の手に、少し冷気を感じる。

食事は結構淡々と進んだ。
上機嫌な親父。親父は無理だと思っていたらしいから。

俺が行く予定の高校の偏差値はかなり高い。
A判定が出たのは最後の模試だったし、親父は本当に無理だと思ってたみたいだから、かなり上機嫌だ
オフクロも同じように喜んでいる。ただ、帰りの運転手を仰せつかって飲めない事に不満を感じているみたいだが。

そして・・・
姉貴もいつも通りだ。何も変わらない。明るく両親と話をしている。
独り塞いでいるのは俺だ。
親父やオフクロが不思議がっているが、偏差値の高い高校へ進学することへの不安ととらえているみたいだ。
俺は姉貴にどう接していいかわからなくて、つい無言になってしまう。
でもステーキは旨かった。ミディアムとか言うの、初めて食べた。

食事を終えて店を出る。いつの間にか土砂降りになっていた。
駐車場の車まで4人で走って行き、急いで乗り込む。

オフクロがこわごわ運転する。いわく雨の夜は苦手だと。

少しだけスリルを感じて自宅に着いた。
もう9時だ。なんとなく家族全員リビングに集って雑談をする。
親父やオフクロが缶ビールを開けて二人が高校のときの話が始まった。親父のくだらない武勇伝とか・・・。

俺はあまりピンとこない。学校始まってないからクラスの雰囲気とか分からないし。
黙ってみなの話を聞いていた。

風呂が沸いて、俺から入浴することになった。
我が家は順番特に決まってないし、親父とオフクロはまだ飲んでる。

俺はそそくさと服を脱ぎ、風呂につかる。

《お湯がしみるなあ》
まだ赤い。でも今日はよくがんばったな、息子よ。
いつか痛くない日が来るといいな。
取り留めないことを考えているうちにのぼせそうになるので、体を洗い風呂を出た。

まだ3人はリビングでわいわいやっている。

姉貴は・・・。
《姉貴と二人でいたい》
でも3人の中から姉貴だけ呼び出すと、両親に怪しまれる気がした。
ちょっと前までよくあることだったと思うけど、今日は両親の目が気になる。

「疲れたし、寝るわ。お休み」
「お休み」
3人の声を背中で聞きながらリビングを出た。

自室に帰って勉強机に座る。椅子の高さが少し低く感じる。背が伸びたのかな?
雨が降っているせいか、今日はいつもより寒い。
トランクスとTシャツだけだと本当に寒い。
パジャマを着ればいいのだろうけど、この格好で年間通している。

椅子を立ち、ストーブのダイヤルを回す。レバーを引くと、ゆっくり火がまわり灯油のにおいが漂ってくる。

また勉強机に向かう。
スイッチとメインダイヤルに指跡のついた、埃にまみれたリグに手を伸ばし、スイッチを入れる。

あ、誰かいる。
「・・・・」「☆☆☆☆・・」「△△△・・」
スピーカーから聞こえるコールサインは知らない人だった。
机に頬杖をついて、しばらく聞き入る。タヌキウオッチ。

くだらない話をしている。
サザンの曲の歌詞とかおニャン子は誰がいいとか。

工藤静香?国生さゆり?河合その子?
馬鹿かお前ら。

《渡辺満里奈に決まってるだろうが》
独り毒づく。
彼女のポニーテールは世界で5本の指に入ることを知らないのか?

ま、姉貴のポニーテールは世界で一番だがな。
くだらない事を考えていた。

つまんねえや。寝る。

リグのスイッチと照明を消し、ストーブを消して布団に入った。
「姉ちゃん・・・・」
つぶやいて目を閉じる。
あまりにもいろんなことがあって、抜く元気も無い。
風邪で発熱しているとき以外は毎日の就寝儀式だったのに。
今日あったことを思い出しながら、いつの間にか深く眠っていた。

どんどんどん
「?」
どんどんどん

ノックというよりドアをたたきつける音。

「誰だよ、やかましいっ」
俺の寝起きの悪さは天下一品だ。不機嫌に答える

「ごめん、ノックしても起きてくれないから。千里クン、入っていい?」
《姉貴?》

「いいよ」
「あの?・・・寝てるところを起こしてごめんね」

姉貴が申し訳なさそうに入ってくる。
《姉貴が来た》
俺の不機嫌さは一瞬にして消えた。

部屋の照明をつけた。
「どうしたのよ?」
「今日さ、部屋の換気してたじゃない?」
「うん」
「窓閉めてなかった↓」
「!!!!マジでっ!!」
いっきに噴き出した。

「何だよ、それ。じゃ布団びしゃびしゃ?」
「うん。あそこで寝ると間違いなく風邪引く」
「納戸から布団出してくる?」
「ううん・・・・・」

少しまごつく姉貴。姉貴を見てると気持ちが和む。姉貴は切実なんだろうが。

「もうお父さんもお母さんも寝てるし、音立てて起こすのも悪いから・・・」

《歯切れが悪いなあ。何が言いたいんだ?》

「一緒に寝よ?」

《!!!!!!!!!》

「それって・・・」
「ごめん、勘違いしたら悪いから言うね。一緒に寝るだけ」
《やっぱり》

「ね、手を繋いで寝よ?」
「生殺しだよ、それ」
「ごめん・・・。納戸の布団出してくる」

《ちょっ、出て行くなよ。手を繋ぐだけでもいいから》

「わーったよ。いい。もう手を繋ぐだけ。後はなんにもしないから」
「ありがとう」
姉貴の満面の笑み。

《畜生、かわいい》

「じゃお風呂入ってくるから。先に寝ててもいいよ」
「寝ない」
「うん、ありがとう。じゃ入ってくるね」
パタパタと姉が出て行く。

《足音立てるなよ。両親が起きたらどうすんだよ》

ま、姉のやかましいノックで起きてこなかったから大丈夫だろう。

少しどきどきしながら、耳を澄ます。

どうやら起きてこないみたいだ。ほっとする。

さて、今何時だ?ベッドサイドの目覚ましを見る。
10時30分。まだそんな時間。
疲れてすぐに深い眠りに入ったことを実感する。
枕元においてあった漫画を手にして時間をつぶす。

11時少し前になった頃、姉貴がリビングのクッションを抱えて戻ってきた。

「お待たせ?」
「お待たせすぎなんだよ」
「女の子は時間がかかるの。千里クンなんか5分で上がってくることあるじゃん」
「カラスだから」
「ねずみ年だよ?」
「分けわかんねぇ?」

姉貴との何気ない会話で癒される。
寝るまでのなんとも言えない、不安と不満が混じった気持ち悪さはもう感じない。
でも姉貴を抱けない・・・。不満を顔に出したら多分姉貴は部屋を出て行く。
それはいやだ。

姉貴は俺の椅子に座ってドライヤーで髪を乾かし始めた。
姉「?♪??♪???♪もちょっと待ってね?♪??♪???♪」

《卑怯だろ、それ。わざとか?》
姉貴の髪を乾かす仕草から目を離せない。
俺は抱きしめたい衝動を抑えるのに必死だ。

姉貴がドライヤーのスイッチを切った。
急に部屋が静かになる。

姉貴がさっきと変わって少ししんみりした顔になった。
「ね、千里クン。手を繋いで寝るだけだよ。お祝いはステーキ食べた時まで、ね」
「・・・・・」
「ウチと千里クンは弟姉なの」
《分かってるよ、そんなこと》
だんだんいらいらして来た。
「もう寝よう。姉ちゃん、明日学校だろ?」
「うん、学校。今日はいっぱい疲れたから起きられるかなぁ」

俺は無言で布団に入り、ベッドの壁側をあけた。
姉貴は無言で俺をまたぎ、布団にもぐりこむ。

あ、照明消してない。

ベッドを起き出し、壁際の照明スイッチに手を伸ばす。
ベッドに目をやると姉貴と目が合う。

「消すよ」
「うん。でも豆電球つけて寝ない?」
「・・・・いいよ」

姉貴も何か感じるところがあるんだろう。

黙って布団に入る。

シングルサイズのベッドに二人寝ると狭い。
二人の肩がぴったりあたり、そのまま手を繋ぐ。

「千里クン?」
「ん?」
「眠い?」
「目が冴えたな」
「ごめんね。眠くなるまでお話しよっか?」
「いいよ・・・」

どうせまた、弟姉がどうとか言い出すんだ。
少しブルーな気持ちになる。

「横向いて」

黙って寝返りをうち、姉貴と向かい合う。

「顔見えなきゃね」
《だから豆電球か・・》

姉貴が話を続ける。
「千里クンは女の子好きになったことある?」
「うん。ある」
今がそうだ。即答する。

「あのね、女の子はね、いつでも男の子を受け入れられないの。
今日は大大丈夫だったけど、無理をしちゃだめだよ」
「わかってる。学校で習った」

すこしの沈黙

「近親相姦って知ってるよね」
「・・・うん」
「今日の千里クン、うれしかった。見直した。姉じゃなかったら本当に好きになってた」
《なんだよ、好きじゃないよって言うのかよ、口に出さなくてもいいじゃないか》

むっとした声で思わず、
「俺のこと、好きじゃないの?」
「ううん、そんなこと無い。ドラマとか映画言われるセリフだけど、世界中のみんなが千里クンの敵になってもは絶対見方。
大好き、本当に。でも弟としてなの」
「・・・・・」
「私の部屋の『日出処の天子』読んだことある?」
「うん」
「蝦夷と刀自古がやっちゃったところあるよね?覚えてるかな、そこの部分」
「覚えてる」
「昔から決まってるんだよ。子供ができても、かわいそうな子供ができるかも知れない」
「うん」

俺の涙が頬をつたう。
姉貴はそっと手を伸ばし、それをぬぐう。

「ウチね、夢があるんだ」
「どんな?」

「お母さんになるの」
「うん」
「きっとね、男の子が生まれる」
「決まってるの?」
「決まってる。そしてね、千里クンにそっくりな子供なの」

《何だよ、それ。俺、何も言えないじゃないか》

「・・ うん、分かった。でも俺の気持ちは本当の気持ちだよ」
「分かってる」

お互い、次の言葉を探すけれども見つからない。

「寝よっか。このまま豆電球つけてていい?」
「いいよ」
「お休み」
「・・・・うん」

向かい合って手を繋ぎ、二人とも目を閉じた。

でも・・・。寝られない。

そっと姉貴の乳房に手を伸ばす。
「服の上からなら・・・触ってもいいよ。でも手を乗せるだけにしてね」
「ありがとう」』

軽く胸を揉んでみる。

姉貴はベッドの反対側を向いてしまった。

ふぅ。
俺は軽くため息をつく。生殺しだ、これは。
さっきまで全く元気の無かった息子が元気いっぱいだ。

そのままトイレにいって抜く。

部屋に戻ると、姉貴は壁をむいたまま寝ている。
触ると起きるんだろう。
俺は姉貴に背を向けて横になった。

朝起きると、もう姉貴の姿は無かった。

一人起きだして台所へ行くと、オフクロが仕事に行く準備をしていた。
俺は入学式まで何も予定は無い。入学準備とかで高校に行く日はあるが、それは1日だけだ。
オフクロが仕事に出ると俺は一人だけになる。
午前中はだらだらテレビを見て過ごし、昼からツレの家に遊びに行く事にする。

昼食後はツレの家でスーパーマリオ2三昧だ。
その時は夢中になって、昨日の事なんてすっかり忘れていた。
馬鹿笑いしながらゲームをして、火照った体を冷やしながら薄暗くなった道を歩く。

日が暮れて風が吹いてきた。

だんだん昨日のことを思い出してくる。
初恋、初体験、そして・・・・失恋
一瞬で始り、あっという間に終わった。

「ただいま」

もうオフクロが夕食の準備をしている。
まだ俺とオフクロしか家にいない。

リビングでテレビをつけてもニュースしかやっていないし、
教育テレビを見るような年でもない。

「晩飯何時くらいになる?」
オフクロが不機嫌な声で、19時半くらいになる。姉貴が帰って来てすぐに食事になると言う。
あと1時間か・・・。

受験生のころは受験勉強に追われていたから、それなりに忙しかった。
最後の入試が終わってからの、この時間はいつも手持無沙汰だ。

何気なく時計の秒針を眺める。
いつもどおりに動いているはずの秒針が、いつもより時間をかけて進んでいく。

《姉貴を迎えに行こう》
姉貴に会いたい。一秒でも早く。

「コンビニ行ってくる」
そう言って家を出た。

小走りにバス停へ急ぐ。まだ姉貴の乗ったバスが着く時間ではないのに。
国道沿いにあるそのバス停は、誰もいなかった。
《その方がいい》

ベンチに腰掛け、流れていく車を眺めている。
昨日、姉貴と歩いたこの道。手も繋いだ。

「姉ちゃん」
ふと口に出る。
あわてて周りを見回す。
誰もいない。

《子供のころは良かったな》
何も考えずに遊んでいた。
裏山の小川にダムを作ったこと、夜更かししてカブトムシを探しに行ったこと、夏休みの海水浴・・・

この気持ちに気づくまでは楽しい思い出だった。
今は辛い思い出でもある。

目を閉じて思いに耽る。
辛いけど・・・辛いんだけど・・・・。

パシューッ
エアブレーキの音がした。
バスが着いたんだ。

姉貴がタラップを降りてきた。
「お帰り」
「ただいま。どうしたの?千里クン」
「迎えに来た」
「子供の出歩く時間じゃないよ」
「うるせぇ」

《でも俺は姉貴に大人にしてもらった》
姉貴はそんなことは考えもしないのだろう。

二人並んで歩く。

「姉ちゃん、カバン持つ」
姉貴のスポーツバックを奪う様に取り上げる。
「ありがと」

無言が続く。
姉貴はなぜ俺が待っていたのか聞かない。
《聞きようもないか》

姉を見てみる。
サラサラの肩までのセミロング。
風で髪がなびく。

「姉ちゃん、ポニーテールにはしないの?」
「どうかなぁ。めんどくさいしね。どうして?」
「ポニーテールが好きだから」
「そうだったんだ。じゃ、おニャン子だったら誰が好き?」
「渡辺満里奈」
「高井麻巳子じゃなくて?」
「うん。でも好みの芸能人はちがうなぁ」
「だれ?」
「仙道敦子」
「マニアックだなぁ。アイドルじゃなくて女優じゃない?」
「いいの」

会話が途切れる。

もっと姉貴と話をしたいんだけど、話が続かない。緊張している。

「姉ちゃん」
「ん?」
やっちまった。思わず口に出てしまった。

「ごめん、なんでもない」
「ね、そこの公園寄って帰ろうよ?」
「そうだね、久しぶりだ」

子供のころはよく来ていた。
ブランコ、缶けり、砂遊び、鬼ごっこ

「あれ座ろ」
姉貴がブランコに向かう。

「もう低いな。ちっちゃい時は足が届かなかったのに」
「ほんとだぁ」

無言で静かにこぎ始め

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