忌むべき日常行事_3

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忌むべき日常行事_3
午後十時四十四分。永田家に十三人の山賊が襲来した。
 お実と虎男以外の住人たちは寝ていたところを叩き起こされ、全員が居間に集められた。当主の永田巌夫妻。その息子の虎男夫妻。虎男の子供たちは四人。枝美の下はすべて男の子だ。そして、お実を含めた使用人が三人……。
 その十二人を十三人の山賊たちが取り囲んでいた。炭坑夫然とした格好の山賊たちは畳に座るなり、壁に寄りかかるなりしてくつろいでいる。各人相当疲労がたまっているようたが、みな一様に鋭い眼光をたたえていた。
 集められた住人たちは両手両脚を縛られ、猿轡を噛まされている。罰が悪いのはお実と虎男だが、この状況下で、なぜふたりが外にいたのかを詮索する者はいないだろう。もっとも、子供たち以外は承知のことだったが……。
 怯えきった住人たちの前に山賊の頭目らしき中年男が進み出た。動物に例えるならば飢狼の形容がふさわしい容貌をしている。男は手にした小銃で肩をトントンと叩き、しわがれた声で切り出した。
「最初に言っておくが抵抗すれば殺す。死にたくなければ抵抗しないことだ」
 男はそう言うと、住人たちをゆっくり見渡した。自由を奪われた住人たちは引きつった顔で男を凝視している。男はそこに服従の意思表示を見たのか、ひとつ頷くとおもむろに話を続けた。
「おれの名は紫電。見てのとおりおれたちは山賊だ。これまで宮城を根城としていたんだが、犬どもがうるさくなってきたのでこちらへ移ってきた。この家を選んだのは今後ここを根城とするためだ」
 素っ気ない言い方だったが、そこには驚愕すべき内容が含まれていた。おそらく、この事態を正確に認識できたのは当主の巌とその息子の虎男くらいだろう。ふたりが他の住人たちより一段高い恐怖心で顔を歪めていることからもそれは窺える。
 その理由はこうだ。さかのぼればきりがないが、近年では明治維新以降、主に政治的な理由により東北地方は後進の地に甘んじてきた。つまり中央政府は東北をある種の植民地とみなしているのだ。
 よって、中央と地方を結ぶ縦の交通網は整備されても、日本海と太平洋を結ぶ横の交通網はおざなりにされていた。連携の芽を摘まれ、分断された地域は対立するしかなく、結果、植民地経済から永遠に脱却できない。
 貧困が慢性化すると地域から活力が萎え、ゆえに治安も悪くなる。ところが、肝心の警察は共産主義者を刈り出すのに手一杯で、追いはぎの類までは手が回らないのが実情なのだ。
 つまり、この地には山賊が跋扈する素地は十分過ぎるほど整っていたのである。
 では、その山賊が永田家を根城にするのはなにゆえか? それにも根拠がある。山賊を武力集団とみなすならば一種の軍隊と言って差し支えないだろう。そして、軍隊に必須なのはなにをおいても兵站である。
 山賊が年がら年中山野を駆け回ってるとしたら大間違いだ。獲物がいつも掛かるわけはなく、食糧などの物資が欠乏することの方がはるかに多い。だからこそ根城を定めておく必要が生じるのだ。
 もちろん、根城の選定には最新の注意と吟味が伴う。大抵の場合は地縁的な緩衝地帯が選ばれるわけだが、果たして永田家に白羽の矢が立ってしまったのだ。そのことは折りにつれ触れることとなるが、端的に言ってしまえば永田家は多くの敵を持ちすぎていたのである。
 山賊たちに付け入る隙を与えてしまったことを一番よく知っているのが巌と虎男だっただけに、ふたりはひどく狼狽していたのだ。
 紫電ががふたりの手下を呼び寄せた。痩身の男が左近、巨躯の若者が右近で、それぞれ左組、右組と名付けられた五人の手下たちを統率している。字義のごとく、頭目である紫電の右腕と左腕だ。
 紫電は小銃を指揮棒代わりに指示を飛ばした。
「左組はこいつらを奥座敷に幽閉したのち、周辺の警戒に当たれ。電話線は生かしておいて、かかってきた電話はすべておれに回すんだ。右組は明日に備えて仮眠を取れ。起床は四時。以上だ」
 十二人の手下たちが一斉に動き出すと、紫電は次のようにしめくくった。
「お愉しみは明日に取っておこう。ふたつあれば上出来だと思っていたザーメン袋が三つもあったからな。焦る必要はない」
 紫電のその言葉に、ズキンと股間を疼かせてしまったお実は慌ててうつむいた。女の中で一番の上玉が他ならぬお実だったのだ。
         *
 その晩、奥座敷に幽閉された住人たちは山賊のひとりに見張られ、恐怖でまんじりもできぬ一夜を明かすことになった。
 特に怯えていたのが若奥様の豊子だ。豊子は子を四人産んで今年で三十六歳になる。けっこうな年増だが、沿岸部の素封家に生まれた毛並みの良さと、遠くは京美人の血を引く生来の美貌もあって、爛熟した色香を自認していたからだ。
 一方、まだ男を知らぬ十七歳の枝美は性に執着する男の怖さも知らず、貞操を奪われるかもしれないとの漠とした不安しか抱いていなかった。だが、山賊たちがこの娘をただで済ますわけがない。お実より一段低いが、やはりそこは良家の子女。野卑た男たちを駆り立てるには十分過ぎる清楚な色香をたたえていたのだ。
 早朝、右近が五人の右組を引き連れて奥座敷にやってきた。一間を超える巨躯の右近に住人たちがおののく中、彼はじろりと室内をねめ回し、舌が絡まった不明瞭な声で手下たちに指示を出した。
「お、女たちを、つ、連れ出せ。ば、婆あもだ」
 住人たちに恐慌が走った。当主たる永田巌が立ち上がり、塞がれた口でなにやら抗議を述べたが、すぐに張り倒されてしまった。巌は当主の責任を果たせぬまま、息子と三人の男孫、使用人の老人とともに部屋に隅に転がされてしまったのだった。
 その様子を目の当たりにした女たちは震え上がっている。荒くれた手下たちに引き立てられても、恐怖で身が縮こまったのか、暴れることもなく奥座敷から連れ出されてしまうのだった。
 居間では紫電が待ち構えていた。女たちは豊子、枝美、お実、そして使用人のお里婆さんの順に彼の前に座らされた。女たちはただ震えるのみだ。背後には巨躯の右近率いる右組が立ちはだかっている。逃げ場はどこにもなかった。
 眠たそうな目をして壁に寄りかかっていた紫電は、五人の女たちの顔をゆっくり見渡した。
「永田巌の妻・稲、虎男の妻・豊子、その娘・枝美、使用人がお実とお里婆さん。以上で間違いないな?」
 紫電に名を確かめられ、さるぐつわをくわえたままの女たちは誰ともなく頷いた。
「よし。それじゃあ、おまえらに仕事を与える。稲とお里婆さんは飯の支度。豊子と枝美は徹夜した左組の慰労。お実はここに残れ」
 ついに命運を告げられ、女たちが硬直した。一晩中、怖れおののいていた陵辱がいま始まろうとしているのだ。中でも母娘ふたりで六人もの山賊を相手にしなければならない、豊子と枝美の受けた衝撃は相当なものだった。
 豊子と枝美が呆然としている間にも、右組の連中は老婆ふたりの縛めを解き、台所へと追い立てていった。お実も驚いていたが、豊子たちとは別種の感情で心を震わせている。
(ここに残れということは、紫電と名乗るこの男の相手をするということだろうか? わたしは頭専用の女……?)
 それは特別待遇に他ならず、お実は意を決して紫電の目を正視した。眠たげな目をしきりに瞬いていた紫電がお里と目が合うやニヤリと笑った。笑い顔までもが飢狼じみていて、お実は慌てて目を伏せた。
「右近。左組と交代がてら、女たちを連れて行ってやれ。午前中は家から出るなと伝えておくんだぞ。あ、それから、左近をここに呼んでくれ」
「しょ、承知しました」
 右近は唸るように返事をすると手下どもに目配せし、硬直したままの豊子と枝美を引き連れて屋敷の外に出ていった。
 紫電とふたりっきりになってしまったお実はただうつむいている。怯えはあったが複雑な心境に戸惑ってもいたのだ。
 ここ十年、旦那と若旦那に弄ばれ続けたこの身体だ。陵辱されるとしても、豊子や枝美のように心底怯える必要はない。ただ、手下どもに投げ与えられるのは下女の自分だと思っていたばかりに、降って湧いたこの待遇をどう受け入れたものかと混乱していたのだ。
 正直、うれしかった。あの美しい若奥様や、かわいらしいお嬢様を差し置いてこの男に選ばれたのだから……。
 不意に紫電が立ち上がった。お実のさるぐつわを解くと彼女を抱え、また壁を背にして腰を下ろした。お実は両手両足を縛られたまま、あぐらの上で横抱きにされている。
「……お実。故郷はどこだ?」
 お実はうつむいたまま答えた。
「……岩手の宮古です」
「ああ、あの漁村か。どうりでな……」
「……?」
「おまえの顔にはどこか異国の風情がある」
「……!」
 お実はわずかに顔を上げたが、すぐに伏せてしまった。
「白子というそうだな」
「……は、はい」
 お実の頬が羞恥に染まった。紫電はそんなお実の反応を笑い飛ばすかのように言った。
「その昔から、ロシアの船乗りが漂着しているとは聞いていたが、なるほど、噂どおりの美しさだ」
「え?」
 お実は驚いて紫電を見上げた。
「美しいと言ったんだ。昨夜は驚いたぞ。お愉しみのところを覗かせてもらったが、おまえの身体があんまり素晴らしかったんで、女狐に騙されたと勘繰ったぐらいだ」
 お実は頬を真っ赤に染めて顔を伏せた。今度は羞恥ではなく、うれしさのあまりの赤面だった。幼少の頃、白子ゆえにいじめられた経験を持つお実は、紫電の言葉に救われた気がしたのだ。例えそれが身体目当ての旦那や若旦那と同質の賛美だったとしても、嬉しいことには変わりない。
 音もなく、左組の長・左近が居間に入ってきた。
「お呼びですか、お頭」
 紫電より一回り若いこの男は、ひどく痩せているために優男の風情がある。
「警戒ごくろうだったな」
「いえ」
「すまんが、外回りに一ヶ所追加するところができた。元々の郵便取扱所長の家だ。没落した庄屋で名は戸川。親父が死んで長男が後を継いでいる」
 紫電は小さな紙片を左近に手渡した。
「いまは永田虎男が所長をやっているが、元はと言えばこの戸川家が初代の郵便取扱所を引き受けたんだそうだ。ところが戸川家の先代は金策に詰まってしまって、やむなく永田巌一代限りの約束で役職を譲ったんだな……」
「ははあ、これは因縁が渦巻いてますね?」
 左近がニタリと笑った。
「そうだ。永田巌は戸川家の先代が死ぬや約束を反古にし、息子の虎男に継がせちまったと言うわけだ」
「分かりました。回る順番は村議会議長の次でよろしいですね?」
「ああ、頼む」
「それでは」
 左近が踵を返して居間を出てゆくと、紫電はお実を抱え直し、眠たげにしていた瞼を閉じた。
「おれはいまから寝る。おまえはここにいろ」
「あ、あの、お布団を……」
「……いい。座ったままが一番落ち着ける。すまんが手足は縛ったままにしておくぞ……。寝首を刈られたくないからな……」
 紫電はその言葉を最後に、早くも寝入ってしまった。右手でお実を抱いたまま、左手は床に置かれた小銃を握っている。
 寝るときでさえも警戒を解かぬこの男に、お実はふと哀切を感じてしまった。
(かわいそう。この人、いつも追われているのね……)
 社会のはみ出し者同士の共感とまではいかないが、お実はどこか紫電に通ずるものを感じ取っていた。おそらくそれは、流浪の民ゆえの共鳴なのだろう。紫電の臭いに北の大地のそれを重ね合わせ、お実は自然と彼の胸中に顔を埋めるのだった。
 遠くで女たちが悲鳴を上げていたが、それもすぐに途切れてしまい、いつしかお実も深い眠りに落ちていった。


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