理佳の妄想(その1)

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理佳の妄想(その1)

 理佳は今、とある銭湯の前にいた。時間は午前9時を少し回ったところ。店が開くまであと1時間はある。と、そこへ銭湯の主人が自転車で現れた。いつも通り店の前に自転車を止め、郵便受けから郵便物と一緒にカギを取り出す。大きなガラス扉のカギを開け、中へと入っていった。入ってすぐの左右の壁際に下駄箱があり、下駄箱の前に置いたスノコを通じて左側に男湯、右側に女湯への入り口がある。どこにでもある昔ながらの銭湯だ。入ると脱衣場になっており、番台があって入浴料を支払うのだろう。
 男湯側の扉から明かりが漏れている。主人は男湯側の脱衣所へ入っていったのだろう。いつも営業時間の5分前に来る3人の初老の男性のために、先に男湯から準備するのだ。そして営業時間を10分ほど過ぎた頃に2組の老夫婦が現れる。最寄り駅の繁華街側とは反対側の、住宅街が控えている少し落ち着いた場所のこの古い小さな銭湯には、それほど多くの客が訪れることは無い。午前中はせいぜい10人程度だろう。この1ヶ月間、理佳は念入りにリサーチしてきたのだ。
 理佳は大きく深呼吸して心を落ち着かせた。やるならこのタイミングしかないことはわかっている。わかっているが、それを行動に移すには勇気がいる。なにせこれからとんでもない恥ずかしい思いをするのだ。普段は恥ずかしがり屋なのに、恥ずかしいところを見られることに興奮してしまう。週末にストレス発散でついオナニーをしてしまうのだが、オカズとして妄想するのはいつも恥ずかしいところを見られるシチュエーションだった。その妄想が次第に大きくなり、行動に移さねばもう、いてもたってもいられなくなってここまで来てしまった。理佳は意を決し、銭湯へと足を踏み入れた。
 脱いだ靴を下駄箱に入れ、照明の灯っている男湯側をそっと覗きこんだ。主人は脱衣所の向こう側にある風呂場でデッキブラシをかけていた。理佳は恐る恐る脱衣所に入った。なにせ男湯である。営業前なので誰も来ないとわかっているが、どうも気が引けてしまう。理佳は本来臆病なのだ。奥へとゆっくり入って行き風呂場の扉を開けた。できればここで主人に気がついて欲しかったのだが、床掃除に集中して気がついてくれなかった。しかたなく掃除中の主人に話しかけた。
「すみません。」
主人は気が付かずデッキブラシをかけ続けている。恥ずかしがり屋の理佳はなかなか大きな声が出せないのだ。何度か声をかけたところでやっと主人が気がついた。
「おおっ! な、なんだあんたは! びっくりさせないでくれないか。」
「すみません。そんなつもりではなかったんです。ただ、お風呂を使わせて欲しくて。」
主人は一瞬だが、何を言ってるのか理解できなかった。開店前の掃除をしている段階で浴場を使わせることは通常できないと誰もがわかることだ。
 怪訝そうな顔で理佳をじっと見つめた。黒のタイトスカートに白のブラウス、A4サイズが入りそうなバッグを抱え、申し訳無さそうな顔をしてかがみながらこちらを見ている。どこかのOLだろうか、あまり怪しい感じはしなかった。
「営業開始は10時だ。それに掃除中だ。見ればわかるだろう。」
そこで理佳は。かねてから用意していた理由を説明していった。
「実は、あの、言いにくいのですが、電車で痴漢に会って。そ、それであの、もう気持ち悪くて、どうしても体を洗い流したくて。シャワーだけでもいいんです。お風呂を使わせて頂けないでしょうか。」
理佳は話しながら主人の様子を観察し、その目が疑いから同情へと変わっていくことを感じ取っていた。
「そういう事情でしたか。まあ、入ってもらっても良いが、見ての通りまだ男湯の方しか湯が張ってないし、床も掃除中だ。それでも良いのかね。」
理佳は予定通りの展開に内心満足しながら顔は申し訳無さそうにして感謝し、風呂場から脱衣所へと戻った。
 まず理佳は位置関係を確認した。番台から伸びる壁際前方に石鹸やシャンプーなどが置かれた陳列棚があり、その先が洗面台になっている。洗面台の横が風呂場への入り口だ。理佳は迷わず洗面台の近くのロッカーを使った。そうすれば理佳が服を脱ぐ様子が主人のいる風呂場からよく見えるからだ。ロッカーは3段で、最上段がちょうどみぞおちあたりになっている。いったんそこで荷物を置いた。裸で立っていれば周囲から胸が丸見えになってしまうだろう。普通は最も使いやすい最上段を使うのだろうが、理佳はあえて最下段を使った。
 ブラウスのボタンを上から外していきながら、これからする恥ずかしいことが頭の中いっぱいになっていく。ドキドキしながらも、何度も妄想の中でシミュレーションしていたためか、どこか落ち着いていた。ブラウスを肩から脱いできれいにたたみロッカーへ入れる。最下段のためかがんで入れなければならない。タイトスカートに包まれたヒップラインがより強調される格好だ。ブラウスをロッカーへ入れながらさり気なく背後の様子をうかがうと、先ほどまで風呂場の中央あたりを掃除していたはずなのに、脱衣所の扉のすぐ近くまで寄って来ていた。理佳が服を脱いでいく様子を見たいという気持ちが丸わかりだ。ここまで露骨に見られるとは思ってなかった理佳は恥ずかしさがこみあげてきた。そうなるように、あえて脱衣所と風呂場の境界に近いロッカーを自分で選んだのに、やはり見られるのは恥ずかしい。また、裸を見られることも恥ずかしいのだが、そのシチュエーションに自ら入り込んでいった事がばれてしまうかもしれないことも恥ずかしかった。タイトスカートのホックを外し、ファスナーを下げてスカートを脱いだ。脱いだスカートも丁寧にたたんでロッカーへ入れる。今度はさすがに膝を曲げた。そうしないとあまりにも露骨に思えたからだ。気が付くと、さっきまで床をこするデッキブラシの音がしていたのに、なぜか今は音がしなくなっている。理佳は強い視線を感じて振り返ると、主人がちょうど風呂場から脱衣所へ入ってくるところだった。いつからかわからないが、そこからじっと見ていたに違いない。理佳が振り返った瞬間に、たった今入って来たかのように装ったのだろう。理佳は見られていることをますます意識した。こめかみあたりが熱くなってきているのを感じながらブラのホックを外した。いよいよ胸を見せねばならない。顔が赤らんでいるのが自分でもわかる。そっとブラを外して左手で胸を隠しながら右手でブラをロッカーへ放り込んだ。次はパンティーだ。両手を使わないと不自然になる。すぐ横に主人がいるのは目の端でとらえていた。理佳は顔を真赤にしながら胸を隠した左手を下へおろした。大きくはないのだが形の良いおっぱいがプルプルと揺れている。あまりに恥ずかしくて体が震えてしまっているのだ。特におっぱいの先端が小刻みに揺れてしまい、理佳の顔はますます赤くなる。主人の方を見ると洗面台の横にあるロッカーからモップを取り出しているところだった。そしてすぐ脱衣所の床掃除を始めた。モップがけのために前かがみになると、視線がちょうど腰あたりに来る。主人は理佳のすぐ横でモップ掃除をしていて、なかなか他の場所へ移動しない。じっとりと絡みつくような視線を感じながら理佳はパンティーの上端に指をかけ、少し躊躇しながらもゆっくりとヒップ側から脱いでいった。パンティーを足から抜き取り、ブラ同様にロッカーの中へ放り
投げた。もうとてもたたんでいるような余裕は無い。主人は1mほど横で目線を理佳の腰辺りに据えながらモップで床掃除をしている。理佳は全身が真っ赤になっていくような錯覚を覚えた。相手はちゃんと服を来ているというのに自分だけ真っ裸になっているのだ。恥ずかしい思いをしたくてこんなことをしているのだが、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
 理佳はタオルを買うため、あらためて主人の方へ向き直ると、腰をかがめてモップがけをしている主人の姿がそこにあった。目線は理佳の股間にあるヘアーに注がれている。その瞬間、秘唇がキュッと収縮し、腰から首筋へ向けてゾクゾクした感覚が通り抜けていった。理佳はこの感覚が好きなのだ。軽いめまいのようなものを感じながら主人に話しかけた。
「あの、タオルを売って欲しいのですが。」
主人は石鹸類の陳列してある棚を指さし、好きなのを選ぶように言った。理佳が陳列棚までいくと、体を洗うタオルは2種類しかなかった。当たり前というか、1種類しかなくても不思議ではないのだが、理佳は前かがみになってタオルを見比べ迷っているふりをした。案の定、主人が背後から近づいてくる。アソコが覗き見るためだ。理佳は前かがみになった姿勢を10秒程続けただろうか、主人が背後に来たことを感じて姿勢を戻した。そう簡単に見せては面白く無い。じらした後でタップリ見てもらいたいのだ。
 生地の薄そうなタオルを選ぶと振り返って主人に手渡した。財布はロッカーに入ったままだ。「あっ、財布。」そう言って主人にいたずらっぽくにこっと笑うと主人もつられてニコッとした。財布を取るためロッカーに戻り、財布を手に主人のところまで戻ってくると主人は鼻の下を伸ばしてニコニコしている。理佳はわざと胸の前に財布を出していくらかたずねた。
「タオルは90円ね。それと入浴料が430円。」
「あ、入浴料! すっかり忘れてました。」
そういって理佳が笑うと主人もまたつられて笑った。笑いながらも主人の目は理佳のおっぱいを見続けていた。理佳は財布から千円札を抜き出し胸の前で主人に差し出した。千円札は胸の双峰の間にある。つい胸を触ってしまいそうな位置でお札を差し出したのだが、主人は触ろうとはしなかった。いや、本当は触りたかったのだろう。お札を掴む主人の手が少し震えていたようだ。主人はいったん番台に上がってお釣りを持ってきた。お釣りを渡す時もやはり手が震えていた。理佳はまた胸の前で手を出して受け取ろうとしていたからだ。主人は客の胸に触ってはならないと気をつけすぎて奥まで手が出せなかったせいで、理佳はお釣りを上手く受け取ることができず床にこぼしてしまった。
「あ、すまんすまん。」「あっごめんなさい。」
二人同時に謝りながら床に落ちたお金を拾うことになった。これは理佳の予定には無かったことだ。


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