直虎と椿姫
遠江井伊家当主、井伊直盛の「娘」は、その名を次郎法師と言った。
直盛には男子が無く、彼はこの次郎法師と、従兄弟の井伊直親を許婚とした。
彼を婿養子として迎えるつもりであったのだ。
ところが、井伊家の家臣小野道高の讒言により、井伊直親の父直満は謀反の疑いをかけられ
今川義元により自害を命ぜられ、直親はこれにより信州へと逃亡した。
しかし2年後、井伊直親は小野道高の死により今川家に復帰した。
だが、ここで大変な事態が発覚する。この井伊直親、信州にいる間に、奥山親朝の娘を
正妻として迎えていたのだ。
次郎法師の身の上は、完全に宙に浮いた。
しかしこの人の身の上はさらに転変する。
永禄3年(1560)5月、桶狭間の戦いにおいて、父直盛が戦死した。
結果、井伊直親が井伊家の家督を継いだのだが、
ところが永禄5年(1562)、今度は小野道好(道高の子)の讒言により、
直親が今川氏真に殺されてしまったのだ。
これにより井伊家は、この次郎法師と、彼女の曽祖父である、井伊直平が支えることになった。
さて、もうひとつ。
同じく遠江に、「椿姫」と呼ばれる女性がいた。遠江曳馬城主、飯尾連竜の妻、
田鶴の方の事である。
彼女は非常に知恵に優れた女性だったそうだ。
永禄6年(1563)、今川氏の命で犬山上攻めに向かっていた井伊直平が、
この曳馬城に立ち寄った。
椿姫は夫に示唆する。「桶狭間以来遠江では、今川の権威が崩れ始めています。
ここで直平がいなくなれば、遠江での飯尾家のライバルである井伊家に残るのは、女である
次郎法師だけ。その勢力は大きく削られ、飯尾家こそが遠江の盟主ともなるでしょう。」
彼女は直平に毒茶を出し、これを殺した。
この事件にさすがの今川氏真も怒り、飯尾連龍を和睦の名目で駿府に呼びだし、
そのまま殺害した。
そして曳馬城も攻め滅ぼそうとしたが、氏真が当時寵愛していた女性が飯尾連龍の姪であり、
この取り成しにより、飯尾家自体は所領を安堵された。しかもその安堵状は、この「椿姫」宛てに
出されたのだ。彼女は正真正銘の女城主となった。
ところで次郎法師である。彼女は曽祖父の謀殺への、徹底的な復讐を唱えたが、
氏真の処置は井伊家の側にも、飯尾家の側にも遺恨を残すものであった。
永禄8年(1565年)次郎法師は「直虎」と名を改め、井伊家の家督を継いだ。
彼女もまた、女城主となったのだ。
井伊家当主となった彼女は徳川家康と結び、家臣小野道好の専横を排除し、
再び井伊家の主権を取り戻した。
その上で徳川家の力を借り、永禄11年(1568年)曽祖父の敵、椿姫のこもる曳馬城を攻め立てた。
城を囲んだ徳川軍は、曳馬城に降伏勧告を出した。
「徳川家に降伏なされ、城を引き渡せば、飯尾家の幼子も寡婦(椿姫)も、
丁重に養育いたすし、その家臣団も皆、召抱え扶持いたしましょう。」
椿姫は、これを拒否し、自ら指揮をして酒井左衛門尉、石川伯耆守と交戦、
一旦は寄せ手を敗走させるほどの武威を見せ付けた。
その時の様子は『緋威の鎧に同じ毛の兜、同じ装いの侍女7,8人と長刀を取って適中に切り込んだ』と有る。
しかし結局は衆寡敵せず、椿姫と曳馬城の者たちは、ことごとく討ち死にした。
さて、こうして遠江の主導権を握った井伊直虎であったが、
南下してきた武田信玄の部将、山県昌景に敗北し、本拠地である井伊谷城を放棄し、
浜松城の家康の元へと逃れた。
そんな彼女は、かつての許婚、井伊直親と奥山親朝の娘の間に生まれた子、虎松を養子として育てていた。
天正3年(1575)、彼女はこの虎松を、家康の元に出仕させる。
そう、後の井伊直政である。
遠江で火花を散らした、二人の女城主の戦いの、お話。
ドラマチックな話だ
悪い話スレでもいけそうではあるが
井伊直政が世に出るまでにはこんな劇的な出来事があったのか
すげー女の戦いだな
次郎法師さんは、小野の専横に「Oh!No!」って怒り狂ったんだろうな。
女の戦い(戦国版)
公開日:
| 元記事サイト:私たちのエッチな体験談
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