わたしのママンは教育ママンだった。
対面を何よりも重視して、たとえ90点をとっても
「なぜ10点分間違えたのか」
を聞いてくるようなママンだった。
私はそんなママンが嫌いで、あんな大人にだけはなりたくないと思っていた。
10歳のとき、わたしはとあることから、プチ登校拒否を試みた。
何もかもが嫌で、学校になんて絶対行くものかと思っていた。
ママンは激怒した。「対面」「成績」と毎日毎日怒ってわたしを怒鳴りつけた。
根競べが一週間くらい続いたのだが、ある日急に、ママンは怒るのをやめた。
部屋にいる私のところに来てただ、
「買い物行くよ」
とだけ言った。
ママンは私を連れて、近所のスーパーで生活用品の買出しをした。
普段学校以外に出歩かない昼間だったから妙な感じがした。
ママンは、もう怒らなかったし、学校についても何も言わなかった。
ただ無言で手をつないで、大根だのにんじんだのを買った。
今思えば、きっとあれはママンなりの精一杯の愛情だったんだと思う。
二日後、私は学校に行った。
少しだけ、照れくさかった。