子供の目から見ても整った顔立ちで、儚げなタイプ。
ただ父親が蒸発しただとか、母親がその子を育てるためにスナックに勤めてるとかのしょーもない事と、その子が人に積極的に話しかけられないタイプだったから、いつも寂しそうに一人でご飯を食べたりしてる姿が印象的だった。
俺の学校は中学なのに制服じゃなくて私服の学校だったんだけど、男から見てもその子の着てる服のレパートリーが少ないように見えたのも、同性から馬鹿にされてた原因の一つだと思う。
俺はその子を避けてるつもりはなかったけど、そもそもそんな女の子じゃなくても気軽に異性に声を掛けられる年代じゃなかったから、可哀想だなって思ってたんだ。
ただある日、ホームルームで家庭訪問の話題になったときに、女子の一人が片親の彼女をからかうような発言をしたから、思わず抗議の意味で立ち上がってそいつを睨んだんだ。
まぁヘタレな俺だから何も発言は出来ずにずっと睨んでるだけだったんだけど、一応その話題はそれで打ち切りになった。
そのときの彼女の嬉しそうな顔は、まだ記憶に残っている。
ただ、その時から彼女が俺に懐き始めた。
それからというもの、移動教室の時に「一緒に教室まで行こう」とか、何かペアを作るような授業の時に「一緒になろう」って声を掛けてくる。
こんな可愛い子が懐いてくれるのは凄い嬉しかったんだけど、男友達は妙に冷やかして来るわ、女連中は影口叩いてるのがありありと分かるわで、妙に気が気でなくなってくる。