都会ではオリンピック特需とかの影響で、老若男女が盛り上がりを見せていた頃、私の住んでいた地域はライフラインは電気だけで、どこの家庭にもテレビすらなく、戦前を引き摺ったままの田園風景だけが財産だった。
私は中学に上がったばかりで、未だ大人の営みどろこかオナニーさえ未経験で、夢精は経験していたが、毛も生えていなかった様に記憶する。
その頃、2歳年上のガキ大将の先輩が居て、地域の中学生の7人しか居なかった男子を全員召集した。
その頃のガキ大将は腕力だけの暴れん坊ではなく、喧嘩も強いが知性的で難しい事を良く知っていて、小さな子供たちまでも面倒見ていた頼もしい存在だった。
その召集に参加した私は『夜這い』なる聞いた事もない単語を耳にした。
2・3年生は顔を耳まで赤らめて詳しい事を教えてはくれなかった。
ただ、その『夜這い』を翌週の金曜日に、隣の地域で夏祭りがあるので、その日の深夜に行うから全員集まる事を命じられた。
その日は私の住む地域でも夏祭りが行われる予定だったので、堂々と夜更かしを許された日でもあった。
隣の地域は歩けば小一時間はかかるが、同じ中学の学区で、中学生同士はみんな友人であった。
帰宅して1人晩酌を始めていた父に『夜這い』の事を告げ、その意味を尋ねた。
父は顔を近づけると酒臭い息で『夜這い』の意味とそのやり方を小声で教えてくれた。
父も若い頃に『夜這い』をかけた経験があったようで、その相手が母だったらしい。
父は大人になろうとしている私の頭を大きな手で撫でてくれたが、暫らくして腕を組んで悩みだしたのだ。