10年ほど前、俺が中三の夏休み、毎年恒例の町自治会の一泊旅行があった。いつもは親父と祖母の二人が
参加するのだが、その年は親父が、7月から半年間海外技術援助で、F国へ派遣されて不在。祖母は老人会の用事で
参加できないと言うので、俺と母親(M子・34)が参加した。大人の中に子供は数人だけ。でも親友のSが親父と
親一人子一人なので毎年参加していた。夜の宴会で大人たちは酒を飲んで騒いでいたが、子供達は食事が済むと
すぐにゲームセンターへ。8時半頃、Sの親父(Y男・42)が「これから皆でカラオケに行くから、ゲームが終わったら
俺達の部屋で一緒に待ってろ」と言いながら、部屋の鍵と有線放送のアダルトが観られるカードを渡した。やはり
ゲームよりアダルトの方が良いに決まっている。早速、Sの部屋に戻ってアダルト動画鑑賞。ワクワクドキドキ
パンツと手のひらを濡らしながら観た。一区切りついたところでSが風呂に誘うので、続きが観たかったのを我慢して
付いて行った。夏の暑さと湯の熱さで、すぐに風呂から上がってしまった。火照る身体を冷すのと興味本位の目的で
部屋とは反対の方向に行ってみると、一般客用の大広間があった。もう営業は終わったのか、電灯は消え防犯灯だけで
薄暗かった。俺とSはその中を奥へと進み、突き当りの障子を開けた。廊下があり、向かいに小さな部屋があるのか
片引きの障子がいくつか並んでいた。その一番左端の部屋から、人が呻くような、すすり泣くような声が聞こえてくる。
俺たちは顔を見合わせて立ち止まった。勇気を奮い立たせて、障子の前に立つと、柱と障子の隙間から光が漏れてくる。
わずかに空いた隙間に目を当てて覗いて見た。なんと、先ほどまで観ていたアダルトと同じ光景が目に飛び込んできた。
部屋の電気は消されていたが、庭の水銀灯の灯が窓のカーテンを透して中が見えていたのだ。まるで影絵を見ている様で
男も女も顔は分からなかった。女が仰向けに寝て膝を立てている。その上に男がうつ伏せに寝て、女の立てた膝の間に
頭を埋めて、何かを吸い込む「ジュルジュル」と音を立てていた。女は男の息子を両手で握り、口に食わえては舐め
口から離すと大きな喘ぐような声を出していた。69の形だ。(当時はこの言葉を知らなかった)しばらくして
男が体の向きを変え、正常位の形になると息子を握って、女の股間に宛がうと一気に挿入した。男の腰は始めはゆっくり
動き、段々速くなり、激しくなった。釣られるように女の声も大きくなっていく。急に男の動きが止まると、女が意味の
分からない大きな声を上げ、男の背中を両腕でしっかり抱きしめていた。その後、繋がったまま長いキスをしていた。
「すごく感じちゃった。気持ち良かったよ。パパのこと大好き」
「俺もすごく感じちゃった。2回目も最初と同じほど出ちゃった感じだけど、赤ちゃん出来ていないかなあ」
「大丈夫よ。今日は安全日のはずだから。ねえ、もう一回いいでしょう」
「Mちゃん、すきだなあ! よし、じゃあ、もう一回! ここエアコン切れて、暑すぎるよ。Mちゃんも俺も
汗でべとべとだ。ねえ、風呂に入ってから部屋に行こう。もしかして、もう2回いけるかも」
「わっ、本当!! うれしいなあ。じゃあ、決まり。風呂に行こう」
男と女が浴衣を着始めたので、俺とSは急いでその場を離れ、二人の顔を確めようと風呂の入口の前に立った。
丁度、自治会長の奥さんが風呂から出てきて、俺達を見つけ「子供がこんな時間まで起きていてはいけません」と
言って、むりやり部屋まで連れて行かれ、顔を確めることができなかった。その夜、Sの親父が帰ってこないので
アダルトの続きを見ながら、Sの部屋で眠ってしまった。ふと夜中に目が覚め、あの男と女の光景を思い浮かべて
女の声が母親の声に似ていたような気がした。男は誰だろうと考えながら、再び眠ってしまった。
俺も来春には高校受験、二学期が始まると成績の事が気になりだし、あの宿での出来事どころでなくなったいた。
それでも、町内の中三全員が集まるクリスマスには出席した。みんな、高校進学の事には一切触れず、たわいない話に
盛り上がって、憂さを晴らしていた。そんな話の中に、Sパパ(Sの親父の愛称)がラブホテルから、女と一緒に車で
出て来るのを、誰かが目撃したらしい事が出た。女は下を向いていて誰だか分らなかったらしい。男42歳と言えば男盛り
浮気をして当然と言う者と絶対だめだと言う者で論争になった。結局、結論は出ずうやむやになってしまったが、Sは
恥ずかしそうに小さくなっていた。夜10時もなると女子もいるので、みんな家に帰り始める。Sが俺に新しいDVDが
手に入ったから見て行けと言うので、彼の家に立ち寄った。新しいと言っても、アダルトの内容はほぼ同じ事の繰り返し
それでも最後まで観てしまった。遅くなったので、泊めてもらう事にし、彼のベッドの下に布団を敷いてもらって寝た。
俺にしては、珍しく夜中に小便したくなり、1Fにあるトイレに行った。階段を上がろうとすると、廊下の奥の部屋から
微かに灯が漏れ、人の声がする。俺はそっと部屋の前の立った。なんだか、あの日の宿の光景が思い出していた。
引き戸を指一本分だけ開けて、目を当ててみた。なんと、思い出していた光景そのままだった。その夜は顔もはっきり
見えた。男はSの親父、女は俺の母親だった。女は布団の上で四つん這いになり、男が後ろから女の股間に息子を挿入し
激しく腰を振っていた。女は声にもならない喘ぎ声を上げていた。犬が盛っている様子を連想した。しばらくして男が
女の下腹を思いっきり抱き寄せて動きを止めると、女が大声を上げながら、前のめりに倒れ込んだ。男は今まで自分の
息子が入っていた女の股間に口を当て、「ジュルジュル」と音を立てながら吸い出している。いっぱい口に溜めると
女を引き寄せ、キスしながら中の物を分け与えていた。女は嬉しそうにそれを飲み下し、今度は男の息子をきれいに
舐めると、再びキスをしていた。
「パパの赤ちゃんは私だけの物よ。他の誰にもあげないからね。パパ大好き」
「Mちゃんは俺だけの物。他の誰にも触らせないからな。Mちゃん大好きだよ」
母親の名前はM子だから「Mちゃん」SパパはSを略して「パパ」と呼び合っていたのだ。あの宿での男と女は、
Sの親父と俺の母親だったのだ。あれ以来、時々母親がいない日があったのは、Sパパとラブホテルに行ったのか。
夜、母親の部屋に電気が点いていない日は、此処に来て二人の愛を確め合っていたのだ。
いよいよ、親父が帰ってくる日が近づいてきた。俺は勉強はそっちのけで、母親を見張った。夜はどうしても眠くて
俺の方が先に寝てしまう。何度か失敗して、ある日、とうとう夜中に母親が出掛けるのを見つけ、後を付けた。やはり
Sパパの所だった。母親が着くと、待っていたかのように玄関のドアが開き中に入り、ガラス越しに二人が抱き合って
いる影が映っている。俺はどこに合鍵があるかを知っているので、中の灯が消えると鍵を使って忍び込んだ。前と同じ
廊下の一番奥の部屋に灯が点き、囁きあっている声がする。
「パパ、もうすぐ主人が帰って来るわ。パパと逢えないなんて死ぬより辛い。一緒に死にたい」
「Mちゃん、そんなに悲しまないでくれ。生きている限り、きっと逢える日があるから辛抱して」
「なんでこんなに愛し合っている者が一緒になれないのかしら。嫌で仕方ない者同士が一緒にいることもあるのに」
「この世の中は、思ったようにいかないのが当たり前なのさ。今度生まれ変わったら、Mちゃんと一緒になろうね」
「ええ、きっとパパと一緒になるわ。いっぱいパパの子供を産んで、楽しい家庭を作りたい」
「Mちゃんは若いけど、俺はもう42だからなあ。そんなに体が持つかなあ、すぐに50になっちゃう」
「パパったら、生まれ変わったらのお話よ。もっと若いうちに一緒になればいいのよ」
俺はそっと部屋の前に近づいて、前と同じように引き戸の隙間から中を覗いた。ベッドに裸のSパパが座り、その膝に
母親が向かい合わせに、跨るように腰を下ろしゆっくり振っていた。腕はSパパの首に回し、見つめ合って話していた。
「Mちゃん、もうずーとコンドーム使ってないけど、赤ちゃん出来ていないかな」
「大丈夫よ、もし出来てたら主人に離婚してもらうわ。パパと一緒になれるよね」
「もちろん、Mちゃんと一緒になりたい。でも二人とも子供がいるし、住む所も考えないと」
「私はパパの行く所、どこでも付いて行くよ。あっ、パパ感じちゃいそう、一緒に感じて」
「Mちゃん、もう感じちゃうの、先に感じて、俺も感じるから」
そう言いながら二人は正常位の形になり、Sパパは激しく腰を振り出した。その時、階段から足音が聞こえ始め、俺は
慌てて向かいのリビングに飛び込み、何かに躓いて大きな音を立ててしまった。部屋の電気は消え、話し声も物音も
しなくなった。Sがトイレから出て来ると、Sパパが部屋から出てきて、代わってトイレに入った。俺はその間に
玄関から外に出た。暗い夜道を、とぼとぼ歩いた帰った記憶はいつまでも消えない。
1月中頃、親父は帰国した。家庭の中は今まで通りだ。親父と母親が喧嘩した様子もない。祖母も変わった様子はない
俺も試験勉強にラストスパートをかけた。無事、第一志望の高校に合格し、親父も母親も喜んでくれた。しかし、親友の
Sが、Sパパの仕事の都合で急に転居することなった。俺がその事を聞いて帰った翌日、母親は目を赤くはらしていた。
あれから10年、俺も社会人になり役所に勤めている。祖母が脳梗塞で倒れ、あっけなく亡くなってしまった。先日
49日の法事があり、その次の日家族三人で遺品の整理をした。わずかだったので、ついでに家の中も大掃除をすると
たくさんのガラクタが出てきた。一応、要る物と不要の物とを分けていると、一通の茶色の封筒が出てきた。表に親父の
字で「M子の件」と書かれていた。中には一枚の念書が入っていて、宛名はSパパのY男になっていた。そこには
1、Y男は、今後一切M子に逢うことを禁じる。
2、Y男は、できる限り早く、町内から転居する事。
3、Y男、M子共に文書、あらゆる通信を使って連絡することを禁じる。
4、Y男、M子は写真、映像等は焼却、消去する事。
他にも何項目かあった。発行人は親父の名前になっていた。親父はSパパと自分の嫁の事を知っていたのだ。しかし
慰謝料の件はどこにも書かれていなかったところをみると、親父は寛大に許したのだろう。
俺はその念書を、不要の物の方へと分けてやった。