実家からバス停までの間、毎年初夏になると甘い香りに包まれる場所があった。
香りの正体はアカシアという木が咲かせる白い可憐な花だった。
枝には棘があって、近づくのもはばかられるけれど、その香りに魅せられた自分は、その木が好きだった。
学生時代、アカシアの下を通る時に深呼吸するのが常だった。
時は流れて自分は30を過ぎた。
暖かい家族が居て、満ち足りている自分だったのに再び恋をしてしまった。
しばらく行ってなかった、(元)行き着けのスナックに彼女は居た。
初めて出会った瞬間、頭の中が痺れるような感覚。
“チョッキュウ ドマンナカ” これが“ビビビ”ってヤツだろうか?
ポカリのCMに出ていた娘にソックリな彼女。
青い空、マリンブルーの海、真っ白な砂浜をバックに空中ブランコをしているCMではなかったか?
笑った顔がホントによく似ていて、その笑顔に思わず吊り込まれてしまう。
その笑顔が見たくて、いつも以上に饒舌になっていた自分。
“ジブンハ カノジョニ キラワレテハ イナイ” という気持ちも少しずつ芽生えてくる。
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