母が死んで数年経って、ようやく母が読んでいた大量の本を整理する気になりました。
本を一冊一冊、「要、不要」と仕分けしていくうちに手帳サイズの小さな本が目にとまりました。
それは俺が産まれた年に発行された、女性雑誌の付録で、
「妻として母として」といった感じの本でした。
ページをめくって驚きました。
その本には、夫婦の性生活についてのさまざまが豊富な図版で載せられている「セックスの手引き書」だったのです。
そのページをめくっていくうちに、「母さんは、父さんにこんなふうにフェラチオしたのかな。」「母さんと父さんは、どんな体位で俺や妹や弟を種付けしたんだろ。」と、今まで考えたことのなかった、どちらも世を去った両親のセックスを思いうかべてしまいました。
その本の奥の方に、「注意事項」のひとつとして、
「幼児期の子どもに性行為を見られたり、見せたりしてはならない」
というのがありました。
それには、性行為を見た子どもが、こんなことになると記されていました。
・三歳くらいで、性器いじりを覚え、オナニー癖になる。
・四歳くらいで、枕を股間に挟んで腰を動かし、快感を得るようになる。
・五歳を過ぎると、他人に性器を見せることに快感を覚えるようになり、同性異姓の性器にいたずらする行為に耽ることもある。
…………
それを見て、俺は苦笑してしまいました。
(それじゃ俺、母さんと父さんのセックスを見てしまったのかな。)
俺は物心ついた時には、パンツごしにチンチンをいじっていい気持ちになっていました。
また、クッションを股間に挟んで身体をくねらせ、気持ちよくなってたこともあります。
しかし、母はそんな俺の姿を見ると激怒して、手の甲やお尻から血がにじむほど金属製の定規で叩かれました。
それは俺が小学校高学年になっても続きました。
そのころになると学校の性教育で、「オナニーに害はない。むしろ男子は適度に精液を放出するためにオナニーをするべきだ。」なんて事を聞いていたので、母がなぜ俺を叱るのかよくわかりませんでした。
だから俺は、学校に早めに来て廊下の片隅でオナニーをするなど、策をこらしたりしました。
この本を見てわかりました。
俺にセックスを見られた母が、この本の通りにオナニーをはじめたものだから、このままだと俺が変態になってしまう危機感にかられて「厳しく戒めて止めたい」と思ったんでしょう。
でも、母は知らなかったでしょうが、俺は変態小学生でした。
弟や学校の男子たちには、オナニーを教えました。
妹や学校の女子たちには、ワレメを舐めてあげたのです。
俺の記憶にはない、母と父のセックス。
だけどそれが、今の俺の性的嗜好に大きく関わっているのです。