「和也君、起きないと。遅刻しちゃうわよ」
叔母の奈保子さんの声で目が覚めた。一瞬慌てたが、今日は休校で大学はない。僕は、大学進学のために東京に出てきたが、叔母さんの家に下宿させてもらっている。奈保子さんは僕の母の妹で、昔からよく遊んでもらっていた。
叔母さんの家は東京郊外の一戸建てで、それほど広くはないが庭もあってなかなか良い家だと思う。5年前に旦那さんが仕事中の事故で死んでしまったので、労災や生命保険なんかでかなり余裕のある生活になったと言っていた。
叔母さんの息子の達也君は、イタリアに留学中だ。絵画の修復師を目指しているそうで、そういう関係の学校に通っている。
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