あれは20歳の12月頃だった。
あるイベントの帰りの、18時頃の電車内でのこと。
帰りの電車はすごく空いていて、両端に一人ずつ座っているだけの殺風景な車内だった。
下車駅まで20分。
それまでほとんど乗客はなく、ずっと空いたままの車内だった。
見渡すと女性の乗客がいる。
席の真ん中あたりに座っている。
様子を見ると、俯いて目を閉じていた。
こげ茶のポニーテールで、十分に厚着をした上着と色褪せて灰色がかった黒のジーンズ姿。
疲れている様子で熟睡しているようだった。
この女性の隣にこっそり移動して様子をしばらく見ることにした。
かなり寝込んでいる。