午後六時に始まった小学校の同窓会が二次会に流れ、三次会に付き合ったところまでは憶えている。
でも、その後、どうやって家までたどり着いたのか殆ど憶えていなかった。
それでも酒には強い方なので足取りはしっかりしている。
玄関で鍵を差し込もうとするのだが、何度やっても上手く入らない。
おかしいな、と思いながら別の鍵を差し込むと今度はすんなり入った。
「何だ、こっちの鍵だったの。
」
」
深くは考えず、玄関に転がり込んだ。
男物の靴が目にとまった。
「あら、やだ。
帰ってるわ。
泊まりだって言ってたのに。
」
」
独り言を言いながら靴を脱ぐ。
ハンドバッグをテーブルに置き、次々と洋服を脱ぎ捨てる。
一刻も早くシャワーを浴びて体から酒を抜きたかった。
「何でシャワーがないのよ。
」
」
浴室にあるはずのシャワーがない。
ぶつぶつ言いながら風呂の残り湯を立て続けに浴びた。
頭の芯にしみ通る水の冷たさが気持ちよかった。
「清さん、もう寝ちゃったの。
」
」
浴室から出るとバスタオル一枚巻いた体で隣のドアを開ける。
夫の微かないびきが聞こえて来た。
「帰って来たんなら、起きて待っててくれればいいのに。
」
」
バスタオルを床に落として生まれたままの姿でベッドに潜り込む。
「ただいま。
」
」
夫の体に手を回した。
「よく寝てるわ。
まったく。
」
」
夫の手を取って自分の方に引き寄せる。
結婚して三年。
同窓会であらぬ期待をしていたせいか、今日の頼子は体の疼きを抑えることができない。
勿論、このままでは眠れなかった。
脚の間に引き寄せた夫の手を自分の体に擦り付ける。
それでもその手は動かない。
頼子が焦れたように腰を何度も振った。
暫くして夫の指が確かめるような動きを始めた。
寝ぼけているのだろうか、いつもと動きが違う。
「やだ、何やってるのよ。
」
」
思わず腰をくねらせた。
指先が後ろを探り始めたのである。
そうされたことは一度もない。
夫は勿論、他の誰にも。