帰ってきたらゴトゴトと物音がして、空き部屋だと思ってたからびっくりした。
泥棒なんじゃないかとソワソワしていると、数分後に突然インターフォンが鳴った。
恐る恐る対応してみると、「隣に引っ越してきた水瀬です」っていう女の声。
ドアを開けてみると同じ学校の娘で、互いに「あっ・・・どうも」みたいな。
洗濯洗剤を受け取りながら「今日引っ越してきたの?」と聞いてみた。
すると引っ越すハメになった理由を矢継ぎ早に喋ってきた。
水瀬は近くのアパートに住んでいたらしいが、なんとネズミが出たという。
(こんな都内の住宅街に?)
不思議そうな顔をしていると、ネズミについて軽く教えられた。
黙って聞いていると、喋りたかったのか悲惨なネズミ騒動も喋りまくってきた。
まず水瀬の留守中にネズミが侵入し、大家や不動産屋が駆除しようとすると、他の3つの部屋に次々に侵入したんだって。
ベッドは糞だらけになるし、電化製品のコード類も噛み切られちゃって。
侵入口を塞ぐ工事をすると言われたが、そんな汚い部屋にまた住むのかと喧嘩になり、大家と不動産屋が保証してくれて隣に越して来たという。
女の子が1人で住むにはちょっと・・・というアパートだったから、空き部屋が無くて急遽決まったんだろうなって思った。
部屋自体は内装を綺麗にしてるから問題ないが、防音は皆無に等しいし、周囲には夜になると泥酔者とかフラフラしてるし、上には外人が住んでて五月蠅いしね。
「困った事があったら言ってよ」
そう言っておいたが、ぶっちゃけ水瀬の事はよく知らない。
身長が150cmぐらいで細くて小柄なので、高校生みたいな幼い見た目。
顔は・・・どちらかと言えば可愛くない系。
大人しくて真面目な印象で、エロさの欠片も全く無い印象だった。
基本的に俺は、部屋に戻ってきても静かに過ごしていた。
背後でTVを小さい音でつけ、もっぱらPCをカチャカチャやってるだけ。
週3~4でバイトしてたから、23時過ぎとかに帰ってきてたしさ。
水瀬が引っ越してきて数日後、いつものようにバイトから帰宅すると隣から声が聞こえる。
水瀬がキャハハと笑っているようで、電話してるようだった。
聞こえちゃうよって教えて無かったから仕方が無いけど、あまりにも聞こえ過ぎる。
たぶんこっちの壁にベッドを置いて、そこに居るんだろうと推測される。
前住人は音を気にしてたからあまり聞こえなかったが・・・無防備だったんだろうな。
そうそう、前住人が言うには『奥の大家宅への配慮』でクローゼットが奥にあるんだって。
3階建ての家が建ってるから、そっちに音とか聞こえなくするためとか何とか言ってた。
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