<スペック>
俺:24歳の男、非童貞、チビメガネ、現無職だけど来月からリーマン。
黒:20歳の女、濃い目のカフェオレ、身長180cmあるかないかで学生らしい。
数週間前、俺が暇に飽かしてしょぼい神社巡りをしてると、汚ねぇ神社で黒人女性を見つけた。
観光客どころか地元住民すら滅多に来ないような神社なので、俺は大層びっくらこいた。
黒さんは拝殿の前に突っ立ってぼけーっとしてた。
その後ろで、俺は半分壊れてるプラ製ベンチに座ってぼけーっとしてた。
本当は俺も参拝したかったんだけど、でけえ上に黒い人に若干びびってたので、黒さんがどっか行くまで時間を潰してたんだ。
んでしばらく経ったら、黒さんが振り向いて境内の参道みたいなところを鳥居に向かって歩いてきた。
こっちガン見してた。
黒人っつったら中学ん時ALTで来たマッチョなアメリカ人しか知らん俺は、細身で長身の黒人女性に心底びびった。
人種差別とか言われるかも知れんけど、とにかく怖かった。
不審な人を見つけたらこちらから挨拶してやれとは、小学生ん時から言われてきた。
その教えに則って、俺は元気よく黒さんに変な英語で挨拶した。
「Hi!Today is veryhot isn’t you?」
・・・とか言ったけど、正しい英語なのかは知らん。
とにかく挨拶したんだ。
そしたら黒さん、しばらくぼんやり俺を見つめた後、急に泣き出した。
もう俺はびびりすぎて小便漏らしそうになった。
そっからはもう英語なんて話せずに、日本語で「どどどどどうしたんすか!?具合悪いんすか!?」とか言ってた。
とにかく俺はヨヨヨと泣く黒さんをベンチに座らせて、自販機にポカリを買いに走った。
戻ってみると、まだ黒さんはベンチに座って泣いてた。
黒さんの手を掴んで強引にポカリを握らせ、『これ、飲んで、あなたの』みたいなジェスチャーでなんとか意志を伝えた。
そしたら、また黒さんは泣き出しちゃって、もう途方に暮れちゃって、俺は黒さんの隣に腰掛けてオロナミンC飲んだ。
しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した黒さん。
ポカリ飲みながら、“うめえ、なんだこれ”みたいな顔してた。
黒さんも俺も、英語スキルは同じくらいだった。
片言と流暢の間くらい。
黒さんはエストニア人らしい。
お互い上手とは言えない英語で喋った。
何で泣いてたのか聞くと、俺が初めて話し掛けてくれた人だとか言ってた。
詳しく聞くと、黒さんは母国で酷い差別を受けていたらしい。
日本でも虐め問題はあるけど、それよかもっと酷い。
石投げられたり唾かけられたりレイプされそうになったり、学校じゃ無視してくれる方がありがたいそうだ。
俺もだんだん慣れてきて、黒さんに対する恐怖心はほぼ無くなってた。
んな重い話になんて答えたらいいのか分からなかった俺は、「大変だね」みたいな事しか言えなかった。
そしたら黒さんは、「日本人はすごい、尊敬している」みたいな事を言った。
何でと聞くと、黒さんはつっかえながら喋りだした。
『日本人は有色人種で唯一白人に立ち向かい、ボコボコにしてぶん投げた。