そのとき19歳で、大きい失恋は初めて。
一人暮らしをしていて、部屋に1人きりではさみしくて耐えられない精神状態でした。
寝台列車は何度も乗ったことあったけど、これまでで1番乗客が少ない気がした。
(さ、財布がない!)
自分の部屋に到着してすぐ気づいて、あ~悪いことって続くんだな~と、さらに落ち込みながら通路に戻ると、おじさんが「もしかしてこれ?」と財布を渡してくれた。
(よかった~!)
おじさんに何度もお礼を言った。
おじさんは後ろを歩いていたところ、私が財布を落とすのを見たらしい。
夕方にトイレから戻るとき、財布を届けてくれたおじさんとばったり会った。
酔っ払ってる様子で「あんたも飲むか?」と言われて、1人でいるのも落ち込むだけだと思って、一緒に飲むことにした。
そのおじさんは佐藤さんといって45歳。
リストラにあって無職。
家族も去りホームレスも経験していて、これからは田舎で農業を手伝うつもり。
佐藤さんの部屋に行くと中年の男性が1人いて、この人もおじさんに誘われたらしい。
高木さんといって52歳。
過去に過ちを犯して前科があり、それが原因で離婚。
定職に就けず警備員とか建設関係で日雇いの仕事で何とか食べてる。
自分は大学生で、辛いのは失恋くらい。
2人は自分なんかよりずっと辛いのに、ずっと話を聞いて励ましてくれた。
それに比べて私は気のきいたこと1つ言えない・・・。
男性2人は「話せば楽になるから」と、私にいっぱい話をさせてくれた。
ベッドの真ん中に私が座って、右に佐藤さん、左に高木さんが座っていて、それぞれ身の上話をして、涙を流した。