奴隷にした同級生(3)

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奴隷にした同級生(3)
「言うこと…聞くから…
だから、絶対メールしないで。
…お願いだから」
唇をキュッと噛んで、顔を真っ青にしながら
詩織は途切れ途切れに言った。

予想通り、メールアドレスと氏名の記載されたリストを見た詩織は
さっきまでの「無理」と自己主張する詩織ではなく、
詩織らしい臆病さと従順さを取り戻していた。

さっきの奴隷契約の交渉前に資料を見せれば、もう少し有利に事を運べたと思うんだが
そのときは、この資料を見せるということに思い至らなかった。

今日の手順を、俺は何度も繰り返し頭の中でシミュレーションしてい る。
興奮で舞い上がって失敗しないために、俺は相当の時間を費やした。
「最後に資料を見せて立ち去る」ということを何度も脳に刷り込んだため
交渉の途中で見せるということが考え自体、全く浮かばなかった。

その日の夜、当初予定では、俺は詩織のレイプ映像を見てオナヌーするつもりだった。
だが、突然の計画変更で抱えたリスクに恐怖して、オナヌーどころではなかった。

翌日、詩織は学校を休んだ。
当然といえば当然だ。
だが、そのことに対して俺は大変な恐怖に感じた。

このまま詩織が長期病欠になれば、いずれ詩織の親が心配して調べ始め
いずれ俺の犯罪が露見するのではないか。

このまま詩織が心を病んで、おかしくなってしまい
冷静な判断力を失ってうっかり心の傷を話してしまえば、
それでもまた事が露見するのではないか。

その日は一日、破滅の恐怖で頭がいっぱいで、
学校の授業や友達との会話なんて、ほとんど頭に入らなかった。
心底、自分のしたことを後悔した。

俺は、家に帰って取り付かれたようにうつ病やPTSDについて調べた。
詩織のために、いや主に俺の保身ために、今何ができるのか
とにかくネットで精神病関連のサイトを読みまくった。

翌日、また詩織は休んだ。
俺はもう限界だった。とにかく、詩織の状態を知りたい
詩織が無事であることを確認して、ほっと胸を撫で下ろしたい。

いても立ってもいられなくなった俺は、詩織にメールした
「具合はどう?」

しばらく待っても返信はなかった。
今考えれば当然なんだが、当時の俺は、全て最悪の事態に繋げて考えてしまい
一人うろたえていた。

「もしかして、自殺でもするんじゃないのか?」
「遺書に俺の犯行が書かれたらどうしよう」
「少年院なんか行ったら、もうまともな職には就けない。
1回しかない人生を、俺は棒に振るのか」
「何で俺は、あんなバカなことしたんだろう」

メールが返って来ないだけで、足が震えるほど恐怖だった。
パニックの俺は、暴走を加速させていく。

罵ってくれてもいい。恨み言を言うのでもいい。
とにかく返事をくれ。
恐怖に耐え切れず、俺は2通目のメールを送信する。
「今日お見舞いに行くから」

今度はすぐ帰ってきた。
「私の家知ってるの?」

今考えれば、詩織は怯えてしまい、返信したんだと思う。
かえって詩織を怖がらせるだけの内容であり
いい方向に話が向かってるとは言いがたい。
だが、俺は返信が返って来たことに心底安堵した。
「よかった。生きててくれた」

思わず顔がニヤけるぐらいの安堵感に浮かれて
俺は深く考えずにさらにメールした。
「当たり前だろ。メールアドレスのリストを見なかったのか?
おまえの近所の男も入ってただろ
下調べはしっかりしてある」

返信は来なかった。
自分の送信メールを改めて読んで、
ストーカー色を前面に出した内容だということに気づいて
また俺から送信した。
「ごめん。怖いと思ったよね?」

しばらくして、今度は返信が返ってきた。
「少しだけ」

「少しだけ」という表現に、弱みを握られてる人間の強者への遠慮と
詩織の気の弱さを感じた。
きっと、本音では「絶望するぐらい深く」だろう。
もうフォロー不可能だと思って、俺は話題を変える。
今度は速いペースで返信が来た。

俺「熱は出てる?」
詩織「熱とかは大丈夫」
俺「じゃあやっぱりお見舞いに行こうかな」
詩織「どうしても来たい?」
俺「外に出られるなら、近くの山上公園まで出て来れないかな。少し話がしたい」
詩織「話だけなら」
俺「着いたらメールする」
詩織「分かった」

俺は見舞いに行くことになった。
授業中、バイブにしておいた俺の携帯が震えた。
授業が終わって見てみると、詩織からだった。
「まだ誰にも言ってないよね?」と書かれていた。

俺が事の発覚を恐れてる以上に、詩織もまた発覚を恐れていた。
短い文章だが、詩織の苦しみが伝わってくるようで
胸が苦しくなる。

「もちろん。約束は必ず守る。
俺と吉野以外は、誰もあのことを知らない。
全て平常どおりだ。
いつ学校に来ても大丈夫だよ」

「言ってないよね?」という問いかけに対してはい、いいえでは答えず、
あえて俺の言葉で誰も知らないことを強調した。
少しでも詩織の不安が取り除かれればと思って返信を書いた。

詩織「佐藤君のこと信じてもいいんだよね?」
俺「信じていいし、もう少し安心してくれ。
俺は鬼畜だし最低だけど、約束だけは絶対守るから」
詩織「ありがとう」

どうも詩織は、俺が約束を守らないんじゃないかと恐れているようだ。
今の詩織の中ではこれから半年間続く奴隷生活よりも、
ビデオの存在が重いということは分かった。

俺は、詩織の不安を取り除くため、
今後、約束だけは絶対守る男であることを詩織にアピールしようと思った
鬼畜の俺だが、今振り返っても、このときは純粋に詩織のためを考えていたと思う。
鬼畜の俺にも、少しだけ人の心が宿っていた。

約束の公園に着いて詩織にメールした。
詩織はジーンズにネルシャツとTシャツという普段着で来た。
ノーメイクだった詩織の顔には、大きな隈があった。

やつれた詩織を見た俺は、反射的に体が動いて
気づいたら土下座して謝っていた。
土下座を見た詩織は、しばらく無言だった。
何も言わない詩織に対して、俺は頭を地面に付けたままの姿勢を保っていた。

「謝るぐらいなら、どうしてあんなことしたのよ?」
突然、泣き喚くように詩織は大声を出した。
顔を地面にこすり付けている間に、詩織は泣いていた。

「…すまない」
いつもなら饒舌に言い訳が出てきそうなもんだが
そのときは、それしか言えなかった。

「早く立って。人が来て、変な目で見られたら大変だから。
これが原因であのことがばれたら、
佐藤君、何するか分からないから、私それだけは嫌なの」

詩織は、俺を立たせると
ハンカチで涙を拭きながら、ベンチに座るよう俺に促した。
詩織は、俺と同じベンチに不自然なほど距離をとって座った。

しばらくは二人とも無言だった。
何か言わなきゃと思ったけど、言葉が見つからなかった。
間が持たなかった俺は、さっき自販機で買ったコーヒーを詩織に差し出した。
詩織はうつむいたまま、「ありがと」と小声で言って、それを受け取った。

しばらくして詩織がポツポツと話し始めた。
自分が汚いもののように感じること、できれば遠くに転校したいこと
ビデオを渡してほしいこと、両親の前では無理して明るく振舞ってること

聞いていて胸が詰まる思いだったが、
詩織の体を眺めているうちに
先日、まぶたの奥に鮮明に焼き付けた白く柔らかな詩織の肌が
目の前にチラつき始め、また俺はおかしくなりそうだった。
自分でも最低だと思う。

ビデオ譲渡は断った。
これは、性欲の抑えがきかなかったからというより
発覚の恐怖に対抗する唯一の切り札を失うことは、俺には耐えられなかったからだ。
転校の件も、同じ。俺は反対した。

結局俺は、自分の保身が最優先で、
詩織のためになるようなことは何も言えなかった。
俺ができたことは、延々と続く愚痴とも恨み言ともつかないような詩織の言葉を
ただ聞くだけだった。

転校の話だが
「でも出来ない。あのことを知ったら、
お父さんとお母さん、すごく傷つくと思う」
と、詩織は自分で自分の希望を否定していた。

俺が強姦に及んだとき、両親ことなんてまったく考えなかった。
というより、家族とはいえ所詮他人だし、そんなことはどうでもよかった。

そんな考えの人間もいるのかと、このときは少し驚いた
嘘を話して自分を美化しているのかとも思ったが、
俺の直感は、詩織は本音を話していると訴えていた」

詩織は2時間近くほぼ一方的に話して
「とにかく、今日はありがとう」
とベンチから立ち上がって俺に言った。

「何でお礼なんか言うんだよ」
「え?話聞いてくれたし、謝ってくれたじゃない。
誰にも話せなかったことだしね。すごく楽になったよ」
「その原因を作ったのは俺だろ。忘れるな。俺はおまえを奴隷にした男だぞ」
「…そういえば、そうだよね」
詩織は嘲笑とも落ち込みともつかない複雑な顔をした。

「とにかく、明日から学校来いよ。
半年頑張って、お互いこの悪夢から抜け出そう」
「分かった」
詩織は暗い顔でうなずいた。

この状況で翌日からは奴隷扱いすること宣言するなんて、
なんて鬼畜だろうと、読んだ人は思うだろう。

だけど、これが俺の精一杯の誠意だった。
本当は、あの公園の隅にでも詩織を連れて行って
全裸に剥いて、俺の肉棒を突き刺したかった。

でも今日はしちゃいけないと思った。
思わず奴隷宣言が口から出たのは、制御しきれない性欲が口から溢れ出たためだ。
当時の俺には、これが限界だった。

次の日、詩織は約束どおり登校してきた。
以前なら朝、俺と目が合えば笑顔で挨拶した詩織だったが、
この日から、学校では俺と目も合わせなくなった。
だが、もともとそれほど親しくもないし、
それで俺たちの関係の異変に気づくやつは、クラスにはいなかった。

いつも通り俺の前に座る詩織。
いつも通り詩織の後ろ姿を眺める俺。
しかし、詩織の白い肌を一度見た俺は、
いつも以上に卑猥な妄想を膨らませていた。

俺は、授業中にもかかわらず、鼻血が出そうなぐらい興奮した。
もう昨日の辛そうな詩織のことも、
ばれたら身の破滅だってことも、頭から消し飛んでいた。

休み時間になって、俺は詩織にメールを送った。
「今日、俺の家で一緒に勉強しようぜ」

俺がメールを送ったとき、詩織の取り巻きたちが、休んでいた詩織の席に集まって
詩織と話をしていた。

それまでは笑顔で友達と話していたが
メールを見た詩織の顔からは、一瞬で笑顔が消えた。
「どうしたの?何かあったの?」
一瞬で暗い顔になった詩織を見て、友人たちが詩織を気遣う。
「ううん。何でもない」
また笑顔になって、詩織は友達と話を続けた。

その様子を見ていた俺は、一瞬で卑猥な考えが消えた。
やばかった。
メールを送るタイミングは、十分気をつけないとダメだ。
背筋が冷たくなった。

チャイムが鳴って友人たちが席に戻って行くと
詩織は悲しそうな目で、チラッと俺を見た。

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