諸事情で仕事をやめた俺は、友人の誘いでレストランバーで働くことになった。
従業員が若いこともあって活気のある店だった。
朝の８時まで営業していることもあって、夜中は仕事あがりのキャバ嬢やら風俗のねぇちゃんやらが結構来てた。
そんな中、ある常連のホステスＫ子が連れてきた一人の子、Ｙ美がどうも場違いな感じで目を引いた。
話を聞けば、家庭の複雑な事情から家を出て一人暮らしを始めたという。
その時は１９歳って言ってたな（本当は１７歳の高校生だったわけだが）。
後からわかったことだが、もう高校に行く気はなく、水商売で生計を立てる気でいたらしい。
「未成年だから、アンタ達手ぇ出すんじゃないよ！」とＫ子が口癖のように言っていた。
Ｋ子はよほどＹ美のことが可愛いのか、頻繁に連れて来るようになり、Ｙ美は店の従業員とも打ち解けていった。
決してイケメンではない俺に懐き始めたのは、初来店から半年経ったくらいだろうか。
Ｙ美は常に明るく振舞う子だった。
年上ばかりの中で気を遣っていたのかも知れない。
とびっきり可愛いわけではないが、どことなく愛嬌があり、そこそこ人気もあった。
俺が働き初めて２年が経とうとしていた頃、店の恒例行事である花見をすることになった。
従業員、常連を交えてだいたい３０人くらいになるその花見に、Ｋ子とＹ美が参加することになった。
Ｙ美が比較的俺に懐いていたこともあって、Ｋ子からＹ美のお守を頼まれた。
Ｙ美は適度に酒を飲みんでいたが、いつもより口数が少なく思えた。
みんなが盛り上がってカラオケを始めたころ、Ｙ美がすっと俺に寄り添ってきた。
そのまま俺に寄りかかり、Ｙ美が俺を見上げる。
Ｙ美「ねぇＩさん（俺）、最近デートってした？」
俺「はぁ？何よ、突然ｗ彼女も居ないし、最近はないなｗｗ」
Ｙ美「へぇ・・・バーテンなのに遊んでないんだぁ・・・」
俺「いや、バーテンがみんな遊んでるわけでもないしなｗｗ俺そんなにモテねぇし」
Ｙ美「ふ～～～～ん・・・」
しばし沈黙のあと、残っていた缶ビールをキュっと飲み干し、Ｙ美が俺の肩にあごを乗せ・・・。
Ｙ美「ね、じゃ今度、私とデートしよ？」
予想もしない突然のセリフに思わず・・・。
俺「はぁぁぁぁああああ！！？！？？」
大きな声に少しびっくりしながらちょっと首をかしげがちに俺を見つめる。
Ｙ美「イヤ・・・なの？私と遊ぶのイヤ？」
俺「いや、違う違うｗいきなりそんなこと言うんだもん、びっくりもすらぁｗ」
Ｙ美「イヤじゃない？？」
俺「イヤだったら今この席でお前の横に居ないよｗ」
やや恥ずかしげに言う俺。
その言葉を聞いたＹ美は正座をして俺に向き直る。
両手を膝の上に置き、少し首をすくめると、ふにぃと笑った。
Ｙ美「じゃ、どっか連れてって？ドライブとか行きたぁ～～い♪」
俺「お、いいね。じゃ、ドライブがてら美味いもんでも食いに行くか？」
Ｙ美「いいね～～～＾＾じゃ、けって～～～い！」
そこに各席で酒を振舞ってきたＫ子が帰ってくる。
Ｋ子「こぉらぁ、Ｉ！なに口説いてやがんだぁ？？」
酒を振舞いつつ、ご返杯の嵐を受けてきたＫ子はもう目が座っていた。
俺「ちげぇよｗｗ俺はなんも・・・」
ちょっと焦った俺にいきなり抱きつくＹ美。
Ｙ美「私から誘ったんですぅ～♪今度デートするんだぁ」
Ｋ子「はぁ？アンタマジ？このデブと？？」
日頃からピザネタで弄られてた俺には普通の会話だ。
Ｙ美「最近お互いデートしてないから、ドライブ連れてってもらうの♪」
Ｋ子「はぁ・・・ま、Ｉならいいか、変な気起こすんじゃねぇぞ？」
全く口の悪い女だ。
いつものことだが・・・。
俺「へぇへぇ、わかりましたよ」
苦笑いしながら新しい缶ビールを開ける。
横にいたＹ美が俺の腕をギュっと両手で抱き締め、してやったり的な笑顔で俺に微笑む。
フフンと合わせて笑う俺の心音は必要以上に高鳴っていた。
その後Ｙ美は俺の隣を離れようとせず、最後まで談笑していた。
宴も終わり、後片付けに席を立とうとした俺の袖をＹ美が引っ張る。
Ｙ美「社交辞令じゃないよね？さっきの・・・」
俺「お？おう、あったりまえじゃん、どこ行くか考えとくよぉ」
Ｙ美「うん！よろしく！！楽しみにしてるね♪」
俺「じゃ、Ｋ子さんもうヤバイから送ってくね」
Ｙ美「うん、わかった、気をつけてな」
片手で小さくバイバイをした後、くるりと振り返る。
肩まである綺麗な黒髪がスローに揺れた。
４日ほどして来店したＹ美に「海でもいくか？」と聞くと、嬉しそうな顔で「どこでも♪」と返ってきた。
Ｙ美「どこで待ち合わせる？」
俺「車だから迎えにいってやるよ、家どの辺だっけ？」
Ｙ美「え・・・あ。いいよ、わかりにくいし。◯◯駅でいい」
俺「遠慮すんなって、駅から近いの？」
Ｙ美「うん、近いけどわかりにくいから・・・◯◯駅のマクドナルドでいい」
ちょっと様子が違うＹ美に俺はこのとき気づいてなかった。
デート中は特筆すべき点もないので割愛。
ひとしきり久しぶりのデートを楽しんだ帰り、晩飯を食いに店に近い居酒屋へ入った。
Ｙ美「楽しかったね～♪」
俺「おぉ、思ったよりか、ぶっちぎりでなｗ」
その日の思い出話に花が咲き、あっという間に時間が過ぎていった。
気が付くと日付が変わろうとしている。
俺「お、こんな時間じゃん、ぼちぼち行くか？」
Ｙ美「・・・」
Ｙ美から返事はない。
俯いたまま席を立とうとしない。
俺「どした？気分悪い？」
パっと顔をあげ、いつもの笑顔で・・・。
Ｙ美「だいじょぶ～。ね、Ｉさんもう帰っちゃうの？ＤＢ（俺の勤め先の店）行かない？」
俺「あ～、もう今日は行かないよ。結構飲んだし、お前もあんま遅いとＫ子に怒られんじゃ？」
Ｙ美「う～～～ん、そうだけどぉ・・・」
酔っているのか、紅潮した顔に目が潤んでいる。
Ｙ美「じゃ、私のウチで飲み直そ？それならいいでしょ？」
それもマズイんじゃ・・・と思う俺の手を引っ張り店の出口へ向かう。
Ｙ美「途中のコンビニでお酒買ってこ～、ウチあんまりお酒置いてないから」
俺「う、うん、でも、いいのか？親いるだろ？」
ニコッとだけ笑ってレジの前に並ぶ。
車に乗り込むとふぅ～～～と大きく息をついてＹ美が話し始めた。
Ｙ美「あのね、親は居ないの、今の家には」
本当の年齢、両親が不仲なこと、父親から暴力を受けていたこと。
学校にも馴染めず、親戚を頼って隣県のこちらへ来たこと。
親戚の家にも居所がなく、昼のバイト（喫茶店）で知り合ったＫ子の家に住まわせてもらっていること・・・。
自分自身を整理するようにゆっくりと、それでも途中で止まることなくＹ美は話し続けた。
時折見せる作り笑顔が切なかった。
Ｙ美「ごめんね、いきなりこんな話して」
俺「あ、う、うん、大丈夫大丈夫。でも大変だったんだな・・」
と、気の利かない台詞。
Ｙ美「今日は楽しかったから、まだ一人になりたくないの・・・」
俺「うん・・・」
Ｙ美「Ｋ子さんが帰って来るまででいいから、ウチで飲んでってよ、お願い」
俺「・・・」
戸惑い、黙る俺の左手を両手で掴み・・・。
Ｙ美「お願い・・・一人になるのはコワイの・・・」
俺「わかったよ、俺も少し酔い覚まさなきゃいかんしな」
パァっと表情が明るくなるＹ美。
Ｙ美「ホント？ありがとぉ～～～♪」
掴んでいた俺の左手をブンブン振り回す。
俺「イタタタ！わかったから！じゃ、行くか？」
Ｙ美「うん！♪◯◯駅方面でお願いしまぁ～～～す」
フフと微笑して俺は車を走らせた。
比較的古いマンションの４階。
表札のない部屋に入っていく。
茶を飲みながら他愛もない話をしていた。
「あ、Ｋ子さんに電話しとかなきゃ・・・」とＹ美は立つ。
どうやらＫ子の店に電話をして、俺が居ることを伝えているみたいだった。
途中から小声で聞き取りにくくなり、ぼーっとしていると俺はウトウトとしてしまった。
どのくらい経っただろう、ふと目を覚ますと小さい音量でＴＶを観ているＹ美がいた。
俺「あ、ごめん、寝てた・・・」
Ｙ美「ははは♪寝てた、って言っても１０分も経ってないよｗ」
俺「あ、そう？Ｋ子は？」
Ｙ美「お客さんと飲みに行くからちょっと遅くなるって。Ｉさん、飲んでるならもう泊まっていけ、って」
俺「泊まりはマズくねぇ？ｗ」
Ｙ美「事故ったら大変じゃん、ま、私がわがまま言ったんだけど・・・ね＾＾」
その時の笑顔は少しだけ色っぽく感じた・・・。
Ｙ美「そうと決まったら、飲みなおさない？酔い覚めちゃったでしょ？」
俺「あ、あぁ・・・そうだなぁ、じゃ飲むか？ｗｗ」
Ｙ美「水割りぃ？」
俺「もうなんでもいいｗｗ」
テーブルに座り直す俺にＹ美が封の開いていたバーボンを持ってきた。
面倒だからとロックで飲む俺に・・・。
Ｙ美「じゃ、私は水割り～」
一時間ほどすると、さすがに眠気も強くなり、酒も進まなくなってきた。
俺「じゃ～そろそろ寝ますか！俺このソファで寝るわ・・・おやすみ・・・」
リビングのソファに身を投げると尻を叩かれた。
Ｙ美「だぁめぇ～～！まだ夜は冷えるよ？こっちで寝るの！」
Ｙ美が指差したのはリビングの奥の障子の部屋だった。
障子には木で作られたルームプレートに『Ｙ美のお部屋』とあった・・・。
「あぁ、そう？悪いね・・・」とＹ美の優しさに何の疑問も抱かずに部屋を覗く。
シングルベッドにローボードと化粧台がある部屋は、ベッド以外に寝るスペースはなさそうだ。
俺「お～い、俺どこで寝るのよ？？」
Ｙ美「決まってんじゃん、ベッドしかないでしょ？」
俺「お前は？」
Ｙ美「ベッド」
俺「はぁ？？？？」
呆然とする俺に更に追い討ちが・・・。
Ｙ美「だから、チャッチャっとシャワー浴びてきて。アタマちょっとクサイよ？ｗｗ」
予想外の展開にどうしていいかわからない男が約一名ｗｗ
Ｙ美「早く！私、先に浴びるよぉ～～」
俺「あぁ。わかった、じゃ、遠慮なく・・・」
Ｙ美「バスタオル出しとくからそれ使ってね。シャンプーとかは適当にどうぞ」
妙な緊張感に包まれながら風呂へ向かう。
軽くシャワーを浴びると、ベッドを整えたＹ美がパジャマらしきものを手にしていた。
Ｙ美「じゃ、私もシャワー浴びてくる。先に寝てていいよ、眠いでしょ？」
俺「お、おぅ、悪いな、じゃ、お先に」
Ｙ美「はぁ～い♪」
・・・と言いつつも、眠気は半分どこかへ飛んでいってしまっている。
とりあえず、ベッドに潜り込む。
電気を消していいか迷うが、消さずにベッドの端に丸まってみる。
全身から感じるＹ美の香りに自然と勃起していた。
目はいっそう冴え、いらぬ妄想が頭を巡る。
微かに聞こえるシャワーの音が生々しい。
シャワーの止まる音がして、Ｙ美が出てきた。
Ｙ美「寝てないの？電気消せばいいのに」
なぜかとっさに寝たフリをする俺。
Ｙ美は俺の顔を覗きこみ、ふぅと息をつくとまた部屋を出た。
洗面所でドライヤーをかけ終えた後、戻ってきたＹ美は静かに障子を閉めた。
なるべく布団を動かさないように、ベッドにゆっくりと入ってくる。
仰向けに寝る俺に寄り添うＹ美。
このままじゃ、寝られっこない・・・。
意を決してＹ美の方に寝返りを打つ。
とその時、Ｙ美も俺の方へ寝返りを打った。
はっと目を開けたと同時にＹ美の顔が近づいてくる。
鼻と鼻が触れ合う、と同時に唇が重なった。
すぐに舌を絡ませ合い、俺はＹ美を力いっぱい抱き締めた。
何度もキスをしながらＹ美は「はぁ・・・ふぅん・・・ぁぁ・・・」と初めて聞く声で悶えた。
Ｙ美「好き・・・」
俺の耳元で囁くと、俺の耳を舐め、また激しくキスを繰り返す。
姿勢を入れ替え、俺が上になると、Ｙ美のパジャマに手を入れる。
ブラジャーは着けていない・・・すぐに張りのあるおっぱいが手に触れる。
Ｙ美「はぁぁ・・・んんん・・・」
パジャマを捲り、乳首を愛撫する。
いっそう声をあげ悶えるＹ美が愛しい。
そのうちにＹ美の手が俺の股間に伸びてくる。
すでにカチカチのムスコを握りしめ、上下に擦り始める。
キスを愛撫を繰り返しながら、ズボンを脱ぐとＹ美の下のパジャマに手を入れる。
ダイレクトに恥部へ手を入れると、もう濡れていた。
くっとＹ美の身体に力が入る。
俺の首に抱きつくＹ美。
優しく愛撫を続けていると、ムスコを擦りながらＹ美が布団の中に潜った。
すぐに生暖かい感触がムスコを包む。
決して上手くはないが、優しく、丁寧に俺のムスコを舐め回す。
Ｙ美「はぁ・・ん・・・あぁぁぁ」
もう、ガマンできない・・・。
再びＹ美に愛撫を開始しようと身体を入れ替えようとした時・・・。
“ガチャン！”
玄関で音がした。
リビングの電気が消えていることから、もう俺たちが寝ていると思ったのだろう。
ただいまも言わずに、電気を点ける。
とっさにお互いから離れて寝たフリをする俺達。
静かにズボンを上げる俺と、パジャマを直すＹ美。
と、その時、Ｙ美の部屋の障子がスルスルと開いた。
俺たちが寝てると思ったＫ子はそのまま障子を閉じた。
すっとＹ美が俺の耳元に顔を寄せる。
Ｙ美「ありがと＾＾でも、ごめんね、中途半端で・・・」
声を出すとヤバそうなので、俺はＹ美のおでこに軽くキスをして微笑んだ。
暗くて表情までは見えなかったと思うが・・・。
そのままいつの間にか寝てしまった俺は、翌朝（正確には昼過ぎ）、Ｋ子に起こされた。
Ｋ子「よく寝るねぇアンタ。もう昼過ぎたよｗｗ」
俺「あぁ、おはよ、アレ？Ｙ美は？」
Ｋ子「バイト行ったよ、で、今夜、ＤＢ行くって」
俺「あ、そう。わかった、ありがとね、泊めてくれて」
くるっとＫ子が俺に向き直って真顔になった。
Ｋ子「どこまでＹ美に聞いたか知らないけど、遊びのつもりならそう言って」
俺「ほぇ？」
Ｋ子「今、大変なのね、あのコ・・・これ以上寂しがらせたくないのよ」
いきなりのことで返答のしようがない・・・。
苦笑いしながら、帰り支度をする。
俺「わかってるよ、ありがとな、とりあえず帰るわ」
Ｋ子「うん、またね」
帰りの車中で色んな事を考えた。
Ｙ美の事はキライではない。
むしろかなり意識し始めてしまっている。
これは今日の夜にきちんと言ったほうがいいのでは？
いや、でもこれでフラレたらかっこ悪いよな・・・。
もともとデートごっこのはずだよな？
俺に気があった、ってことじゃないんだろう・・・。
でも、なんでわざわざ俺なんだ？
他に遊びに連れてってくれそうな奴いくらでも・・・。
結局考えがまとまらないまま仕事についた。
ま、その後は結局、俺が告白して付き合いました。
しばらくして地元帰っちゃった後も遠恋してたけど、別れちゃった。
今は結婚して子供もいるみたい。