男子トイレで用を足していると、清掃員の女性が入ってきた。
ちょうど俺の後ろの用具入れを開けて何やら作業しているようだった。
滴を切って、手を洗おうと振り返ったら、ドン!
「あ、すみません」
「ごめんなさい・・・あ・・・こ・・・康ちゃん?」
何年ぶりだろう。
彼女が引越したのは俺が小学校5年生の時だから、34年ぶりだった。
彼女は俺の2歳年上だから、47歳だった。
「あ、陽子姉ちゃん?」
物心ついたときには一緒にいた。
公営住宅のお隣さんで幼馴染のお姉ちゃん。
いつも一緒に遊んでくれた優しいお姉ちゃん。
中学になったお姉ちゃんは、うなじで束ねた髪が大人っぽい綺麗なお姉さんになった。
でも・・・引っ越していった。
俺は大好きなお姉ちゃんがいなくなって、わんわん泣いたっけ。
再会したその場で連絡先を交換し、週末会った。
俺は14年連れ添った妻を5年前に亡くし、大学受験を控えた娘と2人暮らしだった。
陽子は離婚して11年、今年大学を卒業した社会人1年生の息子がいることを話した。
陽子は小柄で美形だった。
可愛い美人だった。
中学のときと同じ、うなじ辺りで束ねた髪が清純そうなイメージで、年上に見えなかった。
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