変貌

妻の変化
気づいたのは今年の1月も終わり頃だったと思います。
私はそれまで勤めていた会社(それなりに世間では一流と呼ばれる企業と思いますが)を昨年6月いっぱいで自主退社しました。やはりこの不況で事務職はリストラの標的になっていたのと、親しくしていた取引先の方が、退社しても引き受けて頂けるという誘いを真に受けて決めてしまったからです。実際にはその会社でも既に以前の話になっており、今は難しいと申し訳なさそうに断られてしまいました。とはいえ、以前の会社名の肩書きもあり楽観視していた私に、予想以上の再就職の厳しさと36歳という年齢(ほとんどが35歳まででした)が重くのしかかり、だんだんとハローワーク通いがおっくうになっていきました。4歳年下の妻:めぐみも最初こそ応援してくれてましたが段々と蓄えを崩す日々に焦りと不安が出てきたのでしょう。2ヵ月後には小さな口論が絶えなくなっていきました。それも私を真剣に心配してくれる気持ちの現れだったとは理解してましたが・・・。
妻:めぐみは私が以前の会社に入社して1年後に配属され、5年の付き合いの末に結ばれた伴侶です。実家が静岡の農家の娘ということもあり、最初の印象はどこか純朴な(悪く言えば垢抜けない)ものでした。顔も色こそ白いものの、ニキビ痕がまだ浮かび、銀縁のメガネが世間の同世代のコのようにすれていないのが一目瞭然でした。それに加えて背も146の小柄なうえに、服のうえからも決してスタイルがいいとはいえない(実際に76A-60-83)格好で、大人社会に子供が紛れ込んでしまった印象を全員がもったほどです。ただ、真面目そうな性格は本物でどんなに晩くなってもその日の仕事はきっちり終わらしていく姿に私は好感を持ち、次第に付き合うようになっていきました。結婚して5年、妻も会社を寿退社してからは子供こそ出来なかったもののそれなりに専業主婦として影になってささてくれて、円満な夫婦生活だったと思います。私自身もいわゆる真面目人間なタイプなのでしょうか。夜の生活もお互いにノーマルなものでしたが、それなりに満足していました。
昨年の9月でした。めぐみがマンションのポストに入ってくるカードサイズのスナックの広告を私に差し出して
「私も働こうかと思ってるの。もちろんあなたのお仕事が決まったら辞めるけど。生活費のこともあるけど、二人していっしょにいるとまた喧嘩してしまいそうで・・・。」
その広告には
〔フロアレディ募集。19:00~24:00まで。時給2000円以上。委細面談。年齢不問〕
とあり、場所も駅前の通勤途中にある店とすぐわかりました。私は
「だからってお前、何も水商売じゃなくても。どんな仕事かわかってるのか?」
と相変わらず世間ずれしていない妻に言いました。妻も
「それはなんとなく。でも電話して聞いてみたら別にホステスの仕事はしなくていいって。配膳とか会計の手伝いとかが中心だって言うの。それに簿記の資格のこと言ったら、経理のわかる人がいてくれると助かるからって。」
既にその口ぶりは相談ではなく、事後報告のようなものでした。私もそういう店に詳しいわけでは無かったこともあり、また時給2000円は今の私たちにとってもありがたいものでしたから、そういうことならと承諾してしまったのです。今から思えばこの時の承諾が取り返しのつかない結果になるとは予想もしていなかったのですが・・・。
人間とは慣れに弱いものですね。初めの話どおり、しばらくは毎晩12時半にはめぐみが帰宅していました。めぐみも初めて見る世界に当初は驚きの連続でしたが、次第に慣れていったのと約束どおりの時給も入ってきたお陰で、私達夫婦の口喧嘩も見る見るうちに減っていきました。私自身もその頃には再就職の気が失せてきており、いわゆるヒモのような安楽な生活に疑問も持たずになっていました。めぐみもその点だけは時折注意してきましたが、予想以上に仕事が楽しくなっていたのか、それ以上は以前のようにしつこくは言いませんでした。
「私、今月から少し晩くなるかも。12月だからお客さん多くて大変だから、出来たらもう少し手伝って欲しいって言われてるの。それに時給も3000円にしてくれるって」
12月になってめぐみからこんな相談をされました。今の楽な生活に慣れてしまった私には時給が上がるということのほうが魅力的に聞こえたのです。さほどの疑問ももたずに
「それはいいよ。頼りにされてるんだ。心配しないで働いてきなよ」
とむしろ応援するばかりに答えました。普通ならそんな話には裏があると思うのでしょうが、それまで酒の匂いもさせず(実際に下戸ですし)、規則正しく帰ってくる妻。見た目もホステスになれるようなルックスでないのは夫の私が一番よく知ってることもあり、当時は当然の反応でした。私はというと毎日、昼まで寝て夕方までゴロゴロしてから洗濯・掃除と夕食の用意をするような生活の中でどこか麻痺していたのでしょう。
当初の話どおり、1週間はいつもより1時間ほど晩くなって帰ってきていました。が、その翌週からでした。初めて首元から上を真っ赤にして、明らかに酒に酔った雰囲気で夜中の2時過ぎに帰ってきました。玄関での物音に転寝していた私も目を覚まし、その姿を見て驚きました。
「お得意様達の忘年会で私も飲まされちゃったの。水割り一杯なのに、もう頭がガンガンしちゃって。こういうの苦手なのに」
着ていた服を脱ぐのももどかしそうに、そのままベッドへと倒れこんでしまった妻。それまで空けていなかった耳元にピアスをしていることにその時、初めて気づきました。とはいえ、たかがアクセサリーに大した疑問も持たなかったのですが。
それを境にめぐみは毎日のように顔を酒で赤らめて帰ってくるようになりました。時期が時期でしたので、仕方が無いのだろうと思いながら、帰ってくるたびに私は玄関で介抱するような毎日でした。
当初はそれも年末までのことと思っていました。しかし年が明けても一向に変わらないどころか、むしろ朝帰りに近い日さえあるようなものへと変わってきました。そんなある日、いつものように服を着たままベッドへ寝込んだめぐみの服を脱がしていつものようにパジャマへ着替えさせようとしたときです。それまで嗅いだ事の無いような香水の強い香りと、脱がした瞬間に見えた下着に驚きました。地味で真面目な性格の妻らしからぬ、派手な紫のシルクのブラとパンティでした。それはいかにも男を挑発するのに十分な色気を放っていました。予想外の光景に唖然とするものの、何か理由もあるのだろうと思い着替えさせましたが・・・。
ホステスになっていく妻
翌日、昼過ぎにけだるそうな表情で起きてきた妻に私は
「昨日はずいぶん晩かったけどどうしたんだ?着替えさせるのが大変だったぞ。それに香水もずいぶん強いし。」
その瞬間、妻は表情を一変させ
「いいじゃない!!私が働いてるから食べていけるのよ。それにこういう場所だから、他の人の香りが移っちゃうのよ!!」
「別にそういう意味じゃないけど・・・。でも下着もずいぶん派手なものになってるし。まさかお客に見せてるわけじゃないだろうな?年、考えろよ!!」
「見たの!?そうよね、でもそれって私じゃ似合わないみたいな言い方じゃないの?私だってそれなりに人気あるんだから!!」
人気?なんのことだ?ただの配膳や経理じゃなかったのか?
「おまえもしかしてホステスの真似事してんじゃないよな!!どうなんだよ?」
「ええ、してるわよ。隠しても仕方ないから言うけど去年からずっと。ただの配膳でこんな時給もらえると思ってるの?あなたこそ世間を知らないんじゃないの?私ねぇ、こんなに簡単にお金をもらえる仕事があるなんて思っても見なかったわ。だからもっともっと働いて楽しく贅沢な暮らしがしたくなったの。お店に来てくれる人もみんなそんな人ばかりだわ!!」
そこには私がしっている妻:めぐみとは別人の、水商売に長けた一人のホステスがいました。見た目こそ、出会ったときからやや小じわが増えたこと以外さほどに変わらない純朴な雰囲気ではあるものの、内面は妖しげなまでに成熟したメスへと変貌していたのです。
その日からめぐみは今まで隠し通してきたものがあったのか、せきを切ったかのように日増しにその全てが変わっていきました。ビール一杯で顔を真っ赤にしていたのが嘘のように、家に帰ってきても水割りを、時にはストレートで気だるそうに飲み。また、ぎこちない手つきながらメンソールのタバコも吸うようになっていきました。当然、服装もそれまでは比較的おとなしめなスーツ姿で通っていたのが、どこで手に入れたのか原色のケバケバしい太もも露にするようなミニのタイトなものを好んで着るようになりました。銀縁のメガネなどはどこへやら・・・ブルーのカラーコンタクトに濃いアイシャドウをするようになり、高いヒールを履くその後ろ姿は完全なホステスの姿に変貌し、同じマンションの人達に奇異の目で見られるようになっていったのです。そして極めつけは・・・
「おい、おまえ・・・それ・・・」
私はその姿に唖然としました。それまではショートボブの黒髪だっためぐみが、キラキラと輝く金髪、それも白金のような色に染まっていたのです。
「どう、これ?薦められてやってみたんだけど。」
あっけらかんと答えるめぐみは私の答えなどどうでもいいかのように、姿見に映る自分の新たな姿に見入っていました。
「常連さんに美容室の店長さんがいるのよねぇ、その人がやってくれたんだけど目立つでしょ?これでもっと指名がとれるかもねぇ」
一人嬉しそうに言う姿に、だんだん手の届かなくなる思いがしていきました。私は
「なあ、いまさらだけどその仕事やめにしないか?俺も就職先、必死でみつけるからさ。なぁ、頼むよ」
振り返って私を見る目は、蔑んだようなもので鼻で笑ったあと何も言わずにいつものように出勤の準備をし始める始末でした。
(一体、めぐみは店で何をやってるんだ?どうしてこんなことに・・・)
ここに及んでようやく私は事の重大さに戦慄したのです。出来るなら店を覗いて見たい気持ちもありましたが、それは知りたくない・知ってはいけない恐怖心もありました。
その日の夜、せめて一目でもとの思いに勝てず、私はめぐみの働く店のはす向かいにある古びたラーメン屋で一人ビールを飲みながら店の出入り口を凝視していました。時折、お客を送るために際どい格好の女性が出てきましたが、めぐみの姿は見れません。2時間ほどいたでしょうか。そろそろ帰ろうと席を立とうとした瞬間でした。酔った赤ら顔の中年の男性に肩を抱かれた小柄な女性が、驚くほど胸元をあらわにして一緒に中から現れたのです。間違いなく妻:めぐみでした。店の前で何を話してるかは分かりませんが、大きな声で笑い、時には軽いハグをされてはしなをつくる姿は私の知る妻の姿とかけ離れたものでした。借りたものなのか、見慣れない金のネックレスやブレスレットを幾重にも身につけ、自慢であろう金髪が街頭にキラキラと反射した姿はまさに夜の女そのものです。その姿に妻と知りつつも欲情さえおぼえてしまいました。
(めぐみは・・・めぐみはこんな格好で男を相手に働いてるのか・・・)
私は彼女が店に入っていく後姿を呆然と見送るしかありませんでした。
それから数日後のことです。
「ちょっと昔のお友達と温泉旅行に行ってくるわ。」
聞けば、店の仲間と慰安旅行を兼ねて一泊してくるとのことでした。
「まさか男がいるんじゃ?」
思わず私は聞いてしまいました。
「いないわよ。お店の仲良しのコと3人でだから心配しないで」
めずらしく愛想よく答えるのを見て、その時は久々の温泉旅行に興奮しているだけかと勝手な理解をしました。それとは別に私にも都合が良かったのです。それは妻がいない日を見計らって私自身が店に客として妻の本当の姿を少しでも知っておきたいということでした。
男の影
「いらっしゃい!!」
華やかなシャンデリアの下で女性たちが一斉に声をあげました。私は万が一と思い、周りをキョロキョロと見ては妻がいないのを確認してホッとしました・
「どなたかご指名ですか?」
二十歳ぐらいの小麦色の肌が印象的なコが私にたずねました。
「いやぁ・・・その色白で金髪の小柄なコがいるって聞いたから」
しどろもどろで答える私に、ミサと名乗るそのコは
「あぁ、それってアゲハさんのことじゃない?アゲハさんなら今日はお休みですよ」
と意外にも親切に教えてくれました。いないと知りつつも安堵した私は
「あ、そうなんだ。いや、友達が指名したら面白かったよなんていうもんだから」
口からでまかせに言うと
「え~お客さんももしかしてロリコン趣味なんですか?ウフフ」
と屈託なく笑いながら答えました。(ロ、ロリコン!?)
「なにそれ?」
案内された席に座って聞いた私に、ミサは
「あ、ごめんなさい。気分悪くしちゃいました?でも最近、アゲハさんを指名する人多いんですよね~。それでもってほとんどがロリコン趣味っていうかなんていうか。あの人、小柄で童顔だからお人形さんみたいじゃないですか。だからバービー人形みたいだって。だからこの間、本人も思い切って金髪にしちゃったんですよ~。そしたら聞いて。もうめっちゃ人気になって。なんか悔しいわよね。」
そうだったのか・・・。金髪にした理由はそれだったのか。さらにミサは驚くような話をしだしたのです。
リサの話はさらに続いた。
「でもアゲハさんって前はあんなじゃなかったんですよ~。最初に来たときはホント真面目そうな人だったし、ママも会計とか雑用やってもらう為に入れたんだもの。そしたらね、ほら、こういうとこでしょ。かえって目立っちゃったんですよね。グラスとか灰皿とか取り替える度にちょこちょこ来るあのコ誰?みたいな感じで。結局、癒し系のほうが人気出ちゃったんですよね。そんでもって常連さんの社長さんがもう、アゲハさん口説いてやるみたいな感じで毎日。プレゼント攻撃だったのよ。そんでもって最初は断ってたみたいだけど段々ほだされたみたいな ウフフ」
私はめぐみの知らない姿に内心、驚きながらも
「でもさ、その社長さんと付き合ってるってわけじゃないんでしょ?」
その問いに
「え~、わかんないけどイイ感じなんじゃないの。あんなにアクセサリーとか毎日プレゼントされたら普通わかるじゃん?それに最近は当たり前に受け取ってるし~」
その時、私の後ろの席にいた別のホステスが顔を割り込ませるようにして
「え~もしかしてアゲハさんのこと?今日とかいつもの人と一緒に旅行行ってるらしいよ~。いいな~」
「え~!!マジ!!知らなかったよ~」
リサとそのホステスは何やら背中越しに話していましたが、私の耳にはとても入りませんでした。
(旅行?社長と?昔の友達って・・・えっ待てよ。最初にそう言った後に、今度は店の仲間とって言ったよな。おかしくないか・・・?)
私はその時点で初めて出掛けに言った妻の言葉の矛盾に気づきました。そんな気も知らずにリサは
「だってアゲハっていう名前だってママとその社長さんで決めたんだもん。社長が蛹から夜の蝶に変身させてみせるとか笑いながら話してたし~」
驚くような内容はさらに続きました。
「この店って月一のコスプレ日があるの知ってます?夏とは浴衣着たりとか。そんでね、一昨日がそうだったんだけど、みんなメイドさんの格好したんですよ。そしたらアゲハさんなんかチョ~はまり過ぎで、中年親父なんかもうメロメロだったんだよ。お帰りなさいませ、旦那様とか言って、キャハハ」
確かに小柄な今のめぐみがそんな服を着たら年を感じさせない程に似合うのかも。
「でねでね、さっきの社長さんなんか途中からアゲハさんを膝に抱っこして独占してるの。アゲハさんも嬉しそうにフルーツとか社長さんに食べさせたりとかして。もうベタ甘状態だったんだから~」
想像の中で、めぐみがその男性にしだれかかって甘えている姿を考えると、胸の中がカーっと熱くなるものがありました。
「だからあれって絶対そうなのかな~って思ったんですよね~」
屈託なく笑いながら話すリサが、もし私とアゲハ、いやめぐみが夫婦だと知ったらどんな顔をしたでしょうか。
いたたまれない気持ちで早々に店を出た私は、家に帰る時間ももどかしく歩きながらめぐみの携帯へと電話しました。しかし電源を切ってるのか、すぐに留守電になってしまいます。
「俺だけど、これを聞いたら家に電話をください」
そのまま家でまんじりともせず、朝まで起きていましたが結局、めぐみからの電話はありませんでした。
真実
さらに翌日の夜中になってようやくめぐみは帰ってきました。
「ただいま~、そのままお店に行ったから晩くなっちゃった。はい、これお土産」
差し出されたありきたりの温泉饅頭には目もくれず、私は妻に尋ねました。
「携帯に留守電入れたんだけど何でかけてこなかったの?それと誰と行ったんだよ?正直に言えよ」
妻は一瞬、固まったかのようにみえた次の瞬間に
「携帯きってたから仕方ないじゃないの。それに何、その言い方?なんでそんなこと言わなきゃいけないの?もしかして疑ってるの?男と一緒だったんじゃないかとか」
まさか店に行って聞いてきた噂話程度のことを言うわけにはいきません。
「そうじゃないけど・・・でも最近、お前派手になったしあんなとこで働くようになってから性格も随分変わったじゃないか?まして電話もかかってこないし。心配したんだぞ!!」
「へぇ~そうなんだ。それはどうも。でもご心配なく、私だって子供じゃないんだから」
顔立ちと背格好だけは子供のような金髪をサラサラとなびかせる妻は、感情のない声で振り返ると着替えるためか自分の部屋へと行こうとしました。その時、めぐみの服が背中がパックリと割れた露出の多い服だったことに気づいたのと同時に、さらに幾つかのキスマークのようなものが、その白い肌に浮かんでいるのを見てしまったのです。私の疑いはその時、初めて確信へと変わりました。
(このままでは・・・このままではめぐみも俺も駄目になる)
不思議な感情でした。前夜にリサから聞かされた話の影響もあったのでしょうか。それとも背中の跡に思わず欲情してしまったんでしょうか。私は不意に急ぎ妻の部屋を開けました。
「えっ!!な~に?ノックぐらいしてよ!!」
昨年来から既に夫婦生活の途絶えた私にとって、明かりの下で久々に見る妻の裸身はまぶしさを覚えるものでした。それは私の記憶にある妻の身体とは明らかに変化していました。元々、色の白い肌は更に乳液を塗りこんだように輝き、やや幼児体系でもあった腰つきは急激なほどのカーブを描く括れを見せていました。しかも驚くことに・・・
「お、おまえ・・・それ・・・どうしたんだ・・・」
私の目は妻の股間に吸い込まれるように凝視していました。そこにはあるべき黒々としたものが全く無く、ツルリとお椀のようになっていました。妻も私の視線の先に気づいたのでしょう。
「ん?あぁ、これ?あんまり見ないでよ。お店の衣装とか着るときにTバックとか履くから思い切って剃ったのよ。いいでしょ?なんか可愛くない?」
恥ずかしげも無く自分の股間を指差して、私へと微笑み返しました。しかしそんな馬鹿な理由があるでしょうか?むしろ誰かの指示で剃ったとしか私には思えません。もちろん妻も嬉々としてそれを承諾したに違いないのです。
「お、おまえ・・・こ、このぉ売女!!」
私は怒りと興奮から、妻に言うべきではない言葉を叫びながらつかみかかると、そのままの勢いでベッドへと押し倒してしまいました。この女を犯してやる!!そんな気持ちで・・・。
「なあに!!なんなのよ!!やめてったら!!」
幼い声をあげてジタバタと手足を動かす華奢な妻を力ずくで押さえつけるのは容易でした。本来、自分はこうした行為に一番縁遠い男だった筈です。が、この時は自分でも気づかなかった男の本能のようなものに私は突き動かされて、冷静ではいられませんでした。
「本当に・・・ねぇ!!やめてよ!!いやなの!!」
目の前30cm下には可憐さと妖しさが同居した不思議な魅力をもつ全裸のメスが、私に両手を押さえつけられて激しく体を動かします。私は肘で妻の喉元を押さえつけるように、それを固定すると、開いた片方の手で忙しくジャージとトランクスを脱ぎました。溜まりに溜まっていたこともあり、自分でも驚くぐらいにペニスはいきり立っていました。そしてバタつく両足首をつかむと同時に強引に開き、そこへ我が身を割り込ませました。
「いやぁ!!あなたとなんか・・・!!」
(あなたとなんか?俺は夫だろ!!)
その言葉に更にカッなった私は、濡れてもいないそのツルリとした割れ目に自分の怒張を強引に突き立てました。
「きゃぁ!!い、痛い!!もうやめてよっ!!いやぁ!!」
おそらく相当な痛みだった筈ですが、その苦痛に歪む表情は、私のこの数ヶ月間の我慢に対する復讐を満足させるに足るものではありました。ギシギシと音が鳴りそうなくらいにきつく締まった割れ目を私の欲望が前後に最初はゆっくりと、そして次第に速度を速めてピストン運動の如くに攻め立てていきます。実際は1分ほどでしょうか。次第にそのすぼまりは潤滑油のようなものを染み出させ、時折(ぐちゅっ・・・)という淫靡な音を部屋に響かせていきました。妻は私の下で時折は
「あっ・・・」とか「うぅ・・はぁ・・・あぁ・・・」
と顔を背けながらも声が漏れており、私にはその反応がこの上もなく満足感を覚えさせます。そしてさほどに経たないうちに私のほうが絶頂へと駆け上がろうとしたその時です。冷ややかな視線が私を見つめていることに気づきました。息を荒げながら顔を下ろすと、そこには感じていると思い込んでいためぐみが能面のような無表情さをたたえて私を見上げていました。私は思わず荒げていた呼吸が止まったときです。
「ねぇ、さっさといってよ。いつもこんぐらいでいっちゃうんでしょ?早くシャワー浴びたいから出したらあっち行ってて」
「お、おまえ・・・なんで・・・感じてたんじゃ・・・」
「えっ?あなたなんかで感じるとでも思ってるの?こんなの痛いだけじゃない。結婚してからずっとSEXが気持ちいいなんて思ったことなんか無いわよ。とりあえず悪いかなぁと思って感じてるフリしてただけよ。あなたこそ独りよがりで自分だけ果てたらさっさと寝てるだけじゃないの」
私のいきり立った肉棒は、そのきつい窄まりの中で急速に力を失っていき、最後はポロンと音がしそうなばかりに妻の体内から放り出されました。
「もういい?終わったんでしょ?早くこっから出てってよ。」
私は自分の未熟な性の動作を嘲られたショックで、最初の勢いがどこへやら、正反対のドアの方へと歩いていきました。その後ろからめぐみがこう言い放ったのです。
「私ねぇ、あなたが想像したとおり昨日は他の男の人に一晩中抱かれてたの。その人に初めて抱かれた時、初めて自分が本当のSEXを今まで知らなかったって思い知らされたわ。その人、あなたと違って何度でも私を喜ばしてくれたわ。もう腰が立たなくなっちゃうくらいにね。32年も生きてきてこんな気持ちいいものを知らなかったなんて、気づいたときには腹が立ったわ。でもこれからはもうそんな不愉快な気分になる必要なんてないわ。だってその人がいつでもどこでも私を喜ばしてくれるんだから。うふふふ」
振り返った私は
「それって・・・お前、相手は誰なんだ!!そんなこと許されると思ってるのか!!」
「プッ・・・ククク、そうよ。お察しのとおり私をいつも贔屓にしてくれてる会社の社長さんよ。さっき私のこと、売女って言ったけど、だったらあなたはなんなのよ?ただのプータローじゃないの。そういうのは私みたいに稼いでから言ってよね!!そうね、せめてその社長さんみたいに稼いで、肉体的にも私を喜ばしてくれるようになったら、あなたともう一度してあげてもいいわよ。」
その場で力なく崩れ落ちそうになる私に、更に追い討ちのように
「それとね、お店に来るんだったら私がいるときに堂々と来なさいよ!!泥棒みたいにコソコソ、私がいないときに来るんじゃなくて。ちゃんとサービスしてあげるわよ。でも自分で稼いだお金で来てよね。リサちゃんに今日、聞いたわよ。昨日、私のことずいぶん聞いてきたお客がいたって。特徴聞いたらあなたしか考えられないわよ。黙ってあげてようかと思ってたけど、面倒だからはっきりと言ったからね」
うな垂れた私は自分の部屋へと・・・そしてベッドにもぐりこんで記憶を消したいと心の中で何度も呟きました。
相手の男
そのことがあってから、めぐみは家に帰ってくることもまばらになっていき、私自身も夫して・男としての自信喪失のショックから顔を会わせるのがツライことから、彼女が家にいる時は出来る限り自分の部屋から出ることはありませんでした。
そんな生活が2週間ほど続いた頃です。滅多に鳴らなくなった私の携帯に、見慣れぬ電話番号留守電が入ってるのに気づきました。再生してみると、そこには遠山と名乗る男性からで、早いうちに私に会って話したいとの内容ことでした。もしやと思い、その番号にかけたところ・・・。
その日の夕方、遠山と名乗るその男性が自宅にやってきました。改めて対面した印象は50を過ぎたあたりの一目でゴルフ焼けとわかる血色のいい、そしてラグビー選手かと思うほどにガッチリとした身長180をゆうに超える巨漢の持ち主でした。仕事中だったのか、スーツ姿のいかにもバリバリと仕事をこなすビジネスマンといった雰囲気の彼は、開口一番、私に向かって
「まず笠井さん、あなたにはお詫びをしなければいけないと思い、無理を言ってお伺いさせて頂きました。」
私にはなんのことやらわからず、キョトンとした顔つきを見て、彼は私が何も知らないことを悟ったのでしょう。
「どうやら笠井さんは何もご存知では無かったようですね。いきなりで驚かれたでしょう。実は奥様のことなんですが・・・その・・・はっきり申し上げて、あなたの奥様と私はいわゆる不倫関係にあたる仲なんです。でも誤解なさらないで頂きたいのは、決して夫のある身と知っていて口説いた訳ではなかったんですよ」
そこからの話はめぐみがどう変わっていったかを理解するには十分過ぎるものでした。
「そもそもは笠井さんの奥様が勤めてらっしゃる店は私自身、よく行く店のひとつだったんですよ。こう見えても小さな会社をいくつか経営しておりまして、まあストレス発散の為にもそこで一日の終わりに騒いで明日からも頑張ろうと。そんな中で、昨年の秋に奥様を初めて店で見たというわけです。こんな言い方は大変失礼かもしれませんが、なんというかその・・・ああいう店には不釣合いという感じの女性がフロアで働いてる姿に、逆に新鮮に映ったんです。ママに聞いたら、そういう仕事のコでは無いからと言われたんですが、それでも頼み込んで特別に横に座ってもらったりして。実際、話してみるとこういう世界が全く初めてというのがすぐにわかりました。聞けば28歳の独身女性で、ご両親の借金の為に働いてるというじゃないですか。私も恥ずかしながら、それなりに遊んできた身ですので商売女には実際のところ飽きがきていました。だからむしろ全く対極の女性、つまり奥様のような真面目で地味というか、とにかくそんな女性に興奮を覚えたのですよ。それからは世間で言う貢君のような真似事もしまして、せっせと奥様目当てで通いました。実は忘年会の二次会にも出ていただいて、飲めない酒を飲んでもらったりして。お詫びに食事に誘ってからは奥様も段々、心を開いてくれたというか。まあそこからは男女の仲に発展していったわけなんです。彼女、いや失礼、奥様はホステスの給与計算をしていたから、ホステスになったらどのくらい稼げるかもわかっていたのでしょうね。やってみたいとい気持ちも芽生えてたのを相談されて、私が応援するからと後押しさせて頂きました。ご存知かも知れませんが、奥様の源氏名も実は私が考えたものでして。」
そこで遠山は目の前のお茶を一息に飲み干すと、更に話を続けた。
「それからは私自身、奥様が日増しに変わっていくのが楽しくて。服やアクセサリーや、あとは彼女の外見の為にも美容院の代金やエステの代金など出来る限り援助しました。はっきり言って、私が予想していた以上に奥様は変わられました。それはご一緒に住んでらっしゃった笠井さんがよくご存知かと思います。でも元々、そういう世界の素質もあったんでしょうね。今ではお店のNo1にまでなっているのですから。他のコ達のやっかみも随分あったろうとは思いますけど。ところが最近になって、あまり家に帰らずにホテル泊まりが多くなってきたので思い切って聞いたんです。そしたら初めて結婚していることも、ご家庭のことも話してくれたんです。正直言って驚きました。確かに変だと思うことも無くは無かったんですけど、でも・・・ですよね。あわてて店のママに問い詰めたらそのとおりだと。それで奥様に頼んで、今日こうしてお伺いさせて頂いたというわけなんです。」
驚くような話が終わりましたが、私は不思議と目の前の遠山と名乗る男性を憎む気持ちにはなれませんでした。私は
「お話はわかりました。妻が嘘をついてあなたとお付き合いしてたことは許されないことだし、あなたの謝罪をそのまま受け入れることも出来ませんが、だからといってこれは私たち夫婦の問題です。あなたに何をしてもらおうとかは思いもしませんから。それでよろしいですか?それと今後は妻と縁を切って頂く。あえて言うならそれだけです。ご理解頂けたならこれで失礼頂きたいのですよ。」
私が席を立とうとすると遠山は
「いえ、お話はこれだけではないのです。実はここからが伺った本当の理由なんですから。まあ聞いてください」
私を押しとどめるように言うと
「実は笠井さん、これはあなた自身に関係することなんですが・・・またお仕事についてみませんか?失礼ながら奥様が働くきっかけの一つに生活費のこともあった筈です。先ほど申し上げましたが、これでも社員一人を雇うぐらいのことは私の裁量で可能です。聞けば名のある商社さんにお勤めだったそうですね?いちおう調べさせて頂きましたが、勤務態度は素晴らしかったようですね。私自身、こういうことが無くても信用に足る人間と思いましたよ。そんなにたいした給料は払えませんが、それでもこんな生活をいつまでも・・・」
遠山が言い終わらないうちに、私はその無礼な申し出に
「帰ってくれ!!これでも私にだって最低限のプライドはある!!よりによって自分の女房を抱いた男の会社に入れるわけないだろ!!それにおまえに私や妻の何がわかるんだ!!ちょっと稼いでるからってそんな偉そうなこと言うんじゃない!!」
遠山はそんな私の態度を冷静に見ながら言いました。
「でしたら言わせて頂くが・・・笠井さんこそ、奥様の何が分かってるんですか?」
「どういうことだ!?」
遠山は腹立たしいくらいに落ち着いた声で言いました。
「出来れば言いたくは無かったんですがね・・・例えば、奥様が不妊治療を長い間していたことはご存知でしたか?奥様は子供が欲しかったようですね。近所の奥さんたちが公園で子供を遊ばせている姿を見るのがつらかったと。笠井さんは病院に付き添われたことが一度でもおありでしたか?それと会社を辞める前に、奥様に相談はされましたか?聞いたところご自身で勝手に辞められたそうではないですか?夫婦なら相談ぐらいして欲しかったと言ってましたよ。まだありますよ。ああいうお店に勤めた理由は、来る客に私のような会社の社長がいたら、あなたの就職を頼もうと思ってのことだったんですよ。そしたらその前に、あなた自身が働く気を失くしてしまったようですね。奥様はそれを知って心のどこかで折れてしまったんじゃないですか?」
私は冷や水を浴びせられた気持ちで黙り込んでしまいました。まさかそんなことが・・・。
「出来れば違う形でもっと早くお会いしたかったですよ。そしたらこんな気まずい形でお会いすることも無かったんですから」
遠山は懐から名刺を取り出すと何やら書き込みテーブルに置いて
「もし気持ちが変わられたら名刺の携帯にお電話ください。そちらは仕事用のですので、出来れば昼間にお電話ください。出なくても留守電に入れて頂ければ必ずお電話しますので」
そう言うと私を部屋に残し家を出て行きました。